能ある冒険者は、その内に秘めたる魔槍”グングニル”を隠す -北欧神話伝来の魔槍グングニルを与えられた俺という最強の存在の苦難の旅路-

泥水すする

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第3章

第1話 最高難易度は赤紙で

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 さて、俺たちはやっとと言って冒険者らしき活動を始めることにした。冒険者といえば冒険者ギルドに行き、依頼掲示板から受けたいクエストを見つけて魔物を退治したりの依頼遂行に努めると、そして腕を磨いてはまたクエストをこなしていくと…それが極一般的な冒険者というものであり、そういう意味で言えば俺たちは著しく冒険者の常識から逸脱していた。

 というのも、俺たちの実力とは既に凄まじい。それはカルママルク街の冒険者ギルドにやってきた折にも実感していた事実に他ならない。

「ところで、どのクエストを受注するかだが…」

 依頼掲示板に張り出された依頼書を一通り眺め、俺は口からそんな言葉を口に出していた。

 ざっと見、大したクエストは見当たらなかった。言ってシリウス街と然程変わりないレベルのクエストばかりである。カルママルク街とはこの大陸でも数多くのクエスト依頼が集う冒険者ギルドだと聞いていたから、どんなもんかと期待していた俺は一抹の物足りなさを感じていた。

「そうねぇ…私も昨日見てはいたんだけど、確かにどれもパッとしないクエストばかりよねぇ」

 と、マルシャはうーんとは悩み声を上げる。

「俺はてっきりもっと報酬高のクエストがあるもんだと思ってたんだがなぁ…」

 そうは言って於いて何だが、普通の冒険者ならこれぐらいの報酬でも申し分ないとは思う。だが俺達のパーティとは金食い虫の有り所である。それらの報酬では散財費の方が高くつくとは目に見えていた。

 それに俺たちの実力(俺はさして何もしないが)から言ってもっと高難易度の報酬高なクエストを受けれもいいはずだった。故にこれでは物足りないと感じると、掲示板の前で頭を抱えている。と、そんな時だった。

「じゃあ、赤紙を受けてみては?」

 そう言い出したのはガイル。俺とマルシャは眉を顰めてガイルに視線を移した。

「赤紙?何だそれは?」

「あれ、知りませんでしたかバンキス殿?赤紙とは高難易度クエストの依頼書のカラーを比喩した別称ぞい」

「な、何それ…聞いたことないんですけど」

 マルシャは驚きの口振りを浮かべて言った。どうやら本当に何も知らない様子。

 バリバリの冒険者であるマルシャが知らなくてどうして元魔王軍であるガイルが知っているのか、一先ずそこは置いといて、

「ガイル、その赤紙とやらはどこに行けば受けれるんだ?」

「確か受付で直接受けなければならない筈ぞい」

「そうか、どうするマルシャ?そうしとくか?」

「まぁ、その方が良さそうよね…ルクスもそれでいい?」

「ええ!私は皆様の判断に全権を委ねます!」

 よし決まった。では早速その赤紙を受けに行くことにしようとして、

「赤紙…ですか?あのぅ…お言葉ですが赤紙はこの冒険者ギルド最高難易度を誇るクエストなんですが…」

 と、受付にいた綺麗なお姉さんは訝しげな表情を浮かべていた。うん、全く正しい反応だと思う。

「な、何よ?私たちじゃ受けちゃダメだってそう言うわけ!?」

「い、いえそうは言っておりませんよ!?ただ見るからにお若い冒険者方ですので…少々荷が重いのではないかと…」

 そう言った受付のお姉さんの視線が俺達へと移る。右端のマルシャから次に俺、ルクス、ガイルを流して見て、

「はっきりと申します。命を粗末にするものではありません!」

 と、きっぱりとした口調では断言した。それは冒険者ギルドに務めるお姉さんなりの率直なる意見であり忠告であり警告であり、また言い方を変えれば思いやりと呼べるものなのだろう。

 何て良い人なのだろうかと俺は感動すら覚えていた。だが、そう思っていたのはどうやら俺だけなようで、

「やってみないと分からないでしょ!?私達を甘くみないで頂戴!?」

 とはマルシャ、

「そうですよ!私はともかく皆様はすごい実力者なんですよ!?」

 とはルクス、そして、

「大丈夫ぞいお姉さん!我々の手にかかれば高難易度クエストだろうが何だろうが問題ない!何せあの糞兄貴…じゃなかった魔王を潰すために集まった勇猛なる強者なんだからな!?ぞい!」

 ガイルのそんな宣言を最後に、三人は顔を見合わせ誇らしい笑みを浮かべ合わせていた。

 さすがのお姉さんも引いていた。もちろん俺も引いていた。どうしてこうも目立つ言い方しかできないんだ!?お前らのせいで皆んな俺たちに注目し始めてるじゃないか!?

 冒険者ギルドの節々からヒソヒソと声が聞こえてきた。

「お、おい…あいつから正気か?」
「赤紙、だと?死にたいのか?」
「死にたいんだろ?」
「馬鹿だな」

 そんなヒソヒソ話。うん、そう言いたい君たちの意見はかくも正しい。正しいが、そうは言ってくれるな。これでも俺たちはかなり真剣なんだ。

 いや確かに、じゃじゃ馬姫様方の態度とその可愛らしくも若々しい駆け出し冒険者風の姿を見ておいて「死に急ぎ野郎」と判断したい気持ちも分かるんだよ?でもな、こいつらは多分この場にいる誰よりも強い。比較に出来ない程にな?

「お姉さん…もう彼女達の好きにやらせてあげて下さい。後のことは俺が責任を持って対処しますので、どうか…」

「わ、分かりました…ですが、くれぐれも無理はしないように。無理だと判断したら直ぐに撤退するよう心掛けて下さい。あと、これは追記事項なんですが…仮にを赤紙クエストを失敗した場合、クエスト失敗の違約金もそれ相応のものになるとは覚悟しておいて下さいね?」

 だそうだ。

 これで俺たちに最早逃げ場がないことは確定された。クエストを達成しなければ明るい未来はないという、いやクエスト達成してもどの道明るい未来はないわけだが、少なくとも今日と明日を生きる為の予算ぐらいは確保できるだろう。

 こうして俺たちは赤紙のクエストを受け取り、冒険者ギルドを後にした。その間、他の冒険者達の好機な視線を浴び続けていたことは今更言うまでもないと思う。

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