僕の考えた最強ドラゴンで世界征服~復讐を誓う悲劇の王子は50年前へと遡る!行こうアヴァロン、殺戮の始まりだ~

泥水すする

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第4章 変わる世界と思い

第24話 決別の道

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 一方、ルーシェとマントの戦闘は次第に激しさを増していた。かつてルーシェに手も足もでないままには敗北したマントは、今に限っては何故か拮抗した戦いを繰り広げていたのである。

 竜細胞を有したルーシェと対等に渡り合える存在など、この世界においてはまず少ない。ましてや以前のマントの実力は大したものではなかった。では、マントはどうしてこれ程の力をどこで身につけたのか?

 ルーシェはその理由を考え、一つの結論に達していた。

「…細胞移植、したのね?」

「…ふふ、ご名答」

 マントはすんなりとは認めて、ニヤリとは不敵な笑みを浮かべた。

「因みに、細胞だと思いますか?」

「愚問ね。そんなの一つしか考えられないじゃない…」

「ほう…もしかして竜細胞だと、お考えですか?」

「馬鹿言わないでよ。貴方なんかに竜細胞が扱えるわけないでしょ?ましてや私と渡り合える程の竜細胞なんて、デイトナ様とアヴァロン以外にない。でもそれは不可能。竜細胞の中でも竜王細胞の適応率は奇跡に近い程低いからね…だったら、しか考えられないでしょ?」

 ルーシェは鋭い眼光を放ち、マントを睨みつけた。

「ドラゴンスレイヤー…オーズベルトの細胞、違う?」

「……ふふ、やはり…分かるんですね」

 マントは感心したようには微笑んで、

「竜王である貴女に挑むには、この力に頼る他ないだろうとは、常々考えていたのです」

「馬鹿ね….竜細胞にしろドラゴンスレイヤーの細胞にしろ、貴方如きが制御できる代物じゃないないわ。デイトナ様を見ていれば分かるでしょ?強すぎる力は、やがてその身をすら滅ぼす。生きているのが苦しくなるぐらいに…ね」

「何を言い出すかと思えばそんな事ですか…」

 マントは呆れた口振りで言った。

「例えこの身朽ち果てようと、僕の野望が果たせられるのであれば一向に構いません。むしろ、ただ指を咥えて、己が無力を呪う方がずっと辛いんですよ」

 マントはそんな思いを今まで嫌という程味わっていた。魔人の中でも、比較的脆弱な部類のマントは、いつも他人の武功を側から眺めることしかできなかったのだ。

 いつかは自分もと、常々自分に言い聞かせては見れど、では果たしてそのとは一体どれくらい先になるのかーーー1年後か、いや三年後か五年後か…分からなかった。分からないからこそ、マントは恐れていた。もしかしたら、自分は一生報われないままに死んでいくのではないか、と。

「竜王の眷属として、生まれた時から無限の可能性を約束されていた貴女になど分かるはずないでしょう?」

「ふん、理解したいとも思わないわ」

 ルーシェは吐き捨てるように言って、マントに猛烈なる剣撃を浴びせた。ただその全てを凌いだマントは、反撃とばかりにルーシェへと飛びかかる。その繰り返しがしばらくは続いた。互角の勝負、一進一退の攻防に火花が散るーーーそんな時だった。

「…二人共、もうお終い…」

 二人の前に、アヴァロンが姿を現した…
 
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 アヴァロンが部屋を出て、すぐ後の事だった。

「よお、デイトナ」

 ぼんやりと窓の外を眺めていた僕の耳に入るそんな声ーーアブゾーブだ。アブゾーブは部屋へと入ると、遠慮なしにはドカッと床へ腰つかせ座った。

「どうしたんだい、こんな夜遅くに」

「いやな、今夜は中々寝付けなくてな…」

 そう言ってアブゾーブは大きなあくびをして、気だるそうには肩を鳴らした。

「寝付けないって、お前はいつ何時でも熟睡してたじゃないか?」

「はぁ、んなわけねーだろ?」

「いやいや、実際今だってすごく眠そうに見えるんだがね?」

「……ふん、まぁ細かいことはいいじゃねーか」

 アブゾーブは言って、ガハハハとは肩を揺らして笑った。そんなアブゾーブを見て、少しだけ気持ちがフッと軽くなるのを感じていた。

「お前はいつも能天気そうだね」

「何だと!?嫌味かそれは!?」

「違うよ、褒めてるんだ。僕もアブゾーブのように、物事をもう少し楽観的に考えられたら、こんなにも苦しむことはなかったのではないか…なんてね?」

「やっぱり嫌味にしか聞こえん!」

 アブゾーブは鼻息を荒くして叫んだ。ただそのすぐ後にも、朗らかそうには笑って、僕もそれにつられてはクスクスと笑っていた。

 そんな束の間の談笑ーーー僕は再び視線を窓の外へと向けた。

「今夜は、綺麗な月だなぁ」

「そうだな」

 アブゾーブは同調するには答えた。やけに落ち着いた口振りだった。 まるで普段のアブゾーブとは別の誰かと話しているような、そんな感じを受ける。それが僕の勘違いなのか考えて、そんなこともないだろうは思った。今夜のアブゾーブは、どこか変だ。

 また引っかかって仕方がなかった。それはいわゆる既視感というやつで、いつかの僕もまた今夜のようなアブゾーブと二人、談笑を交わしていたような気がしていた。

僕の記憶が正しければそのような場面は一度たりとありはしなかったが、そもそも時を遡って現代まで移行してきた僕の記憶は所々抜けている節があるからに、これはその一片なのかもしれない。

 それはさておき、僕はアブゾーブに尋ねた。

「…なぁアブゾーブ。どうして何も聞かないんだ?」」

「…ん、何だ急に?」

「いやね、鈍感なお前でも流石に気付いてるだろう?この場に僕とお前の二人だけしかいない、どうして、とは思っているだろうに」

「ああ、そんなことか」

 やけにあっさりとした口振りだった。

「不思議に思わないのかい?」

「まぁな」

「どうして?」

「…だから、なのかもな」

「?」

「…なぁデイトナ、お前は世界征服の果てに、どんな未来を築きたいんだ?」

「何だよ、今はそんなことーー」

 そう言いかけて、僕の目にギラリと光が迸った。月光に反射して煌めくそれは僕の顔に向けられていてーーアブゾーブは抜き身の剣先を僕に向け、真剣な眼差しを送っていた。

「…どういうつもりだい?」

「どうもこうもねぇ…いいから答えろデイトナ。お前の野望の先にある未来ってやつをよ」

 アブゾーブは迫真の勢いで言った。その様子から冗談なんかじゃないことが容易に想像できた。事の経緯についてはよく分からないが、アブゾーブは僕がとぼけた返答を返せば即座に首をはねるだろう。

 逆らおうにも、今の僕にそんな力はない。アブゾーブにさえ負けるだろう。

 以上を踏まえ、僕は素直に観念し、口を開いた。

「僕の築いた未来にあるもの、それは…人知を超越したアヴァロンによる地上の統治だ」

「……知っている。俺の聞きたいことはそこじゃねぇ。そこに何を求めるかって話だ」

「と、いうと?」

「恒久なる平和か、それとも破滅を繰り返す戦争か…どちらだ?」

「それは僕が決めることじゃない。僕はね、地上に残された者たちに全てを委ねたいと思っているんだよ。平和を求めるならそれでいい、戦争を繰り返したいというのであればそれでも構わないと思っている。ただね、そのどちらにせよ、絶対的な神による統治は間違いなく必要だとは考えているんだよ。神の監視下に置いて、全てを見通す。度が過ぎる平和は世界を堕落させるし、行き過ぎた戦争は不幸を生む….そこの舵取りを、アヴァロンの超越した力により統治、絶対的な権利を託す。全てはアヴァロンの御心のままに…それが僕の望む未来さ。だからこそ、一度この世界をリセットする必要がある。それが僕等には出来る…違うか?」

「……お前には、それが出来ると言うのか?」

「当たり前だろ。だからこそ僕は再びこの世界にやってきたんだ…」

「…嘘は、言ってないんだよな?」

「クドイぞ。僕を見てきたお前なら分かるはずだぞ?」

「………違いねぇ」

 アブゾーブは剣を収めた。そして、重たいため息を吐いて、

「遣る瀬ねぇな…いくら聞いたって、やっぱお前の言っていることが正しいと思っている俺がいる。また、マントがやろうとしていることは間違っていると非難してる、俺もな…」

 乾いた笑い声を交えて言ったーーーその瞬間、僕の脳裏に電流のようなが走り過ぎった。言わば、それは走馬灯のようなものである。

 そして先ほどから感じていた違和感の正体を知った。

「…アブゾーブ、僕は以前、お前とこんな会話をしたことがあった、よな?」

「ああ」

 アブゾーブは吹っ切れたようには笑った。

「いつ、だった?」

「その表現は正しくねぇな。何たってに於いてこの会話をするのは今が初めてな筈だ…そうだろ?」

「まさか…お前は…」

「ああ、そのまさかだよ。俺も、時間を遡って今ここにいる」

「…どうして…」

「どうしても何も、そんな事を出来る存在はに於いて他ならないだろう?」

「神…アヴァロンか!?」

 アブゾーブは静かに頷いて、

「行こうぜデイトナ、全てを終わらせよう」

 手を差し伸べて、そう言った…

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