能ある冒険者は、その内に秘めたる魔槍”グングニル”を隠す -北欧神話伝来の魔槍グングニルを与えられた俺という最強の存在の苦難の旅路-

泥水すする

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第4章

第10話 それぞれの選択… side ガイル

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 『アイドルはいつ何時であっても、笑顔を忘れてはならない』

 それは私の信条にして、揺るぎない鋼のアイドル精神だ。アイドルになってからというもの、そこだけは忘れたことはなかった。

 いつもの明るく元気な笑顔と歌声を皆んなに届けるーーーそうして会場は一つになり、会場のヴォルテージは最高潮に高まる。

 例えこの街に魔物が責めてきていたとしてもだ、ファンの皆んなが一人でもいるのであればだ、私は私のアイドル道を貫き通す。

 どうしてそこまでするかって?

 決まっている。何故なら私はーーー

 アイドルだから。

「みんなぁ~ぞいぞいしてるぅ~?」

「「「「ぞーい!!!」」」」

 お陰様で今日もライブ会場は満員。数にして100人規模は収容できるライブ会場は異常な程の熱気に包まれていた。ファンの皆んなも親衛隊の皆んなも、いつも以上の熱狂振りで私を支えてくれている。

 ほんと、皆んな馬鹿なんだから…

 魔物がこの街に侵攻してくるというのにも関わらず、アイドルとしてあり続ける私の気持ちに応える為に残ってくれた皆んなは馬鹿だ。

 これが私がこの街で行える最後のライブであるかもしれないことを心配して、わざわざ駆けつけてくれた皆んなは馬鹿だ。

 ほんと、どうしてこうも皆んな馬鹿なんだろう?

 それもこれも私が可愛い過ぎるのがいけないんだろうけど、それにしたって死ぬかもしれないこの状況下に於いて普通集まったりする?

 馬鹿だよ、みんなほんと馬鹿だよ…馬鹿馬鹿馬鹿…ほんと死んだほうがいいよ…一回死んで転生した方がいいよ…

 でもね?私、そんなキモい皆んなの事…

 嫌いじゃないよ?

「皆んな!!今日は来てくれて本当にありがとう!!ファイナルライブになるかも知れないけど…皆んなのこと、忘れない!愛してる、ぞい☆」

「「「「うぉおおおおお!!!」」」」

 様々な思いやりの元、今日のライブは成り得ている。だったら私のやるべき事とは、最後の最後まで皆んなに元気を配り続けること。ただそれだけ…

 私のライブは、永遠に終わらない!!!





 と、思っていた、その時だった。

「お、おい!?お前ら正気かぁ!?こんな時まで何やってんだぁあああ!?」

 ライブ会場にマネジャーさんの声が響き渡った。物凄い表情してる…ちょっぴり、怖い。

「コラぁああああ!!てめぇガイルちゃんのライブに何水差すような真似してんだぁああああ!?」

 それは親衛隊さんの声。凄く怒ってる。駄目、私の為に争っちゃ駄目、ぞい!

「そうだそうだ!ガイルちゃんを困らせるなぁ!」
「ガイルちゃんは永遠だ!」
「俺たちのゾイゾイフェスティバルの邪魔をするなぁあああ!!」

 鳴り止まないブーイングの嵐。今この瞬間、会場の皆んなが私の為にマネジャーさんと戦ってくれている。

 でも、違うよ?マネジャーさんだって、私たちの為に言ってくれていることだし、マネジャーさんを悪く言っちゃ駄目だよ!

「皆んなやめて!!マネジャーさんは悪くないの!悪いのは…アイドルとして可愛すぎるガイルがいけないの!!皆んなの心をハートキャッチしちゃった…ガイルがいけないんだもん…うぇえええん!!!」

「「「「ガ、ガイルちゃん!!??」」」」

 駄目、何泣いてるの私!!

 鋼のアイドル精神はどこにいってしまったの!?笑わなきゃ…皆んなが心配しちゃう…でも、何で涙止まらないんだろう?

「うぇえええん…皆んなぁああ…私の為に争わないでぇえ…私…私…皆んなの怖い顔…見たくないよぉおおお…うぇえええん…」

「「「「ガ、ガイルちゃああああん!!」」」」

 ああ、皆んなが私の事を心配してくれている…

「ガイルちゃぁああん!ごめんよぉおお!?」
「謝るから!ごめんね!?この通り!!だから泣かないでぇ!!」
「ガイルちゃんマジ天使…俺らの為に涙を流すなんて…うっうう…」

 暖かい…皆んなの気持ちがあっかいよぉお…

 私、今…すっごい幸せな気分…

 ねぇ、お空の上から見てくれている?バンキス殿?

 私、元気でやってるよ?バンキス殿にも私の歌声が届くように必死に歌ってるよ?だから…最後まで見ててねバンキス殿?

 私、アイドルとして…頑張るから!!

「よぉおし皆んなぁ!最後までガイルに付いてきてくれるかな~?」

「「「「ぞーい!!!」」」」

 様々な思いやりの元、今日のライブは成り得ている。だったら私のやるべき事とは、最後の最後まで皆んなに元気を配り続けること。ただそれだけ…

 私のライブは、永遠に終わらない!!!





 と、思っていた、その時だった。

「だからぁああああ!?やめろって言ってんだろうがぁああ糞共ぉおお!!」

 ライブ会場に再び、マネジャーさんの声が響き渡る。先ほどとはまるで違う、今度はガチトーンだった。

 これには流石の皆んなも冷静になる。

 静まり返るライブ会場、皆んなの熱気はとっくに失せ帰っていた。

 そんな皆んなに追い打ちをかけるように、マネジャーさんが怒鳴り散らした。

「馬ッ鹿じゃねぇのお前ら!?死ぬよ、マジで死ぬよ?いや別にワシはいいんだよ?てめぇら養分如きが死んだところで別にどうだっていい!知るか馬鹿野郎!ただな?ワシの責任問題になったらどうしてくれんだ!?ウチのアイドルが勝手にやりましたぁーって、そう言って誰が信じるんだ糞共ぉ!?いいから早く出てけ!そして一生帰ってくんな!!いいな!?」

「「「「あ、はい」」」」

 皆んなは意外にも素直にマネジャーさんの言葉を聞き入れ、大人しくは帰っていった。

 こうして、私の伝説のライブは、本当の本当に伝説となってしまったのだった。

 そして、

「ガイル?お前もいつまで馬鹿やってんだ?確かにワシはアイドルになる様お前に言ったが、こんな時にまでやれだなんて一言も言ってないよなぁ!?」

 私はマネジャーさんに怒られていた。

「あ、はい。すいません。マジすいません」

「お前仮にも元冒険者だったんだろ?なのに何なの?こんな時までライブって?非常識にも程があるだろ?」

「はい、はい」

「もういいからさっさと逃げろ。それと、金輪際限りでアイドルは終わり。クビだよクビ」

「はい、ほんとお世話になりました。ほんとマジすいやせんっした」

「はぁ、全く…これだから最近の若いやつは…」

 と、ライブ会場を去りゆくマネジャーの背を眺め…

 私のアイドル生活は、幕を下ろした。

 おわり。




「な、ななななな…なんじゃあああこりゃあああああああ!?ぞーーいッ!!!!」

 終われなかった。

「あの馬鹿アニキィイイッ!!!よくも私のアイドル道を邪魔してくれたなぁあああああああああああ!!ぞいぞいぞいぞいぞいぞい…」

 怒りボルテージMAX、私は憎き兄貴を討ち亡ぼす事を、ここに誓った。

 バンキス殿…なんかマジすいやせんっした。

 
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