魔道士師団長は弟子を拾う

ててて

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「んー、転移で帰るか。初めてだろうし酔うかなぁ…ほらこっちを向いて、ここをギュッと掴んで、そう。」

無理やり服を握ませ、強く抱く。
転移を発動させて、目を開ければ私の屋敷に着いた。

「最近帰ってきてなかったからなぁ、汚いかも…」

手に抱いた子は転移をしたというのにケロッとしている。やっぱり所持魔力が高いみたいだ。弱い子と転移をすると、魔力に当てられて酔ったり体調を崩すしたりするらしい。

パチン、と指を慣らして屋敷に浄化魔法をかけた。

「さて、まず君はお風呂に入ろうね。」

私の屋敷には使用人は居ない。国王に屋敷は受け取るけど使用人は要らないとよく言ったからだ。魔法でほとんどのことは出来てしまうので、必要性を感じなかった。

浴槽にお湯を張る。脱衣所で服を脱がせて、ポーンとお風呂に入れた。
体と頭を念入りに洗ってやる。

「あれ、君、男なのか。」

てっきり髪が長いから女かと思っていた。

そう言うと男の子は不安そうな顔でこちらを見てくる。

「いや、別に君が男でも問題は無いんだけどね。ただ驚いただけだよ。髪の毛長い方が好きなのか?」

「……好きじゃない」

「そうか、もし良ければ後で切ってあげるよ」

私も自分の髪と体を洗えば、2人で湯船につかった。私は初めてこの時、風呂が広くてよかったと思った。

膝に乗せた軽い体重の頭を見ながら、少し名前を考える。

(名前…名前かぁ、どうしたもんか。というか、名前をつけてどうするんだ?飼うのか?いやこの子にも家族が…でも名前が"忌み子"だしなぁ)

膨大な魔力を持つというのは、確かに偉大なことではあるがその反面孤独である。
強力すぎる魔力に親は、動物の本能として恐れをなす。
私だって産まれてから化け物呼ばわりをされ孤児だった。まぁ、前世の記憶のおかげで助かりはしたが。

ただ、この目の前の少年はどうだろうか。親に"忌み子"呼ばれ、なんの知識もなく1人であるというのは。

あぁ、寂しいものだよな
わかるよ、痛いほど

頭を撫でてやれば少年はこちらを向いてくる。最初よりは警戒を解いた目。
でも、どうすればいいのか分からないという表情。

そう言えばと彼の頭に手を乗せて、魔力を探る。この子はずっと魔力と姿を偽る魔法を使ってるみたいだけど、魔力の褐色は……

(余裕かよ…)

褐色なんて知りませんという程に次々と魔力が湧き出ている。これは、私よりも魔力値高そうだ。

「…ねぇ、これから私が魔力を流すから同じ力の配分で似たように流してみなさい。」

手を握って少しずつ魔力を流してやれば、少年は戸惑いながらも真似をしていく。

(器用だな…)

しばらくすれば、彼が張っていた魔力被感知結界も、薄いのを何重ではなく、分厚い結界一枚で偽ることが出来るようにした。

こうすれば、体の疲れはもっと感じなくなるし慣れれば意識しなくても保つようになる。


「…上手だね。そろそろ上がるよ」


風呂から出て、体を風魔法で乾かす。
服はないので私のシャツを着せた。

「お腹は空いてる?」

と、聞けば悩みながらも小さく頷いた。

「わかった、ちょっと待っててね」

消化にいいものを作ろうとキッチンに向かえば、後ろからちょこちょこと着いてくる。

「ん?待ってていいんだよ?疲れたでしょう?あそこのソファに座っていて」

彼に合わせてしゃがんで言うと彼はソファと私を見比べてから私の服の裾を少し掴んだ。

置いていかれるのに不安があるとか?
一人になりたくないとか、かな。

まぁ、いいか

結局私はキッチンに彼を連れていった。
彼は私の腰のあたりにずっと抱きついていて、離れようとしない。でも、自分自身に軽量化の魔法をかけているのか全く重たくなかった。

そのまま調理し、机に運ぶ。
出来たのは野菜スープと昨日街で買ったパン。

椅子に座らせ、食べようと言っても彼はスプーンすら手に取らない。

食べ方がわからないのか、食べていいのか分からないのか。

埒が明かないので、彼を自分の膝に乗せてやる。少し覚ましたスープを口に運んだ。

「ほら、あーん」

戸惑いを見せたが、口を小さく開けて食べる。みるみるうちに頬が赤くなった。

「美味しい?」

「…おいしい」

「そう、それは良かった。ほら、もっと食べな。食べれる分だけでいいから、あーん」

そうして、彼はスープを平らげてしまった。お腹がいっぱいになって眠くなったのかウトウトし始める。

元の年齢がいくつか知らないが、この体を保っているせいで幼子に意識を引っ張られてるのかもしれないな、と思いながら彼を別室のベットに運んでやった。

そうして、残った食事を食べて片付ける。

今日あったことを報告書にまとめ始めた。男どもを見つけてからとった行動、男が話していた言動、 その後跡をつけたやつの動きを簡潔に書いていく。

書いたら、それの報告書に魔力を込めて鳩に化けさせリベルタの元へとばした。

しばらくしてリベルタから念話が来る。
これも魔力を持つものが使える魔法で、保持魔力数と距離が比例して使用でき、即ち魔力値が高ければ高いほど距離も遠くまでとばせられる。

リベルタも一応、魔道士団副師団長なわけだから魔力値は高い。

「ハンネ様、保護した被害者からの証言の照らし合わせが終了し、皆親元に返しました。捕まえた男2人は別々の牢屋に入れて、それぞれに尋問。また、関わった貴族や商家も明らかな証拠を抑えました。報告書にまとめておきます。」

「あぁ、ご苦労さま。流石リベルタ、頼りになるねぇ」

「え、そんなぁ~思ってないでしょ~」

嬉しそだな。

「そう言えばハンネ様、あの後残って何をされてたんですか?」

「ん、あぁ。もう一人の被害者が居てね。その子は孤児みたいだし、まだどんな風にあの男たちに囚われてたか聞いてないが、落ち着いたら聞くつもりだよ。」

「…へぇー、孤児ですか。それでその子は今どこに?」

「え、どこって私の屋敷だけど。」

「はぁ!?屋敷!?ハンネ様が、あのハンネ様が屋敷に子どもを…!?」

「…何をそんな驚くの」

「いや…だってハンネ様だし。生活力なさそうだし、子どもの面倒みれなさそうだし、なにより雑そう…」

「言ってくれるねぇ…」

コノヤロウ、明日覚えておけよ。

「え、で、子どもは?」

「もう寝たよ。疲れていたみたいだし…ん?」

ドアが小さく開く音がした。
振り向くと少年が立っていて、何やら涙を溜めている。

「あれ、起きたのか。…どうしたの」

そう聞けば、ドアから駆け寄って椅子に座る私の足元に抱きついてきた。

「……リベルタ、報告はまた明日ね。それじゃ、おやすみ」

「は?ちょっと…!」 

無理やり遮断して足元の彼に視線を戻す。

抱き上げて膝に乗せてやれば、泣きながら私の胸元に顔を沈めた。

「……怖い夢でも見たの?……よしよし」

嗚咽を漏らす背中を優しく撫でながら落ち着かせる。どれほどそうして居たのか、気づけば彼は泣き止んで私に抱きついたまま眠ってしまっていた。

ぎゅっと握る手がとてつもない強さで、手を取ることができないので諦めた。

そのまま抱き上げ、寝室に運ぶ。

ベットに寝かせ私も隣に寝そべった。
子どもは体温が高いというが本当に暖かい。
彼は無意識なのか私の体にしがみつくようにして寝る。

可愛いものだな、と思いながら頭を撫でる。さっきの風呂を思い出す、幸いにも体には大きな傷などは見当らなかったから少し安心した。

彼は、精神的に傷があるみたいだ。
治すのは薬品ではなく時間だな。


「おやすみ」

そうして、私も眠りに落ちた。


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