30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

レザンジュの騎士

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<エリシティア視点>



 眼下では、全員が再び足を止め驚きの声を上げている。

「「「「「間違いない、王軍だ」」」」」

「「「「「おのれ!」」」」」

「「「「「謀ったな!」」」」」

 急激に空気が変わっていく。


「エリシティア様?」

「これは、何事でしょう?」

「……分からぬ」

 こちらは戸惑うばかり。
 対する坂下の面々は……驚きの色が消え、浮かび出したのは憎悪?
 敵意が溢れ出している?

「分からぬが、ただ事ではないな」

 であるなら。

「前衛は警戒態勢に入るように」

「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」

 困惑しながらも整える態勢に陰りなし。
 さすが、我が騎士たちだ。

「エリシティア様はお下がりください。どうぞ、こちらに」

 感心する私にリリニュスが呼び掛けてくる。

「うむ」

 これで万全。
 何の心配もないはず。

「しかし、不思議だな」

「はい、本当に」

 リリニュスも腑に落ちないといった面持ち。
 いまだ前に出たままのウォーライルの背にも当惑しか見えない。

「で、この後にどう出るかだが」

 呟く私の目に入ってきたのは先程の騎士風壮年男性。
 他の者を止め、また1人で前に出てきた。


「きさまら、レザンジュの騎士、斥候部隊だな?」

 抑えた声音ながら、威圧的な断定口調で尋ねてくる。

「斥候ではない」

 答えたのはウォーライル。

「斥候では・・ないか」

 その通り。
 こちらはレザンジュの騎士ではあるが、斥候ではない。
 我が近衛隊だ。

「レザンジュ騎士であることは否定しない、か」

「……」




***********************




 連続攻撃後の不意打ち、無詠唱、無形のウインドアローが少女の胸に炸裂する。

 バァァァン!

 激しい破裂音。
 これは、当たったんだよな?

「ふふ、ふふふ」

 駄目だ。
 少女の余裕に変化は見えない。

「これまでで最高の連係だったぞ。が、それでも足りぬ」

「……」

「おぬしらの魔法では、このあたりが限界か」

 普段の攻撃魔法なら、そうなのかもしれないな。

「さて、どうする?」

「……」

「そろそろ諦めるか? それとも?」

 現状、こちらは白炎の防御中。
 かなり厄介な状況だが、炎は間もなく消えるはず。
 まだまだ諦めるという段階じゃない。
 いや、そもそも、諦めるという選択肢などないんだ。

 シャリエルンは……。
 
「諦めるわけがない。 剣で倒してやる!」

 彼女も同じ。
 それなりに傷を負っているものの闘志は手放していない。
 エリシティア様のもとに駆けつけるという強い思いが彼女を掻き立てているのだろう。

「さっきから何度も仕掛けておるが、その剣も届いておらぬぞ」

「うるさいっ! 黙れ!」

「おぬしだよ、うるさいのはな」

「何だと!」

「ふむ……もう要らぬか。パラライズ」

「なっ!?」


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