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第三章 BL小説の存在、世に知られる
059-2
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子爵より一足先に学長室を退出した黒いドレスの女性――その名も「ヴァイオラ・ブラックウェル」は、元々学長の側近として働いているため、学内のどこへ行っても誰からも怪しまれることはない。
彼女はその足で、まず生徒会室を目指した。
「ヘザー・アシュビー嬢はいらっしゃいますか?」
「はい、おります」
ヘザーが顔を出すと、ヴァイオラは小さく手招きをする。
「一体、何事ですか?」
「学長に、例のブツの存在がバレました」
「げっ!」
学長が誰よりも信頼する側近のヴァイオラは、密かにBL小説に心酔し、BL本を与えてくれるヘザーに対して、今や学長以上に忠誠を誓っていた。
「コリーン・ハーバート子爵令嬢が、ブツを家に持ち帰ったところ、父親に見つかってしまったようです。彼女は父親に『友達から借りた』と証言したようです」
ヴァイオラは、学長に呼ばれる前から聞き耳を立てていたので、下された命令以上の情報を正確に掴んでいる。
「コリーンか……私と同じ二年生ね。寮で彼女と同室の学生と、普段一緒にいる仲のいい学生の名前はわかるかしら?」
「わかります。今夜中にリストをお届けします」
「ありがとう、お願いしますね」
ヴァイオラはヘザーに伝えるべきことを伝えると、直ぐにその場を去った。
ヘザーもまた生徒会室に戻ると、ミュリエル、エルシー、アデレイドに耳打ちをし「ちょっと急用が……」と一言残して、その日の活動を辞した。
理由として「授業の準備があって」と言っていたが、ほとんどの授業は同学年であるメリーローズも受講しているし、唯一メリーローズが受けていない授業と言えば「魔法学」があるが、そちらはシルヴィアが受けている。
そして「魔法学」をエルシーは受けていない。
「一体、何の授業のことなのやら?」
シルヴィアは首をひねった。
何かイヤな予感がする。
その日寮の部屋に戻ると、シルヴィアは白い紙とハサミを取り出した。
「何をしているの?」
メリーローズが様子を見ていると、人の形に何枚か切り出している。
「ああっ! それ知ってる! 依り代よね! 式神を作っているの?」
「よくご存じですね。その通りです」
シルヴィアは五枚依り代を作ると、それぞれに「ヘザー」「ミュリエル」「エルシー」「アデレイド」の名前を書く。
「もう一枚は、誰の名前を書くの?」
「今日、生徒会室に顔を出した方、学長のおつきの女性ですが、名前は何といったでしょうか?」
「えーっと、確か『ヴァイオラ・ブラックウェル』よ」
「助かりました」
残る一枚に「ヴァイオラ・ブラックウェル」の名を書き込み、五枚の依り代に何やらブツブツと呪文を唱える。
隣のメリーローズが顔を真っ赤にしてワクワクしていたが、シルヴィアは自分の術に集中した。
「私の目となり耳となり情報を集めよ。急急如律令!」
シルヴィアが呪文を唱え終わると、五枚の依り代がフワリフワリと宙に舞い上がり、窓から一枚ずつ夜空に消えていった。
「…………す、すごい! すごいわ、シルヴィア! 本当に陰陽師みたい!」
「お嬢様、お褒めに預かりお礼を申し上げますが、もしかしたら何かよくないことが起きているかも知れません」
「よくないことって……?」
「わかりません。それを調べるところです」
彼女はその足で、まず生徒会室を目指した。
「ヘザー・アシュビー嬢はいらっしゃいますか?」
「はい、おります」
ヘザーが顔を出すと、ヴァイオラは小さく手招きをする。
「一体、何事ですか?」
「学長に、例のブツの存在がバレました」
「げっ!」
学長が誰よりも信頼する側近のヴァイオラは、密かにBL小説に心酔し、BL本を与えてくれるヘザーに対して、今や学長以上に忠誠を誓っていた。
「コリーン・ハーバート子爵令嬢が、ブツを家に持ち帰ったところ、父親に見つかってしまったようです。彼女は父親に『友達から借りた』と証言したようです」
ヴァイオラは、学長に呼ばれる前から聞き耳を立てていたので、下された命令以上の情報を正確に掴んでいる。
「コリーンか……私と同じ二年生ね。寮で彼女と同室の学生と、普段一緒にいる仲のいい学生の名前はわかるかしら?」
「わかります。今夜中にリストをお届けします」
「ありがとう、お願いしますね」
ヴァイオラはヘザーに伝えるべきことを伝えると、直ぐにその場を去った。
ヘザーもまた生徒会室に戻ると、ミュリエル、エルシー、アデレイドに耳打ちをし「ちょっと急用が……」と一言残して、その日の活動を辞した。
理由として「授業の準備があって」と言っていたが、ほとんどの授業は同学年であるメリーローズも受講しているし、唯一メリーローズが受けていない授業と言えば「魔法学」があるが、そちらはシルヴィアが受けている。
そして「魔法学」をエルシーは受けていない。
「一体、何の授業のことなのやら?」
シルヴィアは首をひねった。
何かイヤな予感がする。
その日寮の部屋に戻ると、シルヴィアは白い紙とハサミを取り出した。
「何をしているの?」
メリーローズが様子を見ていると、人の形に何枚か切り出している。
「ああっ! それ知ってる! 依り代よね! 式神を作っているの?」
「よくご存じですね。その通りです」
シルヴィアは五枚依り代を作ると、それぞれに「ヘザー」「ミュリエル」「エルシー」「アデレイド」の名前を書く。
「もう一枚は、誰の名前を書くの?」
「今日、生徒会室に顔を出した方、学長のおつきの女性ですが、名前は何といったでしょうか?」
「えーっと、確か『ヴァイオラ・ブラックウェル』よ」
「助かりました」
残る一枚に「ヴァイオラ・ブラックウェル」の名を書き込み、五枚の依り代に何やらブツブツと呪文を唱える。
隣のメリーローズが顔を真っ赤にしてワクワクしていたが、シルヴィアは自分の術に集中した。
「私の目となり耳となり情報を集めよ。急急如律令!」
シルヴィアが呪文を唱え終わると、五枚の依り代がフワリフワリと宙に舞い上がり、窓から一枚ずつ夜空に消えていった。
「…………す、すごい! すごいわ、シルヴィア! 本当に陰陽師みたい!」
「お嬢様、お褒めに預かりお礼を申し上げますが、もしかしたら何かよくないことが起きているかも知れません」
「よくないことって……?」
「わかりません。それを調べるところです」
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