悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

すえつむ はな

文字の大きさ
185 / 404
第三章 BL小説の存在、世に知られる

091 公爵令嬢が語る「異世界の祭り」

しおりを挟む
「弟さん?」

「ええ。もしわたくしの魔術の本に手を出すとしたら、兄よりも弟の可能性が高いのでは、と思いました」

 例によって寮の部屋に戻ってからの会話である。
 このところ小説の執筆がなくなってからというもの、夜は入浴だの美容のメンテナンスくらいしかすることがなくなり、暇をもてあましていた二人だったが、今日は式神作りで『内職』をしているところだった。

「お兄様ではない、という根拠は?」
 チョキチョキ

「兄は黙っていても領地と爵位が転がり込んできます。下手に両親を怒らせて、それらをフイにする危険は冒さないでしょう」
 チョキチョキ

「なるほど、なるほど」
 チョキチョキ

「それに、弟の方がプライドが高く、内心兄より自分の方が優れている、と思っている節がありました。それなのに生まれた順番で爵位を継げないのは、理不尽だと考えていることでしょう」
 チョキチョキ

「あり得ない話じゃないわね」
 チョキチョキ

「ま、わたくしに言わせればどっちもどっちというか、どんぐりの背比べというか」
 チョキチョキ

「あ、こっちでも『どんぐりの背比べ』って言うのね。しかし、頭脳はシルヴィアが兄弟の分も全部吸い取っちゃったみたいね」
 チョキチョキ

「おかげでよくいじめられました。……そうだ、わたくしをいじめるときだけは、兄弟仲がよかったですよ」
 チョキチョキ

 おもむろにハサミをテーブルに置くと、シルヴィアは伸びをした。

「とりあえず、百枚出来ました」

「さすが、早いわね」

 メリーローズの方はまだやっと二十枚ほどである。
 ただの紙の人型とはいえ、慣れていないとなかなか上手く出来ない。
 シルヴィアからコツを教わりながら生徒会室で作っていたときも、皆結構てこずっていた。

「半分に折って、人の形に切っていくだけなんですけどね」

「簡単に言うけど、それが難しいのよう」

 紙を十センチ四方にカットし、それを半分に折って、頭、腕、胴、足の形にカットし、広げると人の形になるようにするだけなのだが、最初のうちはシルヴィアの見本とはほど遠いものばかりが出来上がる。

 見本に比べて太っている、とか細すぎる、などは序の口で、頭がハート形になったり雫型になったりして、不格好なものが出来上がるたびに生徒会室が笑いに包まれた。

 土曜までに五百枚を間に合わせる為に、部屋や家に帰ってからも、各自で進めることにしている。

 きっと今頃、自分たちと同じように、ミュリエルやヘザー、もしかしたら隣室からエルシーも来て一緒に紙人形を切っているだろうし、アルフレッドとフェリクスもこんな風にたわいない話をしながら紙を切っているかも知れない。

「司教様たちは、どんな仕掛けをしてくるかしらね」

「そうですね。わたくしは今までほとんど聖堂に行ったことがないので、その方面はさっぱりです」

「前に、『大精霊教』のトップの大司教様も、大して力は持ってないって言ってたじゃない?」

「持っていないかどうかは、会ってみないとわかりません。ただ、持っていなくても大司教にはなれると思います。魔力の有無より政治力で出世するようなので」

 メリーローズは「ははは……」と乾いた笑いをあげた。

「辛辣ねえ、シルヴィア」

「彼らにとって『魔法』は身分の低い者に発現するものという認識ですので、その考え方なら、むしろ大司教になるような方は魔力を持っていないのではないかと思いす」

「それもそっか」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

処理中です...