能ある冒険者は、その内に秘めたる魔槍”グングニル”を隠す -北欧神話伝来の魔槍グングニルを与えられた俺という最強の存在の苦難の旅路-

泥水すする

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第4章

第2話 幼女は幼女と呼ばないで

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 生死の境を彷徨う、それがどういった感覚なのかは分からない。分からないが、俺は古種の魔物に取り込まれた後にも心地よい感覚を覚えていた。温泉に浸かっている感覚、と言えば分かり易いだろうか?

 つまり、かなり気持ち良かったていうこと。それだけははっきりと覚えていた。

 俺は、死んだのか?

「…ん?」

 目を覚ました。その時見た光景を一言で言い表すなら、「暗い」、その一言に尽きる。

 俺は一面真っ暗闇の空間の中で、意識を覚醒させたのだ。

「あれ?死んだの俺?」

「…違う。死んでない」

「そうか…はぁ…なら良かった。一瞬ここが死後の国かと思ってビビったぜ…でもそうかぁ…生きてて良かったぁ…」

「でも、死んだも同然。ここからは二度と出れないし、人間なら餓死して時期に死ぬ。ぬか喜びやね」

「ああ、そうかい…って、お前誰?」

 俺は声の主を見て言った。そいつは俺の傍に膝をついており、闇に等しきその空間に於いてそいつの真っ白な肌だけはくっきりと見えていた。

 幼女、言葉で言い表すならばその言葉が一番しっくりくる。白銀のツインテールに、赤を基調としたロングドレス、トロンとした半開きの銀瞳を浮かべた幼女が、そこにいた。今にも抱きしめたくなるような殺人的ベビーフェイスを俺へと向けて。

 もう一度再確認しよう。

「お前、天使か?」

「???」

 うん、違うようだ。

「天使、じゃない。ウチは、ここの主やよ。名は、ビルマ=マルクレイド」

 ということらしい。

「そうかそうか、ビルマね。俺は冒険者のバンキス、よろしくな」

「…よろしく」

「よし、じゃあ軽く自己紹介も済んだところだし、改めて聞いていいか?」

「どうぞ」

「ここ、どこ?」

 俺は辺りを見回して幼女にそう尋ねた。暗闇に目が慣れてきたせいか、今ではほんのりとこの場所がただの闇空間でない事を悟っている。地面はあるし、また壁らしきものも見える。が、天井は見えない。かなり暗いが全く何も見えないわけじゃないから、光源と呼べるものががどっかからか漏れてきてはいるのだろうが、見た限りじゃそんなものは
どこにもなかった。

 総じて、謎の場所である。

「確かカナリヤ大墳墓に入って、魔物に襲われて、それで…」

「そう、ここは大墳墓。詳しくは大墳墓の遥か地下深くにはある場所。ウチの住処やね」

 と、ビルマは低い声色では言った。どうやらカナリヤ大墳墓であることはあるらしい。ただ言って、

「遥か地下とはどういうことだ?」

「地上にある大墳墓は仮の形。フェイク。その本質はこの地下でしかない。つまり、この地下空間こそが大墳墓の真実と言える。かつて人間達がウチを封印するに施した。魔術式異空間」

 つまり、とはビルマは続けて、

「ウチのお墓、ということなんよ」

 どこまでも冷たい口調で、そう言った。俺は耳を疑った。

「待て待て、意味が分からない!じゃあ何か?この大墳墓は…お前の為に作られた場所で、その場所にはお前がいて、つまり…どういうこと?」

「バンキスが今言った事に解は導き出されている。ここはウチを封印する為に作られたお墓という魔術式異空間。その場所にウチは縛られていて、バンキスがやってきた。ただそれだけの事。とりあえず、ようこそバンキス。貴方が死ぬまで、よろしくお願いします」

 ビルマはペコリと頭を下げた。俺もまた「ああ、ご丁寧にどうも」とは頭を下げて、

「いや違う違う違うおかしい!なに納得してんだ俺!?」

「理解できない?馬鹿、なの?」

「ああそうだよ馬鹿だ大馬鹿野郎だ。別にそれで構わないからもう一度詳しく状況説明よろしく?」

「…馬鹿に説明しても、意味ないんね?」

「それでも!」





 その後、ビルマから色々と情報を聞き出す俺はバンキス=トールだ。冒険者である俺はとある諸事情によりこのカナリヤ大墳墓にやってきた。そして古種の魔物という得体の知れない化け物に襲われて、何でもそいつは今まさに俺の目の前にいるビルマの生み出した限りなく生物に近く生物じゃない存在で、要約すれば、この大墳墓地下から漏れ出したビルマの強大な力が形を帯びてしまった姿、なのだと言う。

 故に実態はなく、俺のグングニルが通用しなかったのも、また襲われてしまった際に魔力源であるビルマのいるこの魔術式異空間へと引き寄せられてしまったのも、その為であると、

「そういうことなんですねビルマちゃん?」

「そう、理解してくれて嬉しい」

 と、ビルマは和かな幼女スマイルを全面の俺の手を握った。くそ可愛い。目覚めてはならない性癖が次の瞬間にも開花してしまいそうだぜ。

 それはさておき、

「ビルマは…そうだな…どうして封印されているんだ?」

 核心に触れてみる事にした。何でもこの大墳墓はビルマを封印する為に作られたようだし、では何故こんな可愛い可愛い目に入れても多分痛くないような幼女ビルマ=マルクレイドが封印されているのかと、そう尋ねて、

「ウチが、危険な存在だったからやね」

 なのだと、語り出した。

「今より数百年前の話、ウチは地上により生を受けた人間だったんよ。でも、普通の人間にはない、ある特殊な力を持ってしまった、スペシャルな女の子だった…」

 ス、スペシャルな女の子!?

「ど、どういった感じにスペシャルだったのか聞いても?」

「うん…ウチは生まれつき、[色香の魔力]という、それはそれは珍しい魔力を持っていたんよ。[色香の魔力]は数千年に一度現れるか現れないかという、とにかくヤバイ魔力で、みんなめっちゃビビってた」

「そ、そっか…」

 喋り方のせいか、てんで凄みにかける件について、

「で、具体的にどうヤバイと?」

「色々ある。代表的なものとして、人間でありながら魔物を惹き寄せ、服従させるというものがある」

 そりゃあ凄い。

「その能力が皆を怖がらせてしまった。ウチは酷く反省した。マミーとパピーに『ごめんなさい』って何回も謝った。でも許してくれないから、いっそ世界征服しようって、そう開き直ったん。けど、ダメだった」

 ビルマは、ふぅ、と一息ついて、そして、

「だから、仕方なく、魔王になったんよ」

 誇らしげには、胸を張る。

 ん?

「すまん、何かいきなり話が飛躍したような気がするが、」

「どこらへん?」

「いや、世界征服しようって辺りから…」

「何かおかしい?誰にも理解されないから、なら世界征服するべく魔王軍に入って、魔王になっただけ、ただそれだけやんね」

「その奇抜な発想がそもそも間違っていると、そう言いたい」

「ウチ、天才?」

「ああ、間違った方向にな」

「…間違ってない。ウチはこのカナリヤ大墳墓に封じられた180年前からずっと、自身の行いについてを考えていた。その結果、ウチは正しいと、そんな見解に至る。何故なら天才のウチを恐れた人間達とは…卑怯にもウチの大好物であるマシュマロを餌にこの大墳墓へと誘い込み、そのままウチを封印した」

「マ、マシュマロで封印される魔王とは一体…って、180年前だと!?お前そんな前からこんな場所にいんのか!?そんな幼女なのに!?」

「ここは地上より時間の進みが遅いんよ。地上で180年といっても、ここの時間留意に換算すれば、実に1ヶ月かそこら。それに、ウチは幼女ではない。今年で27になる、立派なお姉さんやよ?訂正するか死ぬかして下さい」

「!?」

 もう驚くのも嫌になるぐらいには驚いたね。一生分は驚いたと思う。

 話をまとめよう、このカナリヤ大墳墓とは今まさに俺の目の前で、無垢なる幼子的な瞳を見せるビルマ=マルクレイドを封印する為に作られたもので、幼女のよう見た目をしているが、その実態とは今年27になるという。では何故27にして幼女体型をしているかについてだが、それは例の色香の魔力による影響が大きい、ということらしい。

「ウチは色香の魔力に目覚めた瞬間にも成長が止まってしまったんよ。だから幼女とは呼ばないで、お姉さんと呼んで」

「無理」

「どうして?」

「どうしてでも!」

 ビルマの不貞腐れた顔を見た。うん、やはりこいつは幼女のそれだ。口が裂けてもお姉さんなんて呼べない俺が間違っているか、その事を確かめあいたいね、誰かと。

 誰かとだ。

 なら話は早い。さて、これからどうしようか、問題解決へ勤しもうじゃないか?

 
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