聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ

文字の大きさ
5 / 105

005. 氷の辺境伯との邂逅

しおりを挟む
夜の帳が下りると、辺境の寒さはさらに厳しさを増した。小屋の隙間からは絶えず冷たい風が吹き込み、薄い毛布一枚では到底暖を取ることなどできない。リリアーナは壁際に敷かれた藁の上に身を寄せ、できるだけ小さく丸くなって寒さに耐えた。空腹と寒さ、そして先の見えない不安が、代わる代わる彼女の心を苛む。

(……本当に、ここで生きていけるのだろうか……)

王都での華やかな生活が、まるで遠い昔のことのように感じられた。温かなベッド、美味しい食事、優しい侍女たち。それら全てが、一夜にして奪い去られた。今あるのは、この凍えるような暗闇と、孤独だけだ。
涙が込み上げてくるのを、必死で堪える。泣いても何も変わらない。むしろ、体力を消耗するだけだ。今はただ、耐えなければならない。生き延びるために。

遠くで、また獣の咆哮のようなものが聞こえた。魔物だろうか。恐怖で心臓が縮み上がる。しかし、不思議と、昨日ほどのパニックにはならなかった。もしかしたら、あまりの極限状況に、感覚が麻痺し始めているのかもしれない。あるいは、心のどこかで「どうにでもなれ」という諦めの気持ちが生まれていたのかもしれない。

寒さと空腹で、なかなか寝付けなかった。うとうとしては、寒さで目が覚める。そんなことを繰り返しているうちに、東の空が白み始め、ようやく長い夜が終わったことを知った。体は芯から冷え切り、疲労困憊だったが、それでも朝が来たことに、わずかな安堵を覚えた。

リリアーナは、こわばる体をゆっくりと起こした。小屋の中は、朝日が差し込んでもなお薄暗く、冷え冷えとしていた。まずは、少しでも体を温めなければならない。しかし、火を起こす道具も、燃やすものもない。どうすればいいのだろうか。

途方に暮れていると、不意に小屋の扉が乱暴に開けられた。驚いて顔を上げると、昨日見た兵士とは別の、やはり屈強そうな体つきをした二人の兵士が立っていた。彼らは無言でリリアーナを一瞥すると、顎で外を指し示した。

「……辺境伯様がお呼びだ。ついてこい」
命令口調だった。逆らうことなど許されない雰囲気だ。
(辺境伯様……)
ついに、この地の支配者と対面する時が来たのだ。リリアーナは緊張で唾を飲み込み、黙って頷いた。

兵士たちに促されるまま、小屋を出て砦へと向かう。朝の空気は痛いほど冷たいが、夜中のような厳しさではなかった。砦の周囲では、すでに人々が活動を始めていた。鍛冶場からは再び槌音が響き、兵士たちが訓練をしている声も聞こえる。厳しい環境の中でも、人々は懸命に生きているのだ。その光景が、少しだけリリアーナに勇気を与えた。

砦の重厚な門をくぐり、中庭を抜けて建物の中へと案内される。内部は質実剛健といった造りで、華美な装飾は一切ない。石造りの壁は冷たく、通路を歩く兵士たちの足音が硬く響いた。すれ違う兵士たちは皆、一様に険しい表情をしており、リリアーナに好奇の視線を向けはするものの、誰も言葉を発しようとはしなかった。砦全体が、常に緊張感に包まれているような印象だった。

やがて、一番奥にあると思われる、一際大きな扉の前で兵士たちは足を止めた。
「ここで待て」
一人がそう言い残し、扉をノックして中へ入っていった。残されたリリアーナは、固く閉ざされた扉を見つめながら、自分の運命がここで決まるのだという思いに、心臓が早鐘のように打つのを感じていた。

(どんな方なのだろう……氷の辺境伯……)
冷徹で、厳格で、近寄りがたい人物。噂通りの人物なのだろうか。もしそうなら、自分のような厄介者を、どうして受け入れたのだろう。王太子の命令だから仕方なく? それとも、何か別の意図が……?

しばらくして、中から出てきた兵士が「入れ」と短く告げた。リリアーナは深呼吸を一つして、意を決して扉を開け、部屋の中へと足を踏み入れた。

そこは、執務室らしき部屋だった。広くはないが、機能的に整えられている。壁際には膨大な量の書類や地図が収められた棚が並び、部屋の中央には大きな執務机が置かれていた。窓からは朝の光が差し込んでいるが、部屋全体の雰囲気はどこか冷たく、張り詰めた空気が漂っていた。

そして、その執務机の向こうに、一人の男性が座っていた。
息を呑むほどに、整った顔立ち。だが、その美しさは、まるで精巧に作られた氷の彫像のようだった。陽の光を反射して銀色に輝く髪、全てを見透かすような鋭い氷の瞳。表情筋というものが存在しないかのように、その顔には何の感情も浮かんでいなかった。ただ、静かに、リリアーナを見つめている。年の頃はまだ若い。おそらく二十代後半だろうか。しかし、その身に纏う威圧感と、深い叡智を湛えたような瞳は、年齢以上のものを示していた。上質な、しかし飾り気のない黒い執務服に身を包み、背筋を伸ばして座る姿は、まさに「辺境の支配者」と呼ぶに相応しい風格を備えていた。

彼が、アレクシス・フォン・ヴァルテンベルク。氷の辺境伯。

リリアーナは、その圧倒的な存在感の前に、思わず動きを止めてしまった。恐怖や緊張とはまた違う、何か畏敬の念に近い感情が湧き上がってくる。彼の視線は、まるで魂の奥底まで見抜こうとするかのように鋭く、リリアーナは自分が裸にされているような心地にさえなった。

「……リリアーナ・フォン・クラインフェルトだな」
静かだが、よく通る低い声だった。感情の起伏は全く感じられない、平坦な声。
「は、はい。そうでございます」
リリアーナはかろうじて返事をし、貴族としての礼儀作法に従って、深くカーテシーをした。体はわずかに震えていたが、必死でそれを悟られまいとした。
「……面を上げよ」
促され、リリアーナはゆっくりと顔を上げた。再び、アレクシスの氷の瞳と視線がかち合う。吸い込まれそうな、深く冷たい色。

「王太子殿下からの書状は受け取った。お前が婚約を破棄され、この辺境領へ追放されたことも承知している」
淡々とした口調で、アレクシスは事実を述べた。その言葉には、非難も同情も含まれていない。ただ、事実として認識している、それだけだった。
「本来であれば、王都からの厄介者など受け入れる義理はない。だが、王太子殿下直々のご命令とあっては、無碍にもできん」

やはり、王太子の命令だから仕方なく、ということなのだろうか。リリアーナの胸に、わずかな落胆が広がった。
「よって、お前をヴァルテンベルク辺境伯の名において、一時的に『保護』する。ただし、それは監視下に置くという意味でもあることを忘れるな」
「……はい」
「衣食住は最低限保証する。昨日与えた小屋が、お前の住まいだ。食料については、後ほど使いの者に届けさせよう。だが、それ以上のものを望むな。ここは王都ではない。誰もがお前のような貴族令嬢をもてなしてくれると思うなよ」

厳しい言葉だったが、それは紛れもない事実だった。リリアーナは黙って頷くしかなかった。
「そして、最も重要なことだ」
アレクシスは、わずかに身を乗り出すようにして、言葉を続けた。その瞳の鋭さが増す。
「この辺境領で生きる以上、我々の邪魔になるような行動は一切慎むこと。勝手な行動、問題を起こすような真似は、断じて許さん。もしそのようなことがあれば、その時は……容赦はしない」
最後の言葉には、明確な脅威が込められていた。リリアーナは背筋が凍るのを感じた。彼が本気で言っていることは、疑う余地もなかった。

「……肝に、銘じます」
震える声で、リリアーナは答えた。恐怖で、膝が笑いそうになるのを必死で堪える。

これで話は終わりだろうか。早くこの場から立ち去りたい。リリアーナがそう思った時だった。
「……それで?」
アレクシスが、不意に問いかけた。
「え……?」
「お前は、ここでどうするつもりだ? ただ与えられるものを待って、死を待つのか? それとも、何か、お前にできることがあるとでも言うのか?」
氷の瞳が、じっとリリアーナを見据える。試すような、あるいは、値踏みするような視線。

リリアーナは、はっとした。そうだ、自分はただ絶望しているだけではいけないのだ。何か、自分にできることを見つけなければ。昨日、心に決めたことではないか。
恐怖はあった。彼の威圧感に押し潰されそうにもなった。しかし、ここで何も言わなければ、本当にただ死を待つだけの存在になってしまう。それだけは、嫌だった。

リリアーナは、震える唇を一度引き結び、意を決して口を開いた。
「……わたくしに、何ができるかは、まだわかりません。ですが……もし、何か、この辺境領のために、わたくしでもお役に立てることがあるのでしたら……どんなことでも、させていただきたいと、思っております」
必死で絞り出した声だった。貴族としてのプライドをかなぐり捨てた、純粋な願いだった。

アレクシスは、リリアーナの言葉を聞いても、表情一つ変えなかった。ただ、その氷の瞳の奥で、ほんの一瞬、何か微かな光が揺らめいたような気がした。それは、驚きだったのか、興味だったのか、あるいは単なる気のせいだったのか。リリアーナには判断がつかなかった。

しばらくの沈黙の後、アレクシスは再び口を開いた。
「……お役に立てること、か。面白いことを言う」
その声には、やはり感情は乗っていなかったが、先ほどまでの平坦さとは少し違う、何か響きが含まれているような気がした。
「だが、今のところ、追放されてきた貴族令嬢に任せるような仕事はない。せいぜい、自分の身の回りのことくらいは自分でできるようになることだな」
それは、事実上の拒絶だった。しかし、リリアーナは、なぜか完全に見捨てられたという感じはしなかった。
「……わかりました。まずは、自分の足で立てるように、努力いたします」
リリアーナは、今度はしっかりと前を向いて答えた。

アレクシスは、そんなリリアーナを数秒間、無言で見つめていた。彼の考えていることは、全く読み取れない。
やがて、彼はふっと視線を外し、手元の書類へと目を落とした。
「……話は以上だ。下がれ」
解散の合図だった。

リリアーナは、再び深くカーテシーをすると、静かに部屋を後にした。扉を閉める瞬間、ちらりと振り返ると、アレクシスはすでに書類に集中しており、もうリリアーナのことなど気にも留めていない様子だった。

執務室を出て、先ほどの兵士に連れられて砦の外へ出るまで、リリアーナはずっと辺境伯のことを考えていた。
氷のように冷たい人。恐ろしいほどに鋭い観察眼を持つ人。そして、底知れない何かを秘めているような人。
彼に睨まれただけで、体が竦むような恐怖を感じた。しかし、同時に、彼の言葉の端々や、視線の奥に、単なる冷徹さだけではない何かを感じたような気もした。それは、厳しい現実を知り尽くした者の持つ、ある種の公平さのようなものだったのかもしれない。

(……容赦はしない、か……)
彼の言葉が蘇る。それは脅しであると同時に、辺境で生きる上での絶対的なルールなのだろう。甘えは許されない。自分の力で生き抜く覚悟がなければ、ここでは生きていけないのだ。

小屋に戻ると、入り口の前に粗末な麻袋が一つ置かれていた。中には、黒パンが数個と、干し肉、そして小さな塩の袋が入っていた。これが、辺境伯が保証すると言った「最低限の食料」なのだろう。決して十分な量とは言えないが、それでも、飢えをしのぐことはできそうだ。

リリアーナは麻袋を抱え、小屋の中に入った。外からの光が、昨日より少しだけ明るく感じられた。
氷の辺境伯との邂逅は、リリアーナに辺境の厳しさと、そこで生きるための覚悟を改めて突きつけた。しかし、それは絶望だけではなかった。むしろ、彼の存在は、リリアーナの中に眠っていた何かを、静かに揺り動かしたような気がした。

(……まずは、自分の足で立つこと)

アレクシスの言葉を反芻する。そうだ、まずはそこから始めなければ。この小屋を少しでも住めるようにして、自分で火を起こせるようにして、そして……。

(……温かいスープを、作る)

その決意は、辺境伯との出会いを経て、さらに確かなものになっていた。恐怖と不安はまだ胸の中にある。けれど、それと同じくらい、これから自分が何をすべきか、という道筋が、ぼんやりとではあるが見え始めていた。

リリアーナは、麻袋から黒パンを取り出し、ゆっくりと一口かじった。硬くて、少し酸味のあるパンだった。決して美味とは言えなかったが、空っぽの胃にはありがたかった。
辺境での生活は、今、まさに始まったばかりだった。
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

前世では地味なOLだった私が、異世界転生したので今度こそ恋愛して結婚して見せます

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 異世界の伯爵令嬢として生まれたフィオーレ・アメリア。美しい容姿と温かな家族に恵まれ、何不自由なく過ごしていた。しかし、十歳のある日——彼女は突然、前世の記憶を取り戻す。 「私……交通事故で亡くなったはず……。」 前世では地味な容姿と控えめな性格のため、人付き合いを苦手とし、恋愛を経験することなく人生を終えた。しかし、今世では違う。ここでは幸せな人生を歩むために、彼女は決意する。 幼い頃から勉学に励み、運動にも力を入れるフィオーレ。社交界デビューを目指し、誰からも称賛される女性へと成長していく。そして迎えた初めての舞踏会——。 煌めく広間の中、彼女は一人の男に視線を奪われる。 漆黒の短髪、深いネイビーの瞳。凛とした立ち姿と鋭い眼差し——騎士団長、レオナード・ヴェルシウス。 その瞬間、世界が静止したように思えた。 彼の瞳もまた、フィオーレを捉えて離さない。 まるで、お互いが何かに気付いたかのように——。 これは運命なのか、それとも偶然か。 孤独な前世とは違い、今度こそ本当の愛を掴むことができるのか。 騎士団長との恋、社交界での人間関係、そして自ら切り開く未来——フィオーレの物語が、今始まる。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

夏芽みかん
ファンタジー
生まれながらに強大な魔力を持ち、聖女として大神殿に閉じ込められてきたレイラ。 けれど王太子に「身元不明だから」と婚約を破棄され、あっさり国外追放されてしまう。 「……え、もうお肉食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?」 追放の道中出会った剣士ステファンと狼男ライガに拾われ、冒険者デビュー。おいしいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。 一方、魔物が出るようになった王国では大司教がレイラの回収を画策。レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。 ※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。 【2025.09.02 全体的にリライトしたものを、再度公開いたします。】

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

処理中です...