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第10章 その後の世界 / パーティーとやりたいことの話
ゆ~っくり(2)
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「そういえば、この瓶はなんだ? ローズウェルがライトのリクエストだと言っていたが?」
「あぁ、それはお酒。今日は特別に用意してもらった」
「……昼間からか?」
魔王さんが持ち上げた瓶は小さく、中身はグラス一杯分にも満たないんだけど、ちゃんとお酒がはいっている。
魔王さん、仕事中や平日は基本的に飲まないよね。
「そう。昼間だからちょっとだけね? 紅茶にちょっと」
俺の感覚では「ブランデー」とほぼ同じお酒を、瓶から少しだけお茶の入ったカップにそそぐ。
砂糖も少しだけ多めに入れて……
「はい。どーぞ」
「あぁ、その程度か。それなら……ん!?」
魔王さんはお酒の量に安心したのか、俺から受け取ったカップにすぐに口を付けて……いい反応だな。いつもは鋭くてかっこいい目を大きく見開いてカップと俺の顔を何度も見る。
「美味い! たったスプーンに三杯程度なのに、酒の風味がして美味いな。それに……しっかり酒の味がするのは悪いことをしているみたいだ」
あ、悪戯っ子みたいに笑うの、珍しい。かわいい。
「そう。昼なのにお酒ってちょっとだけ悪い感じするよね? ……あと、俺ね、今日はお昼ご飯抜いちゃった」
「え? どうした? 体調でも悪いのか?」
「ちがうよ。魔王さんとお菓子をたくさん食べるために」
「……!」
並んで寝ころんだ魔王さんの驚く顔を見てから、上半身を少しだけ起こしてトレイへと手を伸ばす。
「いつも、一~二個しか付き合えなくてごめんね? 今日は俺もお腹いっぱいお菓子食べちゃおうと思って」
焼き菓子がたっぷり乗ったお皿を引き寄せると、魔王さんはとろけそうな笑顔で俺の頭を撫でてくれた。
「ライト……なんてかわいいことを言うんだ……!」
「ふふっ。魔王さんもいっぱい食べようね?」
「あぁ!」
「まず、どれにしようかな……」
まだ明るい、温かい午後の日差しが窓から差し込む広いベッドの上で、楽な格好でゴロゴロしながら食べるお菓子って、なんとも言えない美味しさがあるよね。
ベッドの上でものを食べる背徳感。
最高に気が緩んだリラックス状態で感じる甘さ。
それを好きな人と共有できる楽しさ。
しかも、こんなだらしないことを、いつも真面目で隙のない、かっこいい魔王さんがしているっていうのもいい。
似合わないところもいい。
「ふふっ」
「どうした? ご機嫌だな?」
片手で焼き菓子を持ったまま俺の頬を撫でてくれる魔王さんのほうが、ご機嫌な顔しているけどね?
「魔王さん、俺が誘わなかったら一生こんなことしなかったんじゃない?」
「そうだろうな。大昔だが、一番様と深夜にこっそりベッドで酒を飲んだことはあったが……昼間に、こんな格好で、菓子まで食うなんて……ライトに誘われない限りしなかっただろうな」
「だよね。魔王さんが俺のせいでだらしないことしちゃうって、なんか……魔王さんが俺色に染まっちゃっている感じがして嬉しい」
「俺が? ……そうだな。俺はライトに染まっているな」
「俺も、魔王さんに染まっているけどね?」
チラっとバスローブの襟に指をひっかけて、胸元に入った魔王さんの角の形の紋を見せつける。
「んンっ!」
これでちゃんと煽られてくれるのもかわいいんだよね。
「お腹は満たされてきたから、もっと魔王さんを補給させて?」
「あぁ!」
切り替え早いなぁ。体を起こした魔王さんが、お茶とお菓子が乗ったトレイをサイドボードに移動させる。
ベッドの上が急に広くなって……夜でも部屋には明かりがともっているし、魔王さんは俺の顔が見やすいように明るいままセックスをすることが多いんだけど……昼間の明るい部屋だと白いシーツが眩しいくらいに白く見える。
「……明るいと、ライトの美しい金髪が一層美しく見えるな」
魔王さんはシーツよりそこが目に入るんだ?
嬉しくてニヤけちゃうな。
「やっぱりこの色いいよね? ここも、魔王さんに染まったというか染めてもらった部分だね」
ベッドに仰向けに寝転ぶと、魔王さんが覆いかぶさりながら俺の髪を優しく梳く。
「あぁ……俺がライトを染めたんだと思うと……この金髪は何度見ても美しく胸が高鳴る」
「ふふっ。俺は見た目も気に入っているけど、魔王さんがたくさん触れてくれるのも気に入っているよ」
魔王さんの黒髪や、艶のある角も、明るい時間のほうがかっこいい……って言ってあげたいんだけど……魔王さんの顔が近付いてきて嬉しそうに俺の唇を啄んだ。
「んっ」
「……ふっ。かわいいな」
「魔王さんはかっこいいよ」
「あぁ、ライトはかわいい」
会話が微妙にかみ合っていないんだけど……すごく楽しい。
「ふふふっ。もっと言って?」
「かわいい。とてもかわいい。誰よりもかわいい」
魔王さんが真剣な顔で言いながら、俺の頬や首筋を啄んでいく。
鎖骨、胸元、紋は丁寧に何度も何度も。
「ん、あ……魔王さん……」
魔王さんのバスローブの紐を引くと、俺の体にキスしながら、魔王さんがバスローブを脱いだ。
「ライト」
「ん……」
魔王さんの指も俺のバスローブの紐にかかって、少し背中を浮かせてバスローブを脱がせてもらう。
これで全身ピッタリくっつけるけど、そうだな……せっかくだから。
「あぁ、それはお酒。今日は特別に用意してもらった」
「……昼間からか?」
魔王さんが持ち上げた瓶は小さく、中身はグラス一杯分にも満たないんだけど、ちゃんとお酒がはいっている。
魔王さん、仕事中や平日は基本的に飲まないよね。
「そう。昼間だからちょっとだけね? 紅茶にちょっと」
俺の感覚では「ブランデー」とほぼ同じお酒を、瓶から少しだけお茶の入ったカップにそそぐ。
砂糖も少しだけ多めに入れて……
「はい。どーぞ」
「あぁ、その程度か。それなら……ん!?」
魔王さんはお酒の量に安心したのか、俺から受け取ったカップにすぐに口を付けて……いい反応だな。いつもは鋭くてかっこいい目を大きく見開いてカップと俺の顔を何度も見る。
「美味い! たったスプーンに三杯程度なのに、酒の風味がして美味いな。それに……しっかり酒の味がするのは悪いことをしているみたいだ」
あ、悪戯っ子みたいに笑うの、珍しい。かわいい。
「そう。昼なのにお酒ってちょっとだけ悪い感じするよね? ……あと、俺ね、今日はお昼ご飯抜いちゃった」
「え? どうした? 体調でも悪いのか?」
「ちがうよ。魔王さんとお菓子をたくさん食べるために」
「……!」
並んで寝ころんだ魔王さんの驚く顔を見てから、上半身を少しだけ起こしてトレイへと手を伸ばす。
「いつも、一~二個しか付き合えなくてごめんね? 今日は俺もお腹いっぱいお菓子食べちゃおうと思って」
焼き菓子がたっぷり乗ったお皿を引き寄せると、魔王さんはとろけそうな笑顔で俺の頭を撫でてくれた。
「ライト……なんてかわいいことを言うんだ……!」
「ふふっ。魔王さんもいっぱい食べようね?」
「あぁ!」
「まず、どれにしようかな……」
まだ明るい、温かい午後の日差しが窓から差し込む広いベッドの上で、楽な格好でゴロゴロしながら食べるお菓子って、なんとも言えない美味しさがあるよね。
ベッドの上でものを食べる背徳感。
最高に気が緩んだリラックス状態で感じる甘さ。
それを好きな人と共有できる楽しさ。
しかも、こんなだらしないことを、いつも真面目で隙のない、かっこいい魔王さんがしているっていうのもいい。
似合わないところもいい。
「ふふっ」
「どうした? ご機嫌だな?」
片手で焼き菓子を持ったまま俺の頬を撫でてくれる魔王さんのほうが、ご機嫌な顔しているけどね?
「魔王さん、俺が誘わなかったら一生こんなことしなかったんじゃない?」
「そうだろうな。大昔だが、一番様と深夜にこっそりベッドで酒を飲んだことはあったが……昼間に、こんな格好で、菓子まで食うなんて……ライトに誘われない限りしなかっただろうな」
「だよね。魔王さんが俺のせいでだらしないことしちゃうって、なんか……魔王さんが俺色に染まっちゃっている感じがして嬉しい」
「俺が? ……そうだな。俺はライトに染まっているな」
「俺も、魔王さんに染まっているけどね?」
チラっとバスローブの襟に指をひっかけて、胸元に入った魔王さんの角の形の紋を見せつける。
「んンっ!」
これでちゃんと煽られてくれるのもかわいいんだよね。
「お腹は満たされてきたから、もっと魔王さんを補給させて?」
「あぁ!」
切り替え早いなぁ。体を起こした魔王さんが、お茶とお菓子が乗ったトレイをサイドボードに移動させる。
ベッドの上が急に広くなって……夜でも部屋には明かりがともっているし、魔王さんは俺の顔が見やすいように明るいままセックスをすることが多いんだけど……昼間の明るい部屋だと白いシーツが眩しいくらいに白く見える。
「……明るいと、ライトの美しい金髪が一層美しく見えるな」
魔王さんはシーツよりそこが目に入るんだ?
嬉しくてニヤけちゃうな。
「やっぱりこの色いいよね? ここも、魔王さんに染まったというか染めてもらった部分だね」
ベッドに仰向けに寝転ぶと、魔王さんが覆いかぶさりながら俺の髪を優しく梳く。
「あぁ……俺がライトを染めたんだと思うと……この金髪は何度見ても美しく胸が高鳴る」
「ふふっ。俺は見た目も気に入っているけど、魔王さんがたくさん触れてくれるのも気に入っているよ」
魔王さんの黒髪や、艶のある角も、明るい時間のほうがかっこいい……って言ってあげたいんだけど……魔王さんの顔が近付いてきて嬉しそうに俺の唇を啄んだ。
「んっ」
「……ふっ。かわいいな」
「魔王さんはかっこいいよ」
「あぁ、ライトはかわいい」
会話が微妙にかみ合っていないんだけど……すごく楽しい。
「ふふふっ。もっと言って?」
「かわいい。とてもかわいい。誰よりもかわいい」
魔王さんが真剣な顔で言いながら、俺の頬や首筋を啄んでいく。
鎖骨、胸元、紋は丁寧に何度も何度も。
「ん、あ……魔王さん……」
魔王さんのバスローブの紐を引くと、俺の体にキスしながら、魔王さんがバスローブを脱いだ。
「ライト」
「ん……」
魔王さんの指も俺のバスローブの紐にかかって、少し背中を浮かせてバスローブを脱がせてもらう。
これで全身ピッタリくっつけるけど、そうだな……せっかくだから。
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