30年待たされた異世界転移

明之 想

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第10章 位相編

研究所の夜 2

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 しかし、事情を理解した上で幸奈の保護を快諾してくれた鷹郷さんには感謝しかないな。本当にありがたいことだよ。

 とはいえ、当面は和見家への監視体制を整えるだけ。幸奈は、これまで同様和見家で暮らす予定になっている。もちろん問題があるようなら、すぐにでも研究所の関連施設に幸奈を迎え入れることになるだろう。

 15歳の幸奈を迅速に引き取ることができるのは、未成年者に対する様々な問題を異能関係の特例で無視できる研究所ならでは。さすが、超法規的異能機関といったところか。


「功己さん……」

「うん?」

「明日には……。明日の昼には元の世界に戻るんですよね?」

「それは、まだ分からないな」

 全ては和見家での会談次第。
 鷹郷さんが手筈を整えてくれているのだから滞りなく進むはずだが、こればかりは明日になってみないと。

「でも、父が全てを了解してくれたら?」

「……元の世界に戻る可能性が高い。ただし、戻る方法が定かじゃない現状では、やはり戻るとは言い切れないかな」

「確実じゃないんですね?」

「……ああ」

「そっかぁ。そうなんだぁ」

 瞬く間に、幸奈の顔から憂いが消えていく。

「……」

「あっ、ごめんなさい」

「いいんだ。幸奈の不安は理解している」

「けど、功己さんが戻れないのを喜んじゃって、わたし……」

「……」

「功己さんは、この時代の人じゃないのに……」

「本当に気にしなくていい。元の世界の幸奈も君も、俺にとっては同じように大切な存在なんだから」

「えっ!?」

 うん?

「そんなこと言われたの初めてです。だって、こっちの功己は……」

「……」

 そうだよな。
 15歳時の俺が、そんなこと口にするわけないよなぁ。

「わたし、嬉しいです」

「……申し訳ない」

「そんな、功己さんが謝ることじゃないですよ。功己さんは5年後の功己さんで、こっちの功己とは……ん?」

「……」

「でも、だから、別人で……別人? 同じ??」

「……」

「あれ、あれ?」

 考えれば考えるほど混乱するその思考、よく分かるぞ。

「うーん?」

 しかし、位相世界のここでも有馬功己の性格は同じなんだな。
 それだけじゃない、幸奈も武上も古野白さんも、みな俺の知る通り。
 ますます異なる位相世界とは思えなくなってくる。

 けど、里村はちょっと性格が違っていたか。
 そう言えば、鷹郷さんも少し……。




「あっ、そろそろ部屋に戻りますね。疲れている功己さんには、ゆっくり眠ってもらわないと」

「……ああ、おやすみ」

「おやすみなさい」

 さっきとは別人のように明るい表情になった幸奈が部屋に戻っていく。
 そんな彼女を見送る俺は……。

 明日の朝まで時間を無駄にするわけにはいかない。
 かといって、この世界で深夜にできることなど限られている。

 それなら……あちらの世界に行ってみよう。

 今ここで異世界間移動を使えば、あちらでは12時間後に再びの発動が可能。
 その際、この世界での時間経過は1/3の4時間。朝までには余裕で帰還できる。
 時間的な問題はない。

 ということで、あちらの世界だが。
 やはり位相の異世界なのか?
 5年前なのか?
 俺が元の世界に戻るヒントはあるのか?

「……」

 トトメリウス様のもとを訪ねるというのも、ひとつの手だな。


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