能ある冒険者は、その内に秘めたる魔槍”グングニル”を隠す -北欧神話伝来の魔槍グングニルを与えられた俺という最強の存在の苦難の旅路-

泥水すする

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第5章

第1話 神は存在するが今のところそれは俺だ

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「あ、あり得ない…」

 と、ビルマは驚いていた。うん、無理もないと、そう思う。

 がしかし、

「これが現実だビルマ…見ろ」

 俺は上空の青空の、燦然と輝く太陽を指差して言った。そして、流れる雲の群集と、高大には滑空する名も知れぬ鳥達を見た。次に大地へと視線を移すと、そこには見渡す限りの平原が広がっていた。

 来た時と何も変わっちゃいない。

 その後…とは俺が地下の魔術式異空間にて魔力放出を行なった後のことになるのだが、俺とビルマの二人はカナリヤ大墳墓を背に地上へと舞い降りていた。どうやら異空間からの脱出は上手くいったようである。

 そうして俺の眼前にはかつての見慣れた世界は広がると、つまりはそういう次第である。

 俺からすれば数時間前の光景に見えていても、実際には俺がこの場所に来て1カ月過ぎた後の光景であるらしい。

 全く実感はない。多分ビルマに言われなきゃ気づかなかっただろうとは思うーーーそんな世界だった、

 綺麗だった。

「ふぁああ…やっぱり外の空気はいいなぁ…」

 途端に睡魔がやってくる。俺は睡魔に負けそうになって、大きな欠伸で誤魔化した。

「どうだビルマ、久々の地上も悪くないだろ?」

「バンキス、ウチ、夢見てるんかな?」

「夢じゃないさ。俺たちはこの通り無事地上へと戻ってきては自由を手にした。これから何をしようが俺たちの勝手、何ならこのままマシュマロ漁りに街へ行ってもいいんだぜ?」

「いきなり過ぎて、よく分かんないよ」

「…だよな」

 何せビルマからすれば180年後の空ということになる。もうここまでくれば現実味が失せても仕方ないとは思うのだ。当然の反応ちゃ当然の反応と呼べる。

 だからか、ビルマは俺の袖を引っ張っては、ジットリとした瞳を浮かべ、

「どうやったか、聞いていい?」

「ん?それを今更聞くのか?お前が一番よく分かってるくせに?」

「そういうの、いいから」

 ビルマはグイグイと袖を引いた。

「あの異空間で魔力放出を行い、魔術式を解除したのは分かる。でも、その事実からして、そもそもがおかしい。だってあの異空間の魔術式を解除するには、かなりの魔力量が必要やよ?それこそ、魔術士が何百人と集まって創り出された魔術式やし、それをバンキスが打ち破るなんて、狂ってる」

「く、狂ってるって…お前なぁ、」

「ウチ、何も間違ったこと言ってない。でしょ?」

「……まぁな」

 いや確かにその通りだ。つまりビルマ、お前はこう言いたいんだろ?

「何故俺がそれ程の魔力を有しているか、だよな?」

 ビルマはフンフンと首を縦に振った。心底理解し難いとはその瞳が語る。

 正直、言いたくはなかった。だがそれではビルマが納得しないだろうから、仕方なくと言って俺は『例のアレ』を取り出し、見せた。

「こ、これは?」

「魔槍グングニル、俺に与えられた神の力にして、俺の正体だ」

「つまり?」

「つまりだなぁ…」

 と、言葉に詰まっていた、

 その時、

「お、丁度いいとこに、」

 遥か地平線の彼方に魔物が大群をなして進行してきていた。

 数にして数万の軍勢だろうか?如何様にしてあんな大群が進行してきているかは知らんが、俺の力と存在を証明するには良い的になるとは俺、

「おいビルマ、あそこ見えるか?」

「うん、めっちゃ魔物がいる」

「そう、魔物の大群だ。じゃあさ、もしもだよ?もしもあれ程の魔物の大群を一瞬で駆逐できる存在がいたと仮定する。ではその場合、その存在は普通か?」

「普通じゃない。異常」

「だな」

「そんなんウチだって無理。1分ぐらいないと無理やよ?」

 いやいやいや、1分であの大群をどうにか出来るお前も充分に異常だよ!?

 ま、俺はもっと異常だけどな?

「ビルマ、じゃあ今からそれをやるから、ちゃんと見とけよ?」

「…嘘、だよね?」

「いや、マジだ」

「嘘、嘘嘘嘘…そんなん無理やんね…だって、そんなん出来たら、もうそれ、神やん…」

「だからそう言ってるだろ?」

「へ?」

「いくぞ…」

 そうして俺は、天下無双の一撃を魔物に向け、投射した。

 一瞬だった。

 魔物の大群が一瞬の内には燃えカスとなり、この地上から消滅していく。また巨大な爆炎が発生し地形に甚大なダメージを齎していた。

 これでも大した力を込めたつもりはないが魔物の軍勢如きならそれぐらいで充分。いや、むしろやり過ぎたぐらいだとは反省している。反省したところでどうする事はできないがな?

「おおっ!」

 ビルマが感嘆そうには声を上げた。

 うん、素直に驚いてくれて有難う。正直お前の事だから「大した事ないやん」とか言い出すんじゃないかと内心ヒヤヒヤしていたよ。

「バンキス…やばい!」

「だろ!?俺すごくね!?やばいよな!?」

「やばい!めっちゃやばい!」

「そういうのもっと頂戴!」

「神!バンキス神やん!ウチ感動した!」

「もう一声!」

「バンキス、かっこいい!」

「だろぉおおお!?」

 褒められて悪い気はしないが、そこまで言われると照れるやん?

「ウチ、バンキスの事誤解してた!バンキス、凄い奴やったんやね!?バンキス、神やったんやね!?」

「ま、まぁそんな感じ?」

 まさかここまで感動してくれるとは予想だにしてなかった。でもこれでビルマもよく分かったことだろう。俺がどんな奴で、どうしてあの異空間を打ち破ることができたのかを。

 そうだよビルマ、俺は神なんだ。いや、厳密に言えば神の如き力を得た普通の人間で冒険者なんだが、この際どうだったいいと思うわけ。

「バンキス、やっばぁああああああい!」

 と、滅茶苦茶はしゃぎ回るビルマの笑顔が見れたのだからな?もうそれだけで俺が神だとかなんてどうでもいいって、そう思うわけですよ。

 何せこんなビルマの笑顔はあんな暗い地下空間じゃ絶対見れなかった筈だから。地上に戻りたくても戻れなくて、それが己が運命だと悟り切っていたビルマは一生をあの場所で過ごそうとしていたから。俺はそんなビルマが笑ってくれて本当に嬉しいんだ。

「ビルマ、楽しいか?」

「うん!」

 ああ悪くない。ただ世の中を掻き乱すだけだと思っていた俺の力が誰かの役に立つ日が来るなんてな…

『たまにはこういうのも悪くない』

 俺は未だ爆炎収まらない焦土を眺めながらには、そう思った。

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