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第4章 変わる世界と思い
第21話 演説
しおりを挟む場所移り、次に僕とアヴァロンは建物の階段を下ってやたら大きな地下室へと通された。これまた見事な黒装束に身に包んだ[天竜使徒]達が詰め寄っていた。そこそこ広い地下ではあるが、数がその広さを圧倒していた。
「これ皆んな[天竜使徒]の人たちなのかい?」
「ええ、その通りです」
リボンズは言って、そして口を大きく開いては、「皆の者、教祖のお通りである。道を開けよ!」とは、騒めく[天竜使徒]の皆々に叫び伝えた。そうした次の瞬間、地下に集まった[天竜使徒]の視線一切が僕らへと集中し、感嘆に満ちたどよめき声が其処かしらから児玉していた。
そしてサッと人集りは避けてひとつの道ができる。
「うん、悪くない気分だ。君もそう思うだろ、アヴァロン」
アヴァロンは首を傾げて、
「…よく、分からない」
と疑問そうに呟いた。
「要するにさ、皆んな僕たちを歓迎してくれているんだよ」
「…皆んな、デイトナの為に集まっている?」
「ああ、そうだよ」
「…なら、それは良いこと」
アヴァロンはニッコリと笑った。僕個人の為に集まったというわけではないが、アヴァロンからすれば僕だけ評価されればそれだけで充分なのだろう。
「…今はそれでもいい。でも、いつかはアヴァロン、君がその立場になるんだからね?よく覚えて置くんだよ?」
「……よく分からないけれど、覚えて置く」
アヴァロンは嬉しそうにコクリと頷いた。
「では教祖、壇上へ」
そう言って、リボンズが道の先にはある壇上へと指先した。どうやらあそこに上がって皆の前に立つ、ということらしい。
「じゃあ行こうアヴァロン」
「……うん」
アヴァロンの手を引いて、地下一杯に響き渡る歓声を受けて、僕らは壇上へと上がった…
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「遅いですね」
そう言ったのはルーシェ。かれこれ一時間は戻らないデイトナ達のこと気にかけ始めていた。今は別部屋に待機し、粗末な宅をマントとアブゾーブで囲っている最中である。
そんなルーシェの言葉にマントが反応した。
「仕方ないでしょう。何せ我々[天竜の遣い]は今では有名人なのです。今頃怒涛の質問責めでも食らってるのではないでしょうか?」
「デイトナ様が答えるわけがないわ。だって、デイトナ様ケチだもの」
ルーシェは口元を緩めて、笑っては言った。そんなルーシェにアブゾーブが口を開いて、
「ところでルーシェ、お前とデイトナはどんな関係なんだ。アヴァロン様はともかくとして、お前は人の下につくような玉には見えないが」
「…どういう意味?」
「つまりだ、お前にはお前の企みがあるんじゃねーのか?」
アブゾーブはキッパリとした口調で言った。それはルーシェと実際に対峙し敗北したアブゾーブの素直な疑問にして、アブゾーブの予測が正しければ、実力だけで言えばルーシェはデイトナに優っていると、そう考えていた。
「確かに契約印を結んでいるという関係なのは知ってるぜ。それでデイトナに逆らえないことは百も承知だが…ただ、それは飽くまで生死に関わる契約印だろ?つまり、デイトナが死ねばルーシェも命を落とす…というだけのものであって、別に命令に従う必要はないんじゃねーのか?」
「あら、トカゲの癖によく知ってるじゃない」
「まぁな、俺もかつて契約印で縛られていたことがあるからな…あと、俺はトカゲじゃねぇ!!」
怒りを露わにしてルーシェを睨みつけるアブゾーブに対峙、マントは割って入ると「まぁまぁ」と口を挟んで、
「でも、アブゾーブ様の意見には私も同意です。我々は仕方ないにしても、仮にも竜王の血を引く貴女ならいくらだってデイトナ王子から逃れる手段はあったはずです。だったら、デイトナ王子に服従する違う目的があるのではないか…と」
「その言い方だと、まるで私がデイトナ様を利用する為に仕方なく従っているように聞こえるのだけど?」
髪をかきあげ、じっとりとした眼差しをマントに送るルーシェ。『この私を疑っているのか?』とは言いたげであった。
「…僕には、そういう風に見えます」
「そう、なんだ…ふふふ」
ルーシェは意味深な微笑みを浮かべはすれど、言葉を口にすることはなかった。つまり答えるつもりがない、とはマントは自ずと理解して、
「…飽くまでも予想なので、お気に障ったのなら謝ります」
ペコリと頭を下げて謝罪した。
「何よ、散々言いたいことばっか言っておいて今更『予想です』だなんて通用するわけないじゃない…ふふ、まぁいいけど」
と、ルーシェは席を徐に立ち上がった。
「無駄話はこれでおしまい。行きましょう」
「行くって、どこにだよ?」
アブゾーブは尋ねた。
「決まってるじゃない、我らが主人の元へよ」
「待て待て、デイトナは今[天竜使徒]の奴らと話し合ってる最中じゃないのか?」
「さぁね」
ルーシェはあっけらかんとした態度で答えた。
「さぁねって、お前なぁ…デイトナ達の話し合いを邪魔するつもりかよ?」
「そのつもりはないけど、最悪そうなってしまうかもね」
「おいおい、それはいくら何で勝手がーーー」
と、アブゾーブはそこまで言いかけて、はっ、と何かに気づいたようには目を見開いて、
「…もしかして、デイトナは[天竜使徒]をどうにかするつもりでいるのか?」
「それを確かめにいくのよ。大体、デイトナ様はかなりのせっかちなの。だからね、私の知ってるデイトナ様なら話し合いに一時間もかけるようなことはしないはずだわ。大方変な悪知恵でも考え付いたんでしょ」
「…確証は、あるのですか?」
マントは神妙そうには呟いた。
「デイトナ様のお側にずっとお支えしてきた私の意見よ…確証があるに決まってるじゃない。それとも何、やはり私の言葉はそんなに信用できないってわけ?」
「い、いえ、そこまでは…」
口ごもるマントに、ルーシェは挑発的な態度で、
「だったらついて来なさい。その後で判断したらどう?」
答えて、部屋を出て行った。アブゾーブとマントは顔を向かい合わせると、互いに肩をすくめてはその後を追った…
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