能ある冒険者は、その内に秘めたる魔槍”グングニル”を隠す -北欧神話伝来の魔槍グングニルを与えられた俺という最強の存在の苦難の旅路-

泥水すする

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第3章

第2話 毒は絶対に嫌!嫌だかんな!?

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 赤紙の、それは実力ある冒険者にしか達成は難しいとされる最高難易度の別称なのだと言う。そんな赤紙には、こう記されていた。

『暗黒沼に根城を築く黒きワイバーン[ポイズンデスパリスト]の群れを退治してほしい』

 と、そんな内容である。聞くからにヤバそうなネーミングのワイバーン複数体がどうやら暗黒沼という場所にいるというのだ。

 何でもそのワイバーン達とは度々人里に降りてきては人を食ったり毒を撒き散らしたと、それはそれは近隣住民の方々は困り果てているという。しかも相手はワイバーンという空飛ぶ魔物である。冒険者でも飛竜種の魔物を相手にする事はかなりの腕前が必要とされていて、なおかつ今回討伐依頼対処である[ポイズンデスパリスト]は上級種と呼ばれる強い部類の魔物に位置する。

 今回ばかりは流石に苦戦するかもな…という俺の不安を他所に、以下3名は随分とヤル気に満ち溢れていた。

「さぁ皆んな!張り切って倒していくわよ!?今回の報酬があればしばらくは贅沢三昧なんだからね!?」

 先頭を歩くマルシャにルクスとガイルの掛け声は続いた。

「いや馬鹿!だから冒険資金だと言ってるだろうが!?」

「えー、少しぐらいよくない?ねぇ?」

「そうですよバンキス様!少しぐらい使ってもまた稼げばそれで万事解決です!」

「あはぁ…次はどんな服を買おうか…ぞいぞいぞいぞい…」

 と、全く反省の色がない様子である。一体どれだけ失敗を積み重ねれば成長するのか考えるも虚しく思う今日この頃。

「はぁ、分かったよ。でも少しは考えて金を使うこと!いいな?」

「「「おおおおおお!!」」」

 ほんと返事だけは達者なんだよなぁ…




 そうして歩く事しばらく、鬱蒼と生い茂る樹林帯の森を抜けた場所にその暗黒沼とやらは全容を露わにした。明らかに泥土が濁っているからではないだろう毒々しい紫色をしたその沼を見て、冷や汗が噴き出す。

「やべぇよやべぇよ…あそこに落ちたら絶対に死ぬ…」

 と俺の言葉に、

「その通りぞい。あの沼の水は既にポイズンデスパリストの毒に汚染尽くされている様子、片足突っ込んだだけでも致死量過多の毒を浴びることになるぞい」

 ガイルは断定的な口ぶりで答えた。

「な、成る程な…てか何でそんな詳しいんだよお前…」

「いや、だって?」

 ガイルは俺の耳に口を近づけた。

「元魔王軍だし?」

 ヒソヒソ声ではそう告げる。

 俺は無言で頷いて、「そりゃそうか」とは呟いた。

「よし、ここは作戦を立てていこうじゃないか。いつもみたいに無闇矢鱈に突っ込んでたら命がいくつあっても足りやしないだろうしな」

「ねぇ、勝手に仕切らないでくれる?それにバンキスはどうせ何も出来ないんだから後ろにいなさいよ」

「言ったな?じゃあ俺は助けたりしないからな?本当にいいんだな?」

「うっ…そう言われたら何だか不安になるじゃない…分かったわ…じゃああんたはルクスと少し後ろぐらいにいなさい。先頭は私とガイル、それでいいわね?」

「分かった。じゃあそれで、」

 と、作戦を決定付け用とした、そんな時。

「ちょっと待ったぁああああ!!」

 いきなりだ。ガイルがそんな叫び声をあげた。

「はぁ?一体どうしたってんだよガイル?」

「いや、今回は諸事情により後方支援を願い出たいのだが…いかがだろうか?」

「どうしてよ?」

 マルシャが首を傾げて言った。

「いや、だって…」

 と、ガイルはもじもじを身をよじる。そんなガイルの視線が自身の服へと注がれていた。俺は何となくガイルの心情を察していた。要するにだ、

「その服を汚したくないって、そう言いたいんだな?」

「ぞ、ぞい…」

 じゃあ着て来なけりゃいいのにって話だが、ガイルは昨日普段着ている魔鋼式霊術装を売ってしまっていた。一応、カルママルク街を出る手前買い戻そうとガイルが魔鋼式霊術装を売ったとされる古着屋へと立ち寄ってはみた。が、やはりと言って予算不足、然程の売値にはなってなかったからホッとはしたが報酬を得た直ぐにも買い戻そうとその場を後にしたのである。

 そうこうして綺麗な身なりをしたガイルがとは暗黒沼に至る。毒々しい沼とお嬢様のような身なりをしたガイル、ミスマッチの組み合わせもいいとこだ。

「分かった分かった、じゃあ今回はガイルは後ろな?」

「バ、バンキス殿!恩にきるぞい!」

「お、おうって…おい!暑苦しいからそんなひっつくな!」

「バンキス殿ぉ!!」

 ええい、鬱陶しい!

「ちょ、バンキス…あんた本当に大丈夫なわけ?」

 マルシャは不安げに尋ねてきた。

「何だ、不服か?」

「いや、別に私一人いれば別に問題はないけどさー」 

「じゃあいいじゃん。もちろん俺も囮になったり誘導したりはするしさ、」

「そうじゃなくて!だってあんた…もしかしたら死ぬかもしれないのよ?」

 と、マルシャは途端に表情を曇らせる。

 お、何だ?もしかして、あれか?

「マルシャ、お前もしかして俺の心配してくれてんのか?」

「は、はぁ!?何勝手に勘違いしてるわけ!?ばばばば、馬ッ鹿じゃないの!?」

 マルシャは顔を赤らめる。一体こいつは何をそんなに動揺しているのか甚だ理解に苦しむ。

「俺はてっきりマルシャが俺の事を心配してくれているもんだと…でもそうだよな、お前からすれば俺なんて心配すら価値ないと、」

「そ、そこまでは言ってないじゃないのよ!」

「じゃあ何だよ!お前は俺を全力で守ってくれるのか!?」

「あ、あんた少しは男らしさ見せないよ…」

 知るかんなもん!何故なら俺は能無し冒険者のそれ、お前達という最強の仲間達を得てしまったというのは大誤算だったが、それなら最大限に寄生してやろうと思っているんだからな?

「マジでもしもの時は助けてくれよな?」

「はぁ、仕方ないわね…」

「約束だぞ?絶対だかんな!?俺絶対毒で死ぬとかごめんだからな!?」

「分かった分かったから!?」

「よし、それじゃあ作戦決行だ!」

 と、俺は徐に振り返りルクスを見て、

「ルクス?もしもの時は解毒よろしくな?」

「バ、バンキス様…貴方様がどうしても毒を浴びたくはないという意思は伝わりましたから安心して下さい…」

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