6 / 46
第1章
第5話 大精霊よ俺に微笑め
しおりを挟むそして次の日、晴れてルクスという新しい仲間を迎えいれた俺たち御一行はとある依頼を受けて近くの森へとはやってきていた。
依頼といってもだが、これは列記として冒険者ギルドで受注した魔物の討伐クエストというやつであり、初級の冒険者にはちと荷が重い内容であった。
にしてその魔物の討伐クエスト対象とは、最近ここいらで暴れ回っているという中級種の魔物[バルバッサル]というゴリラのような体躯を成した怪物なのであった。このバルバッサルという魔物もまた先日遭遇したレッドデビル同様に最近見られるようになった魔物で、突如としてはここいら森に出没しては街の人々を攫って食べたりしているらしい。
そんな魔物、バルバッサルがだ、何故今の今まで討伐されず放置されていたかと言うと話は簡単。このバルバッサル、かなり強い。中級種といっても、単純な力で言って限りなく上級種に近い中級種といったところか、無論駆け出しの冒険者如きが太刀打ちできる相手でもないし、ましてやそこそこ経験豊富な冒険者が幾人も骨となって帰ってきたとはギルド内で噂になる程だった。
つまり、俺たちじゃ無理かもしれない…そう、思っていた。
「えっと…」
開いた口が塞がらない、そんな気持ち。そんな気持ちにさせてくれたのは俺たちの中には伝説の勇者の正統な血統を継ぐマルシャがいたから~、ではなく、何を隠そうルクスの仕業であった。
「えーと、ルクス、ちょっといいか?」
「は、はい、何でしょう?」
「うん、いやな、別に疑うつもりはないんだよ?ほんとだよ?だって俺たち仲間だし、うん」
「は、はぁ」
「でもさでもさ、何かさ、『あっれ~?何かおかしいぞ~?』って俺の中にいる心の中の俺がだよ?ルクス、君に一抹の疑問を尋ねたがってるからさ、聞いても良い系な人?んん?」
「は、はい。どうぞ?」
「では聞くが、こりゃ何だ?」
俺は目の前に広がる一面焼け野原となった地帯を指差して言った。俺の記憶が正しければ、いや正しくなくとも周りの様子からしてここには間違いなく木々が生い茂り、草木が鬱蒼と生え茂る森の中であった。あった、とはつまりそういうこと、過去形なのである。
過去形にしてしまった人物こそが俺の目の前にいるーーールクスだ。
俺の目が正常であったのであればだが、ルクスとは襲いかかってきたバルバッサルに指先を向けた、刹那、一瞬ピカッと光ったと思ったらそのすぐ後にも閃光が走りバルバッサルの巨体を貫いていた。貫いてからは今のこの状態、一面焼け野原と化していたのである。
うん、なぁーにコレ?
「そ、その、指先に溜め込んだ雷をバルバッサルに撃ち込んだのですが…ちょっと、やり過ぎてしまいましたかね?」
ルクスは反省めいた口振りで言った。その瞳はウルウルとしていて、「やってしまった…」とは言いたげな目で俺を見る。
いや俺が本当に知りたいのはそうじゃない、そうじゃないんだ…いやな?結果としてお前が指先からその雷?とやらを発車させてバルバッサルと森林の一部を破壊してしまった事は事実として残っているし、実際見たし、それは結果論として素直に認めるよ。ただな?俺が知りたいのはな、ルクス…
「どうしてお前にそんな事できるのか…聞いてもいいか?」
問題はそこなんだよなぁ…
俺の質疑を受け慌てふためき答えあぐねるルクス。そんなルクスの隣へと歩みよってきたマルシャが唖然とした様子で呟いた。
「驚いた…」
ああ、俺もだよ。大体だ、今回のクエスト依頼を受注したのはマルシャで、「私一人でもこの程度の魔物なら余裕の余裕のよよの助けよ!!」と胸張ってそういうもんだから渋々と従ったわけで、俺の考えでは全てマルシャが片付けてくれるもんだと…そう思っていたわけなんだが。
「いやね?私もルクスの力については何かしら秘密があるとは思っていたの。というのもよ?この子の魔力量はあまりにも桁が違い過ぎるもの。ましてや駆け出しの冒険者が保有していい魔力では絶対にないし、だったら何か裏があるんじゃないかって、そう思っていたのだけれど…」
と、マルシャはルクスへと向き直って、
「まさか貴女、精霊の加護を受けているんじゃなくて?」
いきなりだ、トンデモナイことを言い出していた。
「は、はぁ!?精霊の加護…だと?」
何だそれは…
「何あんたそんな事も知らないの!?」
「ああ、知らないから聞いている。だから言え、今すぐ言え。お前が知っている事を全てぶち撒けろ!」
「な、何よそんな真剣な顔してさ…」
「いいから、はよ」
「わ、わかったわよ。いい?精霊の加護というものを説明する前に、まず精霊という存在について言及しておく必要があるわ。精霊というのは太古からこの世界に存在している生命体の根源であり、もともとは肉体を有していたとも言われているわ。それがどんな姿形を成していたのかは今では分かりかねるけれど」
「つまり、俺たちの遠い祖先とか、そんなところか?」
「そうそう。で、そんな生命体の根源である存在とはその身朽ち果てた後にも、霊体となってはこの世界にも残留し続けたと言われているの。それが精霊、超自然的な霊体であり、万物の始まりにして頂点に立つ存在の総称よ。この世界に神がいるとするならば、まず精霊がそれに近いわね、うん」
「か、神…だと?」
いかん、話が跳躍し過ぎて頭がこんがらがってきたやがった…
「で、その精霊とルクスとがどう関係しているって?」
「いやだからそれを今から聞こうとしていたところなんだけど?」
と、マルシャの視線がルクスへと移る。
「ルクス、正直に話して頂戴。貴女は昨日、魔法は一切使えないと言ったわよね?」
「は、はい…全くその通りです…」
「でもよ?今まさに今貴女がやったことは魔法を遥かに超越したものよ。こんな人知を凌駕した離れ業を貴女は平気でやってのけた…であるならば、考えらるのは1つしかない、でしょ?」
「…仰る通りです。先ほどマルシャ様が言った事に誤りは御座いません。そうです、私は精霊使い…なのです」
と、ルクスは重たい口振りで言って、また続けて、
「でも聞いてください!!別に私は隠すつもりはなかったのです!?だから今こうして披露してみせたわけですし、これから仲間であり家族となるお二方には私の全てを見てもらおうと、そう思っただけなのです!!だからバンキス様、私にそんな化け物を見るような目を向けるのはやめてください!!」
「お、俺!?」
「そうですよバンキス様!!今、絶対私のことを蔑んで見ましたでしょう!?」
「いやいやいやそんなつもりはないって!?」
違う!誤解するなルクス!俺はただ、またまた面倒な奴を仲間にしてしまったなぁ…と、これからの未来を想像してただただ絶望を感じていた、それだけだ!
「待て、とりあえず話を整理しよう!?な!?」
「うわぁあああああああバンキス様に嫌われてしまったぁあああああ!!もうお終いダァああああああああああ!!!」
「お、落ち着け!!」
いかん、冷静に話ができる状況じゃねぇ…
「ちょっとバンキス!?あんた何、ルクスをそんな風に見ていたわけ!?自分から仲間に引き入れといてそれないんじゃない!?」
「ば、馬鹿!お前まで何を言いだしやがる!?とにかく冷静になろう、な?」
「うわぁあああああああもう一人は嫌だぁああああああああ!!」
「バンキス、ルクスに謝りなさい!!!」
ああ、ダメだこりゃあ。
0
あなたにおすすめの小説
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる