魔王さんのガチペット

回路メグル

文字の大きさ
22 / 368
第5章 旅の話

第89話 エルフの森(5)

しおりを挟む
「関係を見つめなおす……?ライト様も色々と考えていらっしゃるのですね。私では役に立てるか解りませんが、もし、ライト様が悩まれているようなことがあれば、どうぞご相談ください」
「悩み……か」

 俺の悩み……あまり考えないようにしていることはある。
 どうしようもないことは考えないようにしているけど……。
 でも……イルズちゃんと森の王様って伴侶なんだよね?
 一生一緒にいるんだよね?
 確か、エルフって長寿だよね?
 時間の進み方が違うのって……

「あー……」

 この辺り、聞きたかったけど……

「考えてみて、答えが出なかったら相談させてもらおうかな」

 同じ悩みを共有できそうだと思って、反射的に言いかけたけど……俺はまだきちんとこの事実に対して向き合えていない。
 こんな状態で他人の考えを聞くと引っ張られそうな気がして、慌てて口を閉じた。

「何を聞きたかったのか解りませんが、解りました。本当に誠実な人だ」

 イルズちゃんは中途半端な俺の様子に、妙に感心しながら何かメモを書いて渡してくれた。

「この宛先で私に魔法で手紙が届きます。どうぞいつでもご連絡ください」
「ありがとう。俺の連絡先も教えたいんだけど、この魔法の仕組みよく解っていなくて自分の住所が……ローズウェルさん」

 後ろを振り向くと、そばで見守ってくれていたはずのローズウェルさんが、なぜか慌てた様子で顔を上げた。

「え? あ、はい?」
「……? イルズちゃんが手紙の宛先を教えてくれたから、俺のも教えたいんだけど……」

 話が聞こえない距離ではないのに。
 俯いて何か考え込んでいたみたいだけど……俺たちの会話、何か良くなかったかな?

「あ、あぁ。でしたら、城の住所で……このように書いて頂ければライト様へ直接のお届けになります」

 すぐにいつも通りのローズウェルさんになって、自分の手帳から名刺のようなものを取り出して、何か書き加えてイルズちゃんに渡してくれた。
 気にはなるけど、ローズウェルさんよりも今はイルズちゃんか。

「いつでも連絡してね」
「はい」
「あと、イルズちゃん、俺のことももっと気軽に呼んでくれていいよ? 敬語じゃなくていいし」
「ではライトくんと呼ばせてもらいましょう。ただ、話し方はこのままで。私の美しい見た目に合っていると森の王が褒めてくれるのです」

 イルズちゃんはもういつも通りのクールビューティーに一層磨きがかって見える微笑に戻っていた。
 流石だな。

「確かに。イルズちゃんイケボだから似合うね。その口調で少しトーンを落として耳元で『あなた様のこと、心よりお慕いしています』なんて懇願するように囁かれるのとかやばそう」
「……ライトくん、察しがよすぎますよ?」
「あぁ……ごめん。ふふっ」
「ふ、ふふっ」

 二人で笑いあった後、どちらからともなく握手をした。
 いいな。この世界でやっと、魔族以外に腹を割って話せる親しい人ができた。

「さて、そろそろ移動しましょう。この国の工芸品なども見て頂きたいんです」
「工芸品か……工芸に入るか解らないけど気になっているものがあるんだけど……」
「ん? あぁ」

 立ち上がりながらイルズちゃんの服に視線を向けると、イルズちゃんはすぐに気づいてくれた。

「この国の伝統衣装の店も行きましょう」
「やった」

 難しい話は終わり。
 折角の旅行、楽しまないとね?

  
しおりを挟む
感想 126

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。