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第59話 花火の下の誓い
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湊のりんご飴事件によって、俺たちの周りには一触即発の甘くて危険な空気が流れていた。玲と葵と雅からの嫉妬に満ちた無言のプレッシャーが痛い。俺はこれ以上この場にいるのは危険だと判断し、半ば強引にその場を後にした。
「そろそろ閉門の時間も近いし、帰るか」
俺のその一言に、三人はしぶしぶといった感じで頷いた。湊だけはしてやったりという顔で、楽しそうに鼻歌を歌っている。
俺たちは祭りの喧騒を背に、神社へと続く長い石段をゆっくりと下り始めた。来た時とは違う少しだけ静かで名残惜しい帰り道。提灯の明かりが、俺たちの浴衣姿をぼんやりと照らし出していた。
俺の右手にはまだ雅がくれたクマのぬいぐるみが、左手には葵がくれた猫のぬいぐるみが抱えられている。そして俺の左手は玲が、右手は葵がまだ固く握りしめていた。湊は俺の浴衣の裾をちょこんと掴んで、楽しそうに後をついてきている。雅だけは少しだけ距離を置いて、俺たちの少し後ろを黙って歩いていた。
奇妙な、しかし俺にとってはかけがえのない五人だけの行列だった。
神社の鳥居をくぐり、駅へと向かう道を歩き始めたその時だった。
ヒュ~~~~、ドンッ!
夜空に甲高い笛のような音が響き渡ったかと思うと、次の瞬間、巨大な光の花が咲き誇った。
花火だ。
夏祭りのフィナーレを飾る打ち上げ花火が始まったのだ。
「「「「うわぁ……!」」」」
俺たちは誰からともなく一斉に足を止めて空を見上げた。
赤、青、緑、金。色とりどりの光の粒が、夜空という巨大なキャンバスに次々と美しい模様を描いては儚く消えていく。その圧倒的な美しさに、俺たちは言葉を失っていた。
ドン、ドン、と腹の底に響く重い音。
光のシャワーが俺たち五人の顔をきらびやかに照らし出す。
隣にいる玲の横顔が花火の光を受けて宝石のように輝いていた。彼女はうっとりとした表情で空を見上げている。その瞳は子供のようにキラキラと輝いていた。
葵も、湊も、雅も、同じだった。
俺はそんな彼女たちの横顔を、一人一人そっと盗み見た。
この光景を、この瞬間を、絶対に忘れたくない。心からそう思った。
どれくらいの時間が経っただろうか。
色とりどりの花火が次々と夜空を彩っていく。その壮大な光のショーに、俺たちはただただ魅了されていた。
ふと、隣に立つ玲が俺の手を握る手に、ほんの少しだけ力を込めた。
「……祐樹」
花火の音に負けないように、彼女は俺の耳元に顔を寄せて囁いた。その声は真剣で、どこか切ない響きを持っていた。
「ん?」
「……来年も」
「え?」
彼女は一度言葉を切ると、再び夜空を見上げた。その瞳には今打ち上がったばかりの、金色の大きな柳花火が美しく映り込んでいる。
「来年も……その次も。こうして、あなたと一緒にこの花火を見たいわ」
その言葉はほとんど独り言のようだった。だがそれは紛れもなく、彼女の心の底からの素直な願いだった。
俺は、そのあまりにも純粋でまっすぐな言葉に、胸を締め付けられる思いだった。
来年も、その次も。
俺たちの、この奇妙でかけがえのない関係が、ずっと続いていく未来。
俺は彼女の手を強く、強く握り返した。
「……ああ。そうだな」
言葉はそれだけで十分だった。俺たちの想いは確かに一つになった。
ドンッ!
ひときわ大きな音と共に、夜空いっぱいに金色の光の雨が降り注ぐ。それはまるで俺たちの未来を祝福するかのような、壮大で美しい光景だった。
俺たちのすぐ後ろで、葵と湊が何かを言い合っているのが微かに聞こえた。
「ずりーぞ玲! 俺だって、祐樹と来年も!」
「僕だって、せんぱいと一生一緒に花火見たいです!」
さらにその後ろで、雅が「……馬鹿みたいだ」と呟きながらも、その顔がほんのりと赤く染まっているのを俺は見逃さなかった。
四人の少女たちの、それぞれの想い。
その全てがこの美しい花火の下で、一つの確かな願いとなって夜空へと昇っていく。
夏休み最後の夜。
この花火の下で交わされた言葉にならない誓いは、俺たちの心をこれからもずっと温かく照らし続けてくれるだろう。
やがて最後の花火が消え、夜空に静寂が戻った。
後に残されたのは火薬の匂いと、俺たちの胸の中に灯った温かくて少しだけ切ない恋の光だけだった。
俺たちの夏は、最高の形でその終わりを告げようとしていた。
「そろそろ閉門の時間も近いし、帰るか」
俺のその一言に、三人はしぶしぶといった感じで頷いた。湊だけはしてやったりという顔で、楽しそうに鼻歌を歌っている。
俺たちは祭りの喧騒を背に、神社へと続く長い石段をゆっくりと下り始めた。来た時とは違う少しだけ静かで名残惜しい帰り道。提灯の明かりが、俺たちの浴衣姿をぼんやりと照らし出していた。
俺の右手にはまだ雅がくれたクマのぬいぐるみが、左手には葵がくれた猫のぬいぐるみが抱えられている。そして俺の左手は玲が、右手は葵がまだ固く握りしめていた。湊は俺の浴衣の裾をちょこんと掴んで、楽しそうに後をついてきている。雅だけは少しだけ距離を置いて、俺たちの少し後ろを黙って歩いていた。
奇妙な、しかし俺にとってはかけがえのない五人だけの行列だった。
神社の鳥居をくぐり、駅へと向かう道を歩き始めたその時だった。
ヒュ~~~~、ドンッ!
夜空に甲高い笛のような音が響き渡ったかと思うと、次の瞬間、巨大な光の花が咲き誇った。
花火だ。
夏祭りのフィナーレを飾る打ち上げ花火が始まったのだ。
「「「「うわぁ……!」」」」
俺たちは誰からともなく一斉に足を止めて空を見上げた。
赤、青、緑、金。色とりどりの光の粒が、夜空という巨大なキャンバスに次々と美しい模様を描いては儚く消えていく。その圧倒的な美しさに、俺たちは言葉を失っていた。
ドン、ドン、と腹の底に響く重い音。
光のシャワーが俺たち五人の顔をきらびやかに照らし出す。
隣にいる玲の横顔が花火の光を受けて宝石のように輝いていた。彼女はうっとりとした表情で空を見上げている。その瞳は子供のようにキラキラと輝いていた。
葵も、湊も、雅も、同じだった。
俺はそんな彼女たちの横顔を、一人一人そっと盗み見た。
この光景を、この瞬間を、絶対に忘れたくない。心からそう思った。
どれくらいの時間が経っただろうか。
色とりどりの花火が次々と夜空を彩っていく。その壮大な光のショーに、俺たちはただただ魅了されていた。
ふと、隣に立つ玲が俺の手を握る手に、ほんの少しだけ力を込めた。
「……祐樹」
花火の音に負けないように、彼女は俺の耳元に顔を寄せて囁いた。その声は真剣で、どこか切ない響きを持っていた。
「ん?」
「……来年も」
「え?」
彼女は一度言葉を切ると、再び夜空を見上げた。その瞳には今打ち上がったばかりの、金色の大きな柳花火が美しく映り込んでいる。
「来年も……その次も。こうして、あなたと一緒にこの花火を見たいわ」
その言葉はほとんど独り言のようだった。だがそれは紛れもなく、彼女の心の底からの素直な願いだった。
俺は、そのあまりにも純粋でまっすぐな言葉に、胸を締め付けられる思いだった。
来年も、その次も。
俺たちの、この奇妙でかけがえのない関係が、ずっと続いていく未来。
俺は彼女の手を強く、強く握り返した。
「……ああ。そうだな」
言葉はそれだけで十分だった。俺たちの想いは確かに一つになった。
ドンッ!
ひときわ大きな音と共に、夜空いっぱいに金色の光の雨が降り注ぐ。それはまるで俺たちの未来を祝福するかのような、壮大で美しい光景だった。
俺たちのすぐ後ろで、葵と湊が何かを言い合っているのが微かに聞こえた。
「ずりーぞ玲! 俺だって、祐樹と来年も!」
「僕だって、せんぱいと一生一緒に花火見たいです!」
さらにその後ろで、雅が「……馬鹿みたいだ」と呟きながらも、その顔がほんのりと赤く染まっているのを俺は見逃さなかった。
四人の少女たちの、それぞれの想い。
その全てがこの美しい花火の下で、一つの確かな願いとなって夜空へと昇っていく。
夏休み最後の夜。
この花火の下で交わされた言葉にならない誓いは、俺たちの心をこれからもずっと温かく照らし続けてくれるだろう。
やがて最後の花火が消え、夜空に静寂が戻った。
後に残されたのは火薬の匂いと、俺たちの胸の中に灯った温かくて少しだけ切ない恋の光だけだった。
俺たちの夏は、最高の形でその終わりを告げようとしていた。
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