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第七章~おごりの盾~
四百五十七話
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――ぼくの様子が変なの、心配して……?
優しい眼差しに、宏ちゃんはわざわざぼくを構いに来てくれたんやって、わかったん。
いつも通りにしてるつもりでも、宏ちゃんはすぐに気づいてくれる。
「はい、あーん」
小さいフォークにさして、りんごが口元に差し出される。おずおずとかじれば、甘酸っぱい果肉が口の中でしゃくりとほどけた。
「美味いか?」
こくりと頷くと、切れ長の目がますます優しくなる。ぼくは、胸がじーんと熱く震えてしまった。
――宏ちゃん、すっごく忙しいのに。ぼくのために……
ありがたくて、嬉しくて、言葉にならない。
こみ上げる涙を堪え、もくもくとりんごを噛んでいると、ふっと息を漏らすように笑った気配がした。
「なあ、成」
「……ん?」
「前も言ったけどさ、俺はお前の味方だよ」
はっとして目を上げると、声と同じくらい優しい笑みがそこにあった。
「帰ってきてから、なんか沈んでるだろ。悩んでるなら、とりあえず話してみないか?」
どくん、と鼓動が跳ねる。
『こんなことでもなければ、あなた達の縁はなかったのでしょう?』
城山さんの言葉が甦ってきて、怖くなった。「陽平とよりを戻せ」と言われてることを話して、宏ちゃんの夢が覚めてしまわないかって。
――ずっと良くしてもらっていて、そんなことを考えるのが失礼やってわかってる。でも……こわい。
俯いていると、大きな手が膝に置いていた手に重なった。確かな温もりが伝わってくる。
「ひろちゃん……」
「成、大丈夫だよ。俺がいる」
優しい夫の顔を、おずおずと見上げる。
宏ちゃんは笑ったまま、見つめ返してくれた。ぼくの言葉を待ってくれているのがわかって、胸が震えた。
――そうや。宏ちゃんは……いつも、ぼくの気持ちを聞いてくれる。いつだって、側に居てくれて……守ってくれる。
怖がらないで、いい。――怖がっちゃダメだ。
ぼくは大きな手を握り返し、ぼくは「あの」と口を開きかけた。
ピリリリリ!
その瞬間、鋭い電子音が鳴り響く。
はっとして顔を見合わせると、宏ちゃんのポケットから鳴り響いてくるみたいやった。
「宏ちゃん、出て?」
「……いいや、あとでかけ直すから」
苦虫を噛みつぶしたような顔に、苦笑する。
「ううん、大事なお仕事の電話やと思うし。ぼくの話は、あとでゆっくり聞いてほしいな」
「すまん……すぐに戻るからな」
宏ちゃんはすまなそうに立ち上がり、スマホを耳に当てながら部屋を出てった。ぼくは、ひらひらと手を振って――ふうと息を吐く。
「宏ちゃん……すっごく忙しいやんな。心配かけてごめんね」
可愛らしいうさちゃんリンゴをフォークでつつき、独り言ちる。多忙なのに、こうして構いに来てくれたことが嬉しい。でも、同じくらい申し訳なくもあった。
「もっと、ちゃんとしなくちゃ!」
リンゴを頬張って、気合を入れる。
食べ終わったお皿を持って、部屋を出た。ああ言ってくれたけれど、多分お仕事に戻らないといけない宏ちゃんに、お茶を差し入れたくて。
――明日、話そう。必ず……!
そう意気込んだぼくは、その明日にとんでもないことが起きるとは、想像もしてへんかったんよ。
優しい眼差しに、宏ちゃんはわざわざぼくを構いに来てくれたんやって、わかったん。
いつも通りにしてるつもりでも、宏ちゃんはすぐに気づいてくれる。
「はい、あーん」
小さいフォークにさして、りんごが口元に差し出される。おずおずとかじれば、甘酸っぱい果肉が口の中でしゃくりとほどけた。
「美味いか?」
こくりと頷くと、切れ長の目がますます優しくなる。ぼくは、胸がじーんと熱く震えてしまった。
――宏ちゃん、すっごく忙しいのに。ぼくのために……
ありがたくて、嬉しくて、言葉にならない。
こみ上げる涙を堪え、もくもくとりんごを噛んでいると、ふっと息を漏らすように笑った気配がした。
「なあ、成」
「……ん?」
「前も言ったけどさ、俺はお前の味方だよ」
はっとして目を上げると、声と同じくらい優しい笑みがそこにあった。
「帰ってきてから、なんか沈んでるだろ。悩んでるなら、とりあえず話してみないか?」
どくん、と鼓動が跳ねる。
『こんなことでもなければ、あなた達の縁はなかったのでしょう?』
城山さんの言葉が甦ってきて、怖くなった。「陽平とよりを戻せ」と言われてることを話して、宏ちゃんの夢が覚めてしまわないかって。
――ずっと良くしてもらっていて、そんなことを考えるのが失礼やってわかってる。でも……こわい。
俯いていると、大きな手が膝に置いていた手に重なった。確かな温もりが伝わってくる。
「ひろちゃん……」
「成、大丈夫だよ。俺がいる」
優しい夫の顔を、おずおずと見上げる。
宏ちゃんは笑ったまま、見つめ返してくれた。ぼくの言葉を待ってくれているのがわかって、胸が震えた。
――そうや。宏ちゃんは……いつも、ぼくの気持ちを聞いてくれる。いつだって、側に居てくれて……守ってくれる。
怖がらないで、いい。――怖がっちゃダメだ。
ぼくは大きな手を握り返し、ぼくは「あの」と口を開きかけた。
ピリリリリ!
その瞬間、鋭い電子音が鳴り響く。
はっとして顔を見合わせると、宏ちゃんのポケットから鳴り響いてくるみたいやった。
「宏ちゃん、出て?」
「……いいや、あとでかけ直すから」
苦虫を噛みつぶしたような顔に、苦笑する。
「ううん、大事なお仕事の電話やと思うし。ぼくの話は、あとでゆっくり聞いてほしいな」
「すまん……すぐに戻るからな」
宏ちゃんはすまなそうに立ち上がり、スマホを耳に当てながら部屋を出てった。ぼくは、ひらひらと手を振って――ふうと息を吐く。
「宏ちゃん……すっごく忙しいやんな。心配かけてごめんね」
可愛らしいうさちゃんリンゴをフォークでつつき、独り言ちる。多忙なのに、こうして構いに来てくれたことが嬉しい。でも、同じくらい申し訳なくもあった。
「もっと、ちゃんとしなくちゃ!」
リンゴを頬張って、気合を入れる。
食べ終わったお皿を持って、部屋を出た。ああ言ってくれたけれど、多分お仕事に戻らないといけない宏ちゃんに、お茶を差し入れたくて。
――明日、話そう。必ず……!
そう意気込んだぼくは、その明日にとんでもないことが起きるとは、想像もしてへんかったんよ。
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