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第4章 変わる世界と思い
第25話 真実
しおりを挟む「アヴァロン、どうしてここに…」
ルーシェは唐突には姿を現したアヴァロンを見て驚愕していた。それはマントも同じだった。
「…デイトナ王子の、指示ですか?」
「…違う」
アヴァロンは首を横に振った。
「…これは私の意思。あなた達を、止めに来た」
「すぐに帰りなさいアヴァロン!!」
ルーシェは叫んだ。それはマントの危険性を十分に理解しているからこそであり、今ここでアヴァロンとマントを戦わせていけないと直感的に感じたからである。
「ーーーもう、遅いですよ?」
マントは呟いて、瞬時に攻撃対象をアヴァロンへーー瞬間的早さでアヴァロンに剣先を突き出した。そうしてグサリとはアヴァロンの胸元を貫いては、
「これは好都合です。アヴァロン様、一番の障害であった貴女をこの場で葬れるとは思ってもみませんでしたよ?」
卑屈そうには笑っては言った。
「…マント、貴方は本当にこれで良かったの?」
アヴァロンは平然そうには尋ねた。そんなアヴァロンに、マントは「当然」とは呟いて、
「僕の覇道に、あなた方は邪魔なのです」
断定的な口調で、そう言った。
「…そう、やっぱり、こうなるんだね」
アヴァロンは寂しそうには呟いた。
「アヴァロン!!」
「…ルーシェ、心配しなくても、平気」
アヴァロンはルーシェに笑顔で答えると、マントに向き直った。
「…マント、私はね、ずっとこうなるのが嫌で、何回もやり直したの」
「何の、話ですか?」
「…私の話、聞いて、マント」
アヴァロンはマントの頭を撫でて、
「…私はね、皆んなと一緒に過ごすの、好きだった。ルーシェがいて、アブゾーブがいて、デイトナがいて…そして、そこにマントがいるの。いつか今日という日が訪れるのはわかってたけど、それでも、いつかはどうにかなるのかなって、だから…何回もやり直したの」
「やり直した?」
「…そう、やり直し。皆んなが笑って、明日を迎える事ができる、やり直し」
「…何だそれは…」
マントは小さく呟いて、アヴァロンを突き飛ばした。
「ふざけたことを言うな!やり直しだと…お前は、そんな冒涜を何度も繰り返してきたというのか!?本来なら僕が征服する筈だった世界でさえも飽き足らず、またしても僕の未来を邪魔するのか!?」
逆上したマントは剣を振り上げ、アヴァロンへと振り下ろした。ただそれをルーシェ許さない。
ルーシェは瞬時移動するとマントの剣を素手で掴んだ。
「させない」
「離せ!!」
「離すもんですか、アヴァロンの障害は私が排除する。それがデイトナ様との誓いであり、私の意思なんだから」
「…ルーシェ、いいの。もう、いいんだよ」
「よくない!!」
「…どうして?悪いのは、私だから…私が我儘をしたから、だからマントは怒ってる、違う?」
「違うのよアヴァロン。貴女は優しい子だから仕方ないの…むしろ、そんな貴女の思いに気づけなかった私に責任がある。私は一体、何をやっていたのかしらね…」
「…ルーシェ」
「何も心配しなくていいのよアヴァロン。あとは私に任せない。だから…自分から死のうだなんて思っては駄目。デイトナ様が…悲しむから」
ルーシェは決意した。そこに最早迷いはなく、マントに対する情は消え失せていた。たとえマントと刺し違えてもマントを殺すーーールーシェはそう、決意した…
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アブゾーブと共に皆んなの所へ向かっている最中だった。
「デイトナ、お前は本来なら今夜、マントと刺し違えて、死ぬ事になっていたんだ。そしてルーシェもまた、お前が死んだと同時に契約に従っては消滅する…それが本来の、この世界のあり方だった」
アブゾーブはボソリとそう切り出した。
「…そう、だったのか」
今更否定しようにも、アブゾーブの言葉が嘘だとは思えなかった。実際、アヴァロンが代わりに行かなければ僕が向かっていたのだから、そこで死ぬという未来は容易に想像がついたのだ。
「アヴァロン様はな、お前らが死んだ後ずっと嘆いていた。世界を統治するというお前との約束を守りながらも、いつも泣いていた。俺はな、そんなアヴァロン様をずっと見てきたんだ。だから…俺はお前と同じことをした」
同じこと、つまりはこういうことだろう。
「アブゾーブ、お前もまた竜王細胞の研究に手を染めたというのか?」
「ああ、そうだ」
アブゾーブは強く頷いた。
「俺がこの世界についたのはついさっき、丁度マントが宿から去った後のことだ。俺はかつて、自分の一番の部下であるマントの思いに気付けないでいた。だからこそ、あいつはこんなことを仕出かしちまった。あの時、俺がちゃんとあいつのことを理解してあげられていたのならと…俺はずっと、後悔していたんだ」
アブゾーブは声を震わせて、
「一度、俺はマントに命を救われている。あいつがいなきゃ、俺はあの時お前に殺される筈だったんだからな。はは、皮肉なもんだなデイトナ…俺たちがこうして一緒にいることは、実におかしなことじゃねぇか?」
「…全くだ」
アブゾーブはマントを救いたくて、僕はアヴァロンを救いたくて、時を遡ってはこうして巡り合った。これらを総じて言うならば、運命と呼べるだろう。
「デイトナ、お前の計画は知っている。明日、お前は[天竜使徒]をけしかけて世界中で一斉に暴動を起こさせ、最後の闘いをするつもりだったんだろ?」
「…ああ、その通りだよ」
「でもな、お前とマントと共に死ねば、その計画は水の泡となる。少なくとも俺の歩んだ未来ではそうだったぞ?だったら、やる事は決まってるよなぁ?」
アブゾーブはニヤリと笑った。
「ふふ、僕を脅しているつもりかい?」
「そうじゃねぇよ。協力しようじゃねぇかって、そう言いてぇんだ。皆んなで一緒に、世界征服しようじゃねーか?それがお前の願い、だろ?」
「ふん、知った口を聞くなよアブゾーブ。[デイトナ戦線]のリーダーは僕だぞ?」
「はは、違いねぇ」
アブゾーブはガハハと豪快には笑った。
「じゃあリーダー、俺はお前に従うとしよう…俺を導いてくれ、デイトナ」
「了解したアブゾーブ。では、快くして聞け…」
そうして僕は、声高らかに叫んだ。
おわり
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take様、感想有難う御座います。
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今一度作品を見直し、より読まれる作品にするにはどこをどう改善すれば良いのか、考えていきたいと思います。