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第三章 BL小説の存在、世に知られる
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メリーローズは切っていた紙を置いて、出来上がった枚数を数える。
「やっぱりまだ二十五枚、まだまだね」
「出来上がったものをくださいますか。先に術をかけておきます。土曜日にいっぺんに五百枚分も術をかけるのは大変なので」
「わかったわ」
メリーローズが紙人形を渡すと、シルヴィアは自分が作った分と合わせ、一枚一枚に呪文を書き込んだ。
それを更に十枚ごとに分けて、術をかけていく。
「どうして全部まとめて術をかけないの?」
メリーローズの疑問に、キリがいいところで手を止めて答える。
「わたくしの能力では、充分な力を込める為には一度に十枚が限度なのです。それ以上多くかけると、精度が落ちてしまうので」
「そっかあ。色々あるのね。……じゃあ、シルヴィアは式神作りは一旦置いておいて、術かけに集中した方がいいんじゃない? 式神は私たちでも作れるけど、術はシルヴィアしか掛けられないんだし」
「はい。そうさせていただきます。ただし、お嬢様の本日の作業はここまでです。もうお休みの時間ですので」
「ええーっ? もうちょっと出来るわよう」
「いけません。明日も授業がございますから」
シルヴィアの言うことを聞いて睡眠をとる準備をしながらも、メリーローズは小声で「ちぇー」と文句を言っていた。
「イベント前みたいで、楽しかったのになー」
「……『イベント』って何ですか?」
「えーっと、前世で自分たちが作ったBL本を売るお祭りみたいなもの」
「ナツミ様は前世ではお祭り会場でBL本を売っていたのですか?」
「あはは、そうそう。そんな感じ。印刷屋に出す分の原稿は終わってるけど、直前までコピー本の原稿をヨッちゃんと徹夜で書いたりしてねー。会場に行く前にコンビニ寄って、おにぎりとお茶買ってコピー取って。……半年に一度のお祭り」
(また知らない単語が出てきた)
「コピー本」、「コンビニ」、「おにぎり」……
前世の日本のごく当たり前のモノが、この世界では謎に満ちた存在になる。
(『コピーをトル』とは、どういう行為なのだろう?)
シルヴィアにとって、メリーローズが以前生きていた世界は、想像がつかない。
そんな世界から転生してきたのだ。メリーローズの中のナツミが、どれほどの孤独を感じているだろう、と改めてシルヴィアは思う。
かつて怪しく見えたミュリエルやヘザー、危害を加えてくるかも知れないと構えていたフェリクスとも仲良くなれた。
そんな風に、どこかに紛れている『同じ世界からの転生者』とも、わかりあえる日がくるといいと、そっと思った。
「やっぱりまだ二十五枚、まだまだね」
「出来上がったものをくださいますか。先に術をかけておきます。土曜日にいっぺんに五百枚分も術をかけるのは大変なので」
「わかったわ」
メリーローズが紙人形を渡すと、シルヴィアは自分が作った分と合わせ、一枚一枚に呪文を書き込んだ。
それを更に十枚ごとに分けて、術をかけていく。
「どうして全部まとめて術をかけないの?」
メリーローズの疑問に、キリがいいところで手を止めて答える。
「わたくしの能力では、充分な力を込める為には一度に十枚が限度なのです。それ以上多くかけると、精度が落ちてしまうので」
「そっかあ。色々あるのね。……じゃあ、シルヴィアは式神作りは一旦置いておいて、術かけに集中した方がいいんじゃない? 式神は私たちでも作れるけど、術はシルヴィアしか掛けられないんだし」
「はい。そうさせていただきます。ただし、お嬢様の本日の作業はここまでです。もうお休みの時間ですので」
「ええーっ? もうちょっと出来るわよう」
「いけません。明日も授業がございますから」
シルヴィアの言うことを聞いて睡眠をとる準備をしながらも、メリーローズは小声で「ちぇー」と文句を言っていた。
「イベント前みたいで、楽しかったのになー」
「……『イベント』って何ですか?」
「えーっと、前世で自分たちが作ったBL本を売るお祭りみたいなもの」
「ナツミ様は前世ではお祭り会場でBL本を売っていたのですか?」
「あはは、そうそう。そんな感じ。印刷屋に出す分の原稿は終わってるけど、直前までコピー本の原稿をヨッちゃんと徹夜で書いたりしてねー。会場に行く前にコンビニ寄って、おにぎりとお茶買ってコピー取って。……半年に一度のお祭り」
(また知らない単語が出てきた)
「コピー本」、「コンビニ」、「おにぎり」……
前世の日本のごく当たり前のモノが、この世界では謎に満ちた存在になる。
(『コピーをトル』とは、どういう行為なのだろう?)
シルヴィアにとって、メリーローズが以前生きていた世界は、想像がつかない。
そんな世界から転生してきたのだ。メリーローズの中のナツミが、どれほどの孤独を感じているだろう、と改めてシルヴィアは思う。
かつて怪しく見えたミュリエルやヘザー、危害を加えてくるかも知れないと構えていたフェリクスとも仲良くなれた。
そんな風に、どこかに紛れている『同じ世界からの転生者』とも、わかりあえる日がくるといいと、そっと思った。
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