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第2話 登録
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アルファとオメガが、運命の番とマッチングするためのシステムは、意外と事務的だ。
保健所で申請して、地域の総合病院で検査と登録。
首の後ろの皮膚からフェロモンを採取して、血液型のようにホルモンの型を調べて、その型の相性がいい人同士で面談する。
この方法を使えば、同じ人種の中で十人くらいまで相手を搾れる。
その十人の中には、すでに運命の番と出会っている人もいるだろうし、マッチングシステムに登録していない場合もある。
だから、登録してすぐに面談になることもあれば、ならないこともある。
そして俺の場合は……
「来週、面談になった」
先日の発情期の日のお礼も兼ねて、モニくんとヨナちゃんを家に呼んで飲み会をしている最中、それなりにお酒も入って口が軽くなってから二人に報告した。
「すごい! 早速?」
「よかったね、ミチ!」
床に座って丸いローテーブルを囲っている二人が、グラスを置いて身を乗り出した。
「ありがとう」
「一人目で運命の番に出会う確率は三分の一くらいだっけ?」
「そう。でも、俺のフェロモン型で今紹介できる人が一人しかいないんだって。だから、その人が違ったら当分待つことになるみたい」
マッチングシステムは成人アルファ&オメガの約七割が登録しているけど、強制ではない。
相手が年下の場合は十年や二十年後に登録するかもしれないし、このまま一生相手が登録しないこともある。
そう思うとちょっと怖いんだけど……。
「相手の情報って先に聞けるんだっけ?」
座りなおしたモニくんが、甘いカクテルの瓶を嬉しそうに開ける。
「名前と年齢だけ聞けるよ」
「実は知り合いだった、とかない?」
「それはなかった。五歳年上の男性みたい」
俺の言葉に、モニくんがグラスにお酒を注ぎながら小さく頷く。
「うちの両親と一緒だ。アルファの男性とオメガの男性のカップルで五歳差。俺と番のキョウイチさんは六歳差だしね」
「私の両親はアルファの女性とオメガの女性で四歳差。オメガの親ってこれくらいの年齢差で男同士、女同士が多い気がする」
「じゃあミチくんの子どももオメガだ」
「ちょっと気が早いよ」
そんなことを言いながら、モニくんが注いでくれたグラスで、本日二回目の乾杯をしてくれた。
「気が早いけど、素敵な人だと良いね。ミチくんならきっと大丈夫だよ」
「ミチはオメガらしいオメガだから、きっとアルファに好かれる。愛されると思うから自信もって」
面談は楽しみでもあるけど、緊張もしていた。そんな俺の気持ちは二人にバレバレだったみたいだ。
本当に、いい友達だ。
大好きだし、信頼している。
だから……。
「あのさ……二人に相談があって」
「何?」
「面談のこと?」
二人は真剣な顔で俺に視線を向けてくれる。
そこまで真剣な話ではないんだけど……。
「その、面談って何着て行けば良いと思う?」
「服? 今日のソレでいいんじゃない? ミチくん自慢の手編みセーター。オシャレだし似合っているよ」
モニくんが俺の着ているクリーム色のセーターを指差してくれる。先月編んだ新作で、手芸用品会社勤務で趣味も手芸、特に編み物が得意な俺の自信作だ。褒められるのは嬉しいんだけど……。
「その服は似合っているけど、やっぱりスーツじゃない? ベータのお見合いってスーツのイメージあるし、ちゃんとした格好でしょ?」
ヨナちゃんが少し考えるように首を傾げながら言う。
そう。そうなんだよね。
「調べたらアルファの男性はほぼスーツだけど、オメガは華やかでキレイめな格好が良いってマナーサイトに載っているんだよね」
「マナーサイトってうさんくさくない?」
「スーツでいいじゃない、スーツ」
「でもさ……そのマナーサイトに書いてあったんだよね」
「「……?」」
モニくんとヨナちゃんが揃って首を傾げる。
正直、これを言うのはちょっと恥ずかしいんだけど……でも、二人には俺の考えを知ってもらいたい。
「初めてあなたを見た運命の相手が、喜ぶ顔を想像してみましょう……って」
目の前の二人が目を大きく見開いた。
「俺、相手に喜ばれたい」
「「!?」」
二人が腰を上げて両側から俺に抱き着いた。
「ミチくーん!」
「ミチ~!」
「服、買いに行こう! 明日行こう!」
「ミチに一番似合う素敵な服、選ぼう!」
俺の頭を無茶苦茶に撫でながらそんなことを言ってくれる二人は、やっぱりいい友達だと思った。
保健所で申請して、地域の総合病院で検査と登録。
首の後ろの皮膚からフェロモンを採取して、血液型のようにホルモンの型を調べて、その型の相性がいい人同士で面談する。
この方法を使えば、同じ人種の中で十人くらいまで相手を搾れる。
その十人の中には、すでに運命の番と出会っている人もいるだろうし、マッチングシステムに登録していない場合もある。
だから、登録してすぐに面談になることもあれば、ならないこともある。
そして俺の場合は……
「来週、面談になった」
先日の発情期の日のお礼も兼ねて、モニくんとヨナちゃんを家に呼んで飲み会をしている最中、それなりにお酒も入って口が軽くなってから二人に報告した。
「すごい! 早速?」
「よかったね、ミチ!」
床に座って丸いローテーブルを囲っている二人が、グラスを置いて身を乗り出した。
「ありがとう」
「一人目で運命の番に出会う確率は三分の一くらいだっけ?」
「そう。でも、俺のフェロモン型で今紹介できる人が一人しかいないんだって。だから、その人が違ったら当分待つことになるみたい」
マッチングシステムは成人アルファ&オメガの約七割が登録しているけど、強制ではない。
相手が年下の場合は十年や二十年後に登録するかもしれないし、このまま一生相手が登録しないこともある。
そう思うとちょっと怖いんだけど……。
「相手の情報って先に聞けるんだっけ?」
座りなおしたモニくんが、甘いカクテルの瓶を嬉しそうに開ける。
「名前と年齢だけ聞けるよ」
「実は知り合いだった、とかない?」
「それはなかった。五歳年上の男性みたい」
俺の言葉に、モニくんがグラスにお酒を注ぎながら小さく頷く。
「うちの両親と一緒だ。アルファの男性とオメガの男性のカップルで五歳差。俺と番のキョウイチさんは六歳差だしね」
「私の両親はアルファの女性とオメガの女性で四歳差。オメガの親ってこれくらいの年齢差で男同士、女同士が多い気がする」
「じゃあミチくんの子どももオメガだ」
「ちょっと気が早いよ」
そんなことを言いながら、モニくんが注いでくれたグラスで、本日二回目の乾杯をしてくれた。
「気が早いけど、素敵な人だと良いね。ミチくんならきっと大丈夫だよ」
「ミチはオメガらしいオメガだから、きっとアルファに好かれる。愛されると思うから自信もって」
面談は楽しみでもあるけど、緊張もしていた。そんな俺の気持ちは二人にバレバレだったみたいだ。
本当に、いい友達だ。
大好きだし、信頼している。
だから……。
「あのさ……二人に相談があって」
「何?」
「面談のこと?」
二人は真剣な顔で俺に視線を向けてくれる。
そこまで真剣な話ではないんだけど……。
「その、面談って何着て行けば良いと思う?」
「服? 今日のソレでいいんじゃない? ミチくん自慢の手編みセーター。オシャレだし似合っているよ」
モニくんが俺の着ているクリーム色のセーターを指差してくれる。先月編んだ新作で、手芸用品会社勤務で趣味も手芸、特に編み物が得意な俺の自信作だ。褒められるのは嬉しいんだけど……。
「その服は似合っているけど、やっぱりスーツじゃない? ベータのお見合いってスーツのイメージあるし、ちゃんとした格好でしょ?」
ヨナちゃんが少し考えるように首を傾げながら言う。
そう。そうなんだよね。
「調べたらアルファの男性はほぼスーツだけど、オメガは華やかでキレイめな格好が良いってマナーサイトに載っているんだよね」
「マナーサイトってうさんくさくない?」
「スーツでいいじゃない、スーツ」
「でもさ……そのマナーサイトに書いてあったんだよね」
「「……?」」
モニくんとヨナちゃんが揃って首を傾げる。
正直、これを言うのはちょっと恥ずかしいんだけど……でも、二人には俺の考えを知ってもらいたい。
「初めてあなたを見た運命の相手が、喜ぶ顔を想像してみましょう……って」
目の前の二人が目を大きく見開いた。
「俺、相手に喜ばれたい」
「「!?」」
二人が腰を上げて両側から俺に抱き着いた。
「ミチくーん!」
「ミチ~!」
「服、買いに行こう! 明日行こう!」
「ミチに一番似合う素敵な服、選ぼう!」
俺の頭を無茶苦茶に撫でながらそんなことを言ってくれる二人は、やっぱりいい友達だと思った。
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