魔道士師団長は弟子を拾う

ててて

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街に移動した私は、どんなペットを買うか悩んでいた。

(猫…犬はちょっとな…狼は森まで行かないと、んークマはちょっと大きいしなぁ)

街は疎らに人が居て、人を避けながら歩く。不意に、路地裏の辺りへかけていく不審な男二人組が目に入った。

ごけ茶色に変色した、汚い外套にフードを深く被っている。

(見るからに不審者だな)

自分に不可視結界を張り、耳に魔力を集中させる。

「……今日は5人だ…」
「多いな…」
「…いい物ばかりが揃ったんだ。今日の夜に開く」
「了解した…呼び込みをしてくる」
「頼んだぞ、客はお前次第だからな」

そう話すと二人の男は二手にわかれた。
路地裏から足早にでてきた男はこれから客を呼び込むらしい。どんな客か興味が湧いたので、マークをつけとく。

もう一人の男は店を開くと言っていた。
こんだけ怪しさプンプンなのだからさぞかしいいモノを売るんだろう。
 
リベルタに今のことを簡潔にまとめた文を送っておく。そして、男の跡をつけた。


跡をつけると言っても、不可視の結界を張っているからバレないんだけどね。
だから今も堂々と彼の後ろを歩いて着いて行ってる。

しばらくして、街の裏側につくとボロボロの荷馬車に入っていった。

(中身は何かな~)

目に魔力を込めて、荷馬車の中身を見透かす。生命体は男を合わせて6体。
男以外は動こうとしない、否、動けないのか。大きさはバラバラだけど、人間かな

(これは人身売買の可能性有っと。…ん?あれ、確かさっきの書類に少女ら数人が行方不明で捜索に人手を貸してほしいって…)

ありえるな。

人身売買ともに麻薬や爆弾、は国の法律で使用も運用もご法度だ。
また奴隷制度もないためこれはれっきとした犯罪である。

(あ、リベルタからだ)

リベルタから返事が来た。
もう片方の男をつけているらしい。
男は商家や下級貴族を中心に回っているそうだ。泳がせるだけ泳がせて全員捕まえるらしい。

本当、アイツは仕事が好きだなぁ~

客が捕まるなら、今つけてる男は必要ないか。どんな店かはリベルタの方の男の呼び込みという名の証言で分かるし。

そうと決まれば。

自分に張った不可視の結界を解く。
この辺一帯に一応、逃げられない為の結界を張る。馬車の近くに枝を投げ込む。
ガサっとなった音に馬車の中の男は気づいたみたいだ。警戒しながら馬車を降りてくる。

「だ、誰だ!!」

「…きゃっ」

態とらしく出した声は甲高い声にならなかった。コケたふりをして地面に尻をつく。

「え、なっ、女か。なんでこんな所に女がいるんだ!」

「その、道に迷ってしまって…」

恥ずかしがるように下を向く。この演技自体が恥ずかしいと言うものだ。私の年齢は21歳だぞ?精神的に無理があるわ。

「ま、迷子…?こんな大の大人が…いや………というか、女か。」

何か思案しているみたいだ。
女だとわかった瞬間、警戒をとくなんて馬鹿だなぁ。

隙まみれの男の足元を少しずつ氷魔法で凍らしていく。

「なぁ、よかったら街まで送ってやるよ、ここで会ったのも何かの縁だ!馬車に乗ってくれ…へへ」

足を凍らされているのに気づかないなんて、なんてマヌケなんだろうか。

「……いや、その必要は無いかな。そのうち迎えに来るだろうし。貴方はそれまで眠っているといいよ」

「は?なっ!」

急速に膝まで凍らして、睡眠魔法を強制的にかける。本当は睡眠魔法なんて使ってはダメなんだけどね、国でも医師か私くらいしか許されていない。

バタっと倒れた男を横目に立ち上がり、馬車に乗り込む。

「は~、どっこいせ」

そこには口元を布で覆われ声が出ないまま涙を流す子供が2人、怯えながらこちらを見る女の子が2人。

「…もう大丈夫だよ、お家に帰してあげるからね」

子どもの頭を出来るだけ優しく撫で、手足の縄を外してやる。かなりの力で縛られていたみたいで、血が滲んでいたので治癒魔法をかける。
布を外せば、少しは安心したのか泣きながら私に抱きついてきた。

「おっと、」

抱きついてくる子ども2人の頭を撫で、そのままにしときながら次は女の子達の縄を解いていく。

子供は4歳ほど、女の子達は16から18くらいかな。

「……あ、あの、ハンネ魔道士師団長様ですか……」

「ん、あぁそうだよ。私のことを知っているという事は貴方たちはこの国の子かな?」

「そうです…2日ほど前に街を歩いていたら後ろから…気づいたらここに居て、変な男がお前らはこれから売られる商品なんだ、って……私たち怖くて、怖くて…」

「ごめんね、早く助けられなくて。怖い思いをしたね。」

そう言って、震える肩を抱きしめる。

「もうすぐ、魔道士団が来るはずだから安心してね。そのあと少し話を聞かせて貰うけれど、ちゃんとお家に帰れるよ。」

そう言えば、女の子たちはよかったとやっと笑顔を見せてくれた。子ども達は安心したのか私の服を握ったまま眠っている。私はそれを見て思わず口がほころんだが、少しずつ子ども達の指を引き離した。

(確か、生命体はもう一人いたはず)

だが、荷馬車を見渡しても子ども達に女の子の達、後は奥にある大きな箱が2つ。

私は微かな魔力を感じ、片方の箱を開こうとした。

「あ!!ハンネ様、その箱不気味なんです…!男がたまに箱を蹴りつけたり、ゴミを入れたりしてたんですが、その箱勝手に動くのです!!男が居なくなると、ガタッと揺れたりして…」

「ふむ…」

かなり大きい箱だな。でも彼女たちは怯えきってるし…中に生命体の確認ができるてるから中身は人間だからな。それに、何か気になるし。早く確かめないと…

「ハンネ様!!またお1人で勝手に行動しましたね!?部隊が来るまで待つという思考はないのですか!!」

いいところにリベルタが…

「ない。リベルタ、外で眠ってる男が容疑者だ。身柄を確保して騎士団にでも渡しておけ。そちらのお嬢さん方は囚われていたみたいだ。魔道士団に着き次第温かいスープでも差し上げて。あと、騎士団に届いてる行方不明リストの確認と家族を呼び出し、今回の情報を聞き出して照らし合わせて。あと、君たちがつけてた男と関係した貴族などは一覧にしてまとめておいて。よろしく」

「ちょ、急に!!ハンネ様は?」

「私はまだやることがある。悪いが任せたぞ。」

「そんな!少しくらい手伝って…」

「これはリベルタにしか頼めない事なんだ。リベルタなら分かってくれるよな…?」

「は、はい!このリベルタ・カルスターセ、全力を尽くします。」

ちょろいなぁ~
こういう所はリベルタの可愛いところだ。

そうして、リベルタたちは容疑者の確保と被害者の保護をし魔道士団へ戻って行った。

「さて、」

やっと静かになったため、箱に近づく。
箱の蓋をずらすと、中には体を丸めて縮こまる子どもが入っていた。
無造作に伸ばされたボサボサの黒い髪。変色してしまっている服。

「子ども…?」

意外だった。魔力を感じ、私は大人だと思い込んでいた。
この薄さには違和感があった。魔力が漏れないように薄い結界を何枚も張っているみたいだ。そんなことをこんな小さなが出来るはずが…

(あ。これ魔法か)

この子、魔法で体を小さくしているか時間を止めている。自分の幼い頃の体をずっと保っている。

私の勘が正しければ、この子は私に筆頭する魔力の持ち主と言うことになる。
現在の年齢は分からないが、まぁそれは後でもいいか。

「ねぇ、君。そこから出ておいで。ほら…おいで」

そう言って手を伸ばせば、微かにこちらを向いてくる。前髪が長すぎて表情は分からないが伝わってくるのは、困惑、警戒、怯え。

仕方がない、と無理に脇に手を差し込み抱き上げる。
子どもは驚いたようで、声すら出さないものの状況を理解できないようだった。

「ふぅん、凄いな。こんなが自分で魔力の調整が出来るなんて。才能があるね、私の弟子になるかい?」

わざわざ小さい子といったのは、勝手に姿をあばいて警戒させたくないからだ。何か意味を持って偽っているのだから、それを理解するまではこの策に乗ってあげようと思った。

頭を撫でながら少し前髪をずらせば、真紅の瞳はが見えた。


「名前は?」


「…………ア、バーミネル忌み子


「……私はまず君に、食料と湯と寝床と名前を与えなくてはならないみたいだね。」






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