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第三章 BL小説の存在、世に知られる
087 公爵令嬢と迫りくる筋肉
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「実は、休み明けすぐに学長先生から手紙をいただきまして……」
「何っ? ラブレターか?」
勉強に集中して、会議には気持ち半分でしか参加していなかったフィルバートが、突然叫ぶ。
一瞬面食らったらしいミュリエルだったが、冷静に返事をした。
「……ラブレターじゃありません」
「なんだ、やれやれだ」
ホーッと息をついて安堵の表情を見せるフィルバートに、(やれやれなのはこちらの方だ)と思いつつ、シルヴィアはミュリエルに話の続きを促す。
「手紙には、何と?」
「はい。近々、大聖堂の司教様方が、学院を視察にいらっしゃるとかで、そのとき私を紹介するので同席するように、と」
「え、それは重要な情報じゃないですか!」
一瞬でその場がざわついた。
「大聖堂の司教たちだって? 僕もその話は初耳だ」
「ミュリエルを聖女候補として話を進めている、ということか?」
アルフレッドとメルヴィンも、さきほどまでの暢気さが影を潜めている。
「聖女に、ということになれば、それはヴィンセント兄様の花嫁候補ということに繋がりますね」
フェリクスがそう言った瞬間、シルヴィアの背中にゾワリとした感覚が走った。
「皆さん、黙ってください。誰かがこの部屋に近付いています!」
見ればドアの隙間からシルヴィアが仕込んでおいた紙人形がヒラリと入ってくる。
それがいつかの夜、メリーローズが萌えちらかしたときのようにシルヴィアの耳元に何やら囁いて、今回も女子の皆さんに「可愛ーい!」と声をあげさせた。
「ふむ、なになに? 兵士のような男がこちらに向かってきている、と」
「あ、忘れてた」
そこまで聞いてフェリクスが立ち上がった。
「すみません、ランドルフ……いえ、ソーントン先生を呼んでいたんです」
「どうしてだ? 何か用事があったのか?」
フェリクスとランドルフの関係を知らないアーネストが尋ねた。
「いえ、シルヴィアさんの魔法の一件で、もしかしたらソーントン先生なら、知っていることがあるんじゃないかと思ったんです」
「ソーントン先生は確かに『魔法学』の先生ですけど、この件を教えてしまっても大丈夫なんですか?」
エルシーが不信を露にしたが、そこはアルフレッドが笑って諭した。
「大丈夫だと思うよ。ランドルフはフェリクスが小さい頃の剣の教師をしてくれていたんだ。僕もそれなりに彼の為人は知っているから、保証するよ」
「何っ? ラブレターか?」
勉強に集中して、会議には気持ち半分でしか参加していなかったフィルバートが、突然叫ぶ。
一瞬面食らったらしいミュリエルだったが、冷静に返事をした。
「……ラブレターじゃありません」
「なんだ、やれやれだ」
ホーッと息をついて安堵の表情を見せるフィルバートに、(やれやれなのはこちらの方だ)と思いつつ、シルヴィアはミュリエルに話の続きを促す。
「手紙には、何と?」
「はい。近々、大聖堂の司教様方が、学院を視察にいらっしゃるとかで、そのとき私を紹介するので同席するように、と」
「え、それは重要な情報じゃないですか!」
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「大聖堂の司教たちだって? 僕もその話は初耳だ」
「ミュリエルを聖女候補として話を進めている、ということか?」
アルフレッドとメルヴィンも、さきほどまでの暢気さが影を潜めている。
「聖女に、ということになれば、それはヴィンセント兄様の花嫁候補ということに繋がりますね」
フェリクスがそう言った瞬間、シルヴィアの背中にゾワリとした感覚が走った。
「皆さん、黙ってください。誰かがこの部屋に近付いています!」
見ればドアの隙間からシルヴィアが仕込んでおいた紙人形がヒラリと入ってくる。
それがいつかの夜、メリーローズが萌えちらかしたときのようにシルヴィアの耳元に何やら囁いて、今回も女子の皆さんに「可愛ーい!」と声をあげさせた。
「ふむ、なになに? 兵士のような男がこちらに向かってきている、と」
「あ、忘れてた」
そこまで聞いてフェリクスが立ち上がった。
「すみません、ランドルフ……いえ、ソーントン先生を呼んでいたんです」
「どうしてだ? 何か用事があったのか?」
フェリクスとランドルフの関係を知らないアーネストが尋ねた。
「いえ、シルヴィアさんの魔法の一件で、もしかしたらソーントン先生なら、知っていることがあるんじゃないかと思ったんです」
「ソーントン先生は確かに『魔法学』の先生ですけど、この件を教えてしまっても大丈夫なんですか?」
エルシーが不信を露にしたが、そこはアルフレッドが笑って諭した。
「大丈夫だと思うよ。ランドルフはフェリクスが小さい頃の剣の教師をしてくれていたんだ。僕もそれなりに彼の為人は知っているから、保証するよ」
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