30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

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<エリシティア視点>



「っ! これは……魔物じゃない??」

 リリニュスの声が上ずってる?
 通常ならあり得ない、この感知は?

「どういうことだ?」

「人です!」

 何!?

「複数の人がそこに!」

「人……?」

「はい、近づく気配は人である可能性が高いです」

「我ら以外の人が足を踏み入れている……ということは?」

 人里が近い?
 ならば、やはりここは異界ではなく顕界だと?

「「「「「おお!!」」」」」

「「「「「人だ!!」」」」」

「「「「「人がいるぞ!!」」」」」

「やっぱり異界じゃなかったんだ!」

 周りから上がるのは喜色に溢れた歓声。
 満面の笑みを浮かべる者もいる。

「「「「「「ああ!」」」」」」

「「「「「「よかったぁ」」」」」」

「みんな……」

 ここは現実世界、その可能性が高いと何度も言葉を重ねてきたものの、心の中には疑心が根強く残っていたのだろう。それも当然だ。異界に囚われて以降、魔物以外を目にすることなどなかったのだから。

 もちろん私も。
 私の思いも皆と変わりはない。


「リリニュス殿、アイスタージウス軍の可能性はありませぬか?」

 皆が興奮し歓喜に湧く中、ウォーライルが発した一言が場を凍らせる。

「まさか、追って来たのか?」

「いや、我らを特定できるわけないだろ?」

 その通り、常識的にはあり得ない。
 が、偶然ということも考えられる。

「リリニュス、どうなのだ?」

「申し訳ありません、対象の詳細までは……。ただ、数は30前後を感知しております」

「ふむ、30か」

 アイスタージウス軍がそのような少数で我らを追うとは思えない。
 仮に彼の軍であったとしても30程度なら容易に対処できるはず。
 とはいえ、態勢だけは整えておくべきか。

「ウォーライル、念のため陣を敷くように」

「はっ!」

「よーし、先陣はオレだな」

「ギリオン……おまえは後ろで休んでおけ」

「なっ! オレも戦えんぞ!」

「今は必要ない」

「姫さん!」

 そんな顔をするな。

「いずれギリオンの力が必要になる時が来る」

「……」

「それまでは無理せず、回復に努めてほしい」

「無理じゃねえけど……ちっ、しょうがねえ」

 不承不承ながらも納得してくれたようだ。

「私も下がりましょうか?」

「ふむ……」

 通常の布陣では遊撃を担ってきたヴァルター。
 この状況ならば。

「後方を頼む、ギリオンの傍にいてくれ」

「承知しました」

 などと言葉を交わしている間に、ウォーライルが布陣を終え。
 あとは、接近する者たちを待つばかり。


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