30年待たされた異世界転移

明之 想

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第9章 推理編

ダブル!

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<古野白楓季視点>



 吾妻の掌底が決まってしまった。
 けど。

「ぐぉぉぉ!!」

 倒れない。
 すごい!

 凄まじい気合いを全身から発し、掌底を放った吾妻の腕を両手で掴み取る武上君。

「おおぉぉぉ!!」

 そのまま力任せに吾妻の腕を持ち上げ、反転。
 上半身を背負うようにして担ぎ上げ、投げ飛ばした!

 異空間を切り裂く勢いで飛んでいく吾妻。
 放物線を描き地面に落下……じゃない。

 着地だ!
 地面寸前で体勢を入れ替えた吾妻が、両足で見事に着地している。

 恐ろしい程の身体能力……。


「吾妻さん、遊んでばかりいないで決めてもらわないと」

「……」

「そろそろ時間ですので、ね」

「……ここまでか」


 敵の動きに感心している場合じゃないわ。
 そんなことより武上君よ。

 今は反撃できたけれど、脚と胸が無事なわけがない。
 なのに、もう投げ飛ばした吾妻のもとに駆け寄ろうとしている。

「……」

 だめ。
 我慢の限界。
 武上君、悪いけど。

「参戦するわよ」

 魔法を放つべく、吾妻の近くへ。
 射程距離内へ。



 走る私の数メートル先で、また棒立ちに戻っている吾妻。
 あのぞっとするような無表情を顔に張り付けて、何かを呟きながら無造作に立っている。

 そこに武上君が急接近。

「喰らいやがれぇ!」

 放つのは助走の勢いを乗せた右拳。
 凄まじい拳撃だ。

 それなのに、吾妻は動かない。
 見向きもしない。
 小声で何かを呟くだけ。

 まさか、これで決まる?
 激闘が終わるの?

 でも、これは?
 気味の悪いこの感じは?

「……loss of five Senses」

 吾妻の呟きが変化。
 声音がはっきりと耳に入ってきた。

 っと、その瞬間。

「なっ!?」

「えっ!?」

 光が消えて!?

「どあっ!」

「あっ!」

 突然暗闇に包まれ、さらに駆けていた足が絡まり倒れ込んでしまう。

「?」

 暗い。

「……?」

 何も見えない。

「……!?」

 違う。
 暗いんじゃない。
 目が見えないんだ。

「どうして?」

 意味が分からない、まったく……。

「武上君」

 そうだ、武上君は?
 拳は決まったの?

「武上君?」

 返事がない。

「武上君!」

 返事がない!?

「武上君……」

 いったい何が起きてるの?

「……」

「……」

 返事だけじゃないわ。
 物音ひとつ聞こえない。
 無音。

 まさか……。

 っ!?

 聴覚も失ってる!

「……」

「……」

 嘘でしょ?

 手足の感覚もない!
 体すべての感覚が消えてる!!

 そんな……。

 あり得ない……。

 異能?
 吾妻の異能なの?

 身体強化に加え2つめの異能を?
 吾妻がダブル!?

「……」

「……」

 分からない。
 今は何も知りようがない。

 でも、これが異能によるものならアンチUPで何とかなる。
 すぐにアンチUPの効果が出るはず。

 なのに……。


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