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第2章 宣戦布告、デイトナ戦線
第10話 星空に願いを
しおりを挟む通信塔を破壊した後、僕等は[ルスタチア王国]ヘと戻った。そのまま城下町を散策、辛うじて焼けてない一軒の家屋へ入ると、今晩はそこで過ごすこととなった。
皆が寝静まった頃、僕は一人ベランダに出ては月夜を眺めていた。今夜は星がよく見える、澄み渡るほど空が綺麗だ。
「………デイトナ」
呼び声を聞いて振り返ると、そこには心配そうな顔色を浮かべてアヴァロンが佇んでいた。
「ん?起こしてしまったかい?」
「……いえ、デイトナがいなかったから…」
はっきりしない声でアヴァロンは呟いた。
「そうかい…どうだアヴァロン、よかったら君も一緒に?」
僕が空を指差し誘うと、アヴァロンは一回小さく頷いて、嬉しそうには頰を緩ませて隣へと座った。こうしていると、アヴァロンは本当に人間のように思えてならない。
「アヴァロン、疲れてないかい?」
「…全然平気。むしろ、私はデイトナの方が心配…」
「え、僕?」
いきなり振られて戸惑ってしまう。
「…デイトナ、無理してる」
どうやらアヴァロンには全てお見通しのようであった。というのもだ、先日の戦闘で少々張り切りすぎたせいか体の節々に痛みが走っていた。
この痛みは三大竜王の一角である[ミラージュ・ロストエイジ]の細胞がそうさせている。
その莫大な力の代償として、僕の体を乗っ取ろうと[ミラージュ・ロストエイジ]の意思が暴れているのだろう。
ある程度には慣れていたのだが、その慣れもそろそろ終わりに近いかもしれない。それ程に、今回の痛みは鋭かった。
「アヴァロン…君の前では隠しきれないようだね…すまない、少し膝を借りてもいいかな…」
「……うん…」
アヴァロンの膝に頭を乗せると、途端に痛みが和らいだ。どうしてか、アヴァロンに触れていると僕は痛みを忘れることができた。同じ竜王の細胞を持つもの同士だからなのか…その変については未だ研究の最中である。
「…今夜は、星が綺麗だね…」
不意に、僕の頭を優しく撫でながらボソリとアヴァロンが呟いた。
「だろ?こんな夜には、いつも兄様達とよく星を眺めたものだ」
まだ兄様達が生きていた頃、僕はよく城の展望台へと連れられ星を見ていた。その頃の僕はさして星になど興味はなかったが、こんな事になってしまった今ではそれすらも懐かしく、恋しい。
もうあれから50年も経っているだなんて、俄かには信じられずにいた。
「……デイトナは、やっぱり皆が死んで悲しい?」
「うん、ちょっとだけね」
「…….嘘、すごく寂しそうな顔してる」
「ふふ、分かるかい?」
「……もちろん、私はデイトナのことだったら、何だって知ってるから」
アヴァロンは髪を耳にかけて言った。そんなアヴァロンの仕草はまるで大人の女性のようで、今は亡きお姉様を彷彿させた。
その時ばかりは僕はアヴァロンを見とれてしまっていた。アヴァロンは僕の視線に気づいて、頰を紅潮させそっぽを向いた。
「あまり…見ないで…」
「あ、ごめんよアヴァロン」
いつまでもこの時間が流れればいいのにな、そう星に願った。ただそう願ったところで明日になれば僕等はまた戦場へと赴かなければならないし、僕は今見てる満天の星の数と同じくらいに人を殺すことだろう。それが僕の復讐なのだから、僕はそれを止めることは決してない。
最早止まることはできない。
その為に今まで頑張ってきた。その為の犠牲を今までどれだけ積んできたことか…考えるだけ虚しくなるだけだ。
「アヴァロン、あともう少しだけ…僕に付き合ってくれるかい?」
「……少しじゃなくていい、デイトナがいるというなら、私もずっといる」
「ふふ、君は相変わらずだな…でも、そんなアヴァロンが僕は好きだよ…」
「……す、好き?」
「そうさ、僕の可愛い可愛いアヴァロン…君だけは絶対、僕が守ってみせるから…」
「……約束…」
「うん、約束だアヴァロン」
僕等は小指を出し合って、指を絡め約束を誓った。その後僕等はお互い無言ではあったが、今更口に出して言うまでもないだろうと思う程に僕等は僕等をよく知っていたし、僕等の間には無用な言葉など不要だと思った。
また二人一緒にこうして星を眺めることないかもしれないとは、アヴァロンも感じてくれていたことだろう。
これから忙しくなる。僕等は自ずとそれを理解しているからこそ、いつまでも星空眺め続けた。
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