能ある冒険者は、その内に秘めたる魔槍”グングニル”を隠す -北欧神話伝来の魔槍グングニルを与えられた俺という最強の存在の苦難の旅路-

泥水すする

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第4章

第9話 それぞれの選択… side ルクス

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 魔物の軍勢がこのカルママルク街に侵攻してきている、そんな話で街中が大パニックになる頃、私はやはり占い師だった。

「貴方も死にます!それから貴方も!!貴方も貴方も!?皆んな死にますぅうううう!?」

 客はいなかった。いないが、占い師としての使命が働いて、私は街から逃げていく人々に死の宣告を言いまくっていた。そして、

「そこの貴方!?このパワーストーンを持っていれば大丈夫です!死にません!今なら特別価格にてお譲り致しますから、」

 と、一人の街行く人の手を掴んだ。次の瞬間、

「るせぇええこの詐欺師!!!そんな石コロに縋るぐらいなら死んだ方がマシだぁ!?」
 
 衝撃の罵倒を浴びせわれていた。

「えっ!?詐欺師!?違う、私はぁあ!?」

 私は、

「私はぁッ!?」

 私は、

「私は…」

 私は…

「……」

 何だ?





 すっかり人のいなくなった街中で一人、店構えする私は占い師だ。詐欺師じゃない、占い師だ。

「どうしてこうなってしまうでしょうか…」

 私はただ死にたくなかっただけだった。ただ背筋を伸ばして、ちゃんて生きたいだけだった。それなのに何故か、私はポツンと一人街に取り残されていた。魔物に殺されてしまうかもしれないというのにも関わらず、私は占い師を続ける。

 何故?

『ルクスよ…』

 声を聞いた。それは頭の中に直接響わってくる。つまりこれは大精霊の声、

 サンちゃんの声だった。

「何サンちゃん…サンちゃんまで私を詐欺師だと言うの…」

『そうは言っていない。ただ、このままだとお前は死んでしまう。だから逃げろと、それだけを告げる』

「死ぬ?私が?どうして?」

『だから魔物がだなぁ、』

「分かりませんよぉおサンちゃん!!一体全体、私は何でこんな事になってるんですかぁあああ!?」

『ル、ルクス…』

 私は何故か、泣いていた。

 ただただ、涙が溢れて止まらなかったのだ。

「こんな筈じゃなかったんだよ!?私、一端の冒険者として…これから頑張っていくつもりだったんだよぉお!?それなのに何ですか占い師って…石コロをパワーストーンとか言って売りつけて、死の宣告を繰り返して…私どこの死神!?いつから死神に転職したんですかぁあああああ!!言ってこんなの…ただの詐欺師ペテン師と何も変わらないじゃないですかあぁああ!!」

『い、いや…自覚があるのなら辞めておけばよかったものを…我からすればやっと気付いてくれたのかとホッとしている…』

「はぁ…結局ですよ、私はこうやって死ぬんです。誰に看取られる事なく、寂しくは1人死んでいくんです…」

『……』

「ふふ、サンちゃん?私、結局昔と何も変わりませんね?いつまでたっても、弱い弱い私のまま…」

 そう言った私の脳裏に、かつての悲惨な出来事が脳裏を駆け巡る。それは冒険者となる前、住んでいた村が魔物に荒らされていく忌まわしき光景。あの時の私は、ただ、泣いていた。

 身寄りのない私は、ただ1人、サンちゃんの誘導の元安全地帯へと避難しては1人、焼き落ちていく村を眺めていた。あの後、村の皆んながどうなったのか分からない。

 ただ言えたとして、私は村の皆んなを見捨てて、1人オメオメと生き残ってしまった。その紛れもない真実だけは確かだ。

「ここで1人死にゆく運命もまた、悪くないかもしれませんね。いや、もっと前にも私は死ぬ筈だったんです。なのに、私はこうして…」

『ルクス、それは違うぞ?』

「サンちゃん、もういいんですよ…私はここで死ぬ…死ぬんです…」

『お前は…あの時の、あいつの背を見てでも…そんなふざけた事を言えるのか?』

 そう言ったサンちゃんの声は、少しだけ怒っていた。初めての感覚、私は素直に驚いていた。

「サ、サンちゃん、それって…」

『ふん、我が言えた立場ではないが…あの男、バンキスは、命を賭してお前達を守った。死ぬかも分からない状況下に於いて、自身の命よりもお前達を…ルクス、お前の生きれる未来を選んだのだ』

「バ、バンキス様…」

『そんな奴の勇姿を見ておいて…何だお前は!?死にたいだと!?ふざけるな!?生きたいと願った奴が死んで、生を放棄した奴が死にたいとはほざきおって…そんな不条理を、お前を本当に望むのか!?ルクスよ!!』

「……」

 言葉が出なかった。なんて返したら言いか、分からなかった。

 何故ならサンちゃんの言っている事は、まるっと全て正しかったからだ。

 あの時のバンキス様の勇姿を忘れてはいない。ただどうしてか、私はあの勇姿に目を塞ぎ、見て見ないふりを繰り返していたのだった。

 だって、あの時のバンキス様を認めてしまえば、それこそ本当にバンキス様が死んだという事実を認めてしまうことになるじゃないか…もしかしたらその内ひょっこり現れるかもしれないバンキス様に申し訳ないじゃないか…

 総じて、私はまだバンキス様の死を受け入れきれなかったのだった。

 占い師は現実逃避、現実を素直に受け入れきれない私の至った逃げの境地。そこには何もなかった。ただ死の宣告を繰り返す死神顔負けの日々でしかなかったのだから…

「サンちゃん、私は…」

 私が今どうするべきか、バンキス様なら答えてくれるでしょうか?

「私は…私は…」

 いや、それじゃあダメなんだ。バンキス様いない!もう死んだ!だから、もうその事から目を背けちゃ駄目なんだ!それじゃあバンキス様に笑われてしまう…『ほんとルクスは俺のこと大好きなんだなぁ?こいつぅ~☆』って、本当はバンキス様の方が私のことを超超超超超大好きな癖に、そんな事を言われちゃう!そんなの…

 そんなの…絶対に嫌だ!

「サンちゃん…私決めたよ…」

『そ、そうか!?それは良かった!だったら早く逃げ、』

「サンちゃん!私、冒険者として魔物と真っ向から戦います!」

『……え、えぇ!?』

 そう、私は気付いたんだ。今私のやるべきことは、今ここで逃げることじゃない。冒険者は冒険者らしく、最後までバンキス様の勇姿を受け継ぐ事、ただそれだけなんだ!
 
 覚悟は固まった。最早迷いはない。

 あるのはただの…決意。

「私は冒険者ルクス=シャムニール…バンキス様の大好きだった…ルクス=シャムニールなんだぁあああああああ!!!」

『ちょ、待てルクス!?違うから、お前間違っておるから!?』

「サンちゃん!地獄の底まで付き合ってもらいますよぉおお!?」

『馬鹿者ぉおお!!!!』

 バンキス様、私ももうすぐ其方(あの世)へ行きます。

 その時はまた、一緒に、冒険の旅へと連れてってくれますか?

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