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第74話 【本番④】玲からのメッセージ
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俺のためだけの特別サービスは、周囲のお客様たちの熱狂的な視線の中でさらにエスカレートしていった。それは彼女たちが事前に打ち合わせていたのか、それともその場の即興なのか。四人の連携は完璧で、俺に息つく暇さえ与えてくれない。
「ご主人様。ご注文はブレンドティー『公爵の嗜み』でよろしかったでしょうか」
玲が優雅な所作で俺に確認する。俺がこくりと頷くと、彼女は「かしこまりました。最高の茶葉をご用意いたします」と言って一度厨房へと下がった。
その間も、俺へのサービスは止まらない。
「ご主人様! 肩の凝りは、いかがですか!」
葵が俺の後ろで楽しそうに肩を揉み続けている。その力加減は絶妙で、正直なところめちゃくちゃ気持ちいい。
「せんぱい、手相が出ましたよ! なんと『世界中の美少女に愛される』という覇王の相が出ております!」
湊が俺の手を握ったまま、もっともらしい顔で告げる。周囲の客席から「おおー!」という歓声が上がった。
「……別に、信じたわけじゃないが。一応、手は拭いておけ」
雅がどこからか取り出した温かいおしぼりを、俺の手にそっと乗せてくれた。その気遣いがたまらなく嬉しい。
そして数分後。玲が、美しい銀のティーポットと純白のティーカップを乗せたトレイを手に、再び俺のテーブルへと戻ってきた。
「お待たせいたしました、ご主人様」
彼女はポットから琥珀色に輝く紅茶を、一滴もこぼすことなくカップへと注いでいく。その流れるような動きは、もはや芸術の域に達していた。
紅茶を注ぎ終えた彼女はポットを置くと、今度は小さなミルクピッチャーを手に取った。
「ご主人様は、ミルクをお入れになりますか?」
「あ、ああ。頼む」
俺がそう答えると、彼女はにっこりと何かを企むように微笑んだ。
「かしこまりました。それでは、特別なアートをあなた様だけに」
そう言うと、彼女はピッチャーを高く掲げ、そこから細く白いミルクを紅茶の表面へと糸を引くように注ぎ始めた。
ピッチャーを持つ彼女の手は、一切の揺らぎがない。ミルクは琥珀色の水面に美しい模様を描いていく。
それは、ラテアートならぬティーアートとでも言うべき神業だった。
「すげえ……!」
「何を描いてるんだ……?」
俺だけでなく、周りのお客様たちも固唾をのんでその光景を見守っている。
やがて玲はピッチャーを置くと、完成したカップをそっと俺の目の前に差し出した。
「どうぞ、ご主人様」
俺はカップの中に描かれたアートを見て、息をのんだ。
そこには美しい筆記体で、四つの文字がくっきりと描かれていたのだ。
『For Yuki』
祐樹のために。
そのあまりにもストレートで、あまりにも個人的なメッセージ。
それは他の誰でもない、相葉祐樹ただ一人に向けられた橘玲からの秘密のラブレターだった。
「なっ……!」
俺は顔がカッと熱くなるのを感じた。心臓が肋骨を叩く音が聞こえる。
周囲の客席からは、その文字の意味を理解した生徒たちから今日一番の絶叫に近い悲鳴が上がった。
「ふ、ふぉーゆーき!?」
「え、あれ、相葉君の名前じゃん!」
「きゃあああああああ! 橘様が相葉君に愛の告白を……!」
ホールはもはやパニック状態だ。
「……玲、お前……!」
俺が抗議の視線を彼女に向けると、彼女は他の誰にも聞こえない声で悪戯っぽく囁いた。
「……『祐樹』という名前の紅茶なのですよ。ご主人様」
その言い訳はあまりにも無理があった。だが、彼女のその大胆な行動に俺はもう何も言い返すことができなかった。
「……ずりいぞ、玲!」
「なんてことを……!」
「…………」
俺の後ろにいた葵、湊、雅もその光景を見て、それぞれ悔しそうな嫉妬に満ちた表情を浮かべている。
玲からのあまりにも甘く、そして大胆なメッセージ。
それは俺のためだけの特別サービスという名の、宣戦布告だったのかもしれない。
俺たちの執事喫-茶は、一人の王子様の行動によってただの文化祭の出し物から、甘くて危険な恋愛リアリティーショーの舞台へとその姿を変えてしまった。
俺は目の前の、俺のためだけに作られた特別な紅茶を飲むこともできずに、ただ呆然と見つめることしかできなかった。
その琥珀色の水面には、真っ赤になった俺の顔が情けなく映り込んでいた。
「ご主人様。ご注文はブレンドティー『公爵の嗜み』でよろしかったでしょうか」
玲が優雅な所作で俺に確認する。俺がこくりと頷くと、彼女は「かしこまりました。最高の茶葉をご用意いたします」と言って一度厨房へと下がった。
その間も、俺へのサービスは止まらない。
「ご主人様! 肩の凝りは、いかがですか!」
葵が俺の後ろで楽しそうに肩を揉み続けている。その力加減は絶妙で、正直なところめちゃくちゃ気持ちいい。
「せんぱい、手相が出ましたよ! なんと『世界中の美少女に愛される』という覇王の相が出ております!」
湊が俺の手を握ったまま、もっともらしい顔で告げる。周囲の客席から「おおー!」という歓声が上がった。
「……別に、信じたわけじゃないが。一応、手は拭いておけ」
雅がどこからか取り出した温かいおしぼりを、俺の手にそっと乗せてくれた。その気遣いがたまらなく嬉しい。
そして数分後。玲が、美しい銀のティーポットと純白のティーカップを乗せたトレイを手に、再び俺のテーブルへと戻ってきた。
「お待たせいたしました、ご主人様」
彼女はポットから琥珀色に輝く紅茶を、一滴もこぼすことなくカップへと注いでいく。その流れるような動きは、もはや芸術の域に達していた。
紅茶を注ぎ終えた彼女はポットを置くと、今度は小さなミルクピッチャーを手に取った。
「ご主人様は、ミルクをお入れになりますか?」
「あ、ああ。頼む」
俺がそう答えると、彼女はにっこりと何かを企むように微笑んだ。
「かしこまりました。それでは、特別なアートをあなた様だけに」
そう言うと、彼女はピッチャーを高く掲げ、そこから細く白いミルクを紅茶の表面へと糸を引くように注ぎ始めた。
ピッチャーを持つ彼女の手は、一切の揺らぎがない。ミルクは琥珀色の水面に美しい模様を描いていく。
それは、ラテアートならぬティーアートとでも言うべき神業だった。
「すげえ……!」
「何を描いてるんだ……?」
俺だけでなく、周りのお客様たちも固唾をのんでその光景を見守っている。
やがて玲はピッチャーを置くと、完成したカップをそっと俺の目の前に差し出した。
「どうぞ、ご主人様」
俺はカップの中に描かれたアートを見て、息をのんだ。
そこには美しい筆記体で、四つの文字がくっきりと描かれていたのだ。
『For Yuki』
祐樹のために。
そのあまりにもストレートで、あまりにも個人的なメッセージ。
それは他の誰でもない、相葉祐樹ただ一人に向けられた橘玲からの秘密のラブレターだった。
「なっ……!」
俺は顔がカッと熱くなるのを感じた。心臓が肋骨を叩く音が聞こえる。
周囲の客席からは、その文字の意味を理解した生徒たちから今日一番の絶叫に近い悲鳴が上がった。
「ふ、ふぉーゆーき!?」
「え、あれ、相葉君の名前じゃん!」
「きゃあああああああ! 橘様が相葉君に愛の告白を……!」
ホールはもはやパニック状態だ。
「……玲、お前……!」
俺が抗議の視線を彼女に向けると、彼女は他の誰にも聞こえない声で悪戯っぽく囁いた。
「……『祐樹』という名前の紅茶なのですよ。ご主人様」
その言い訳はあまりにも無理があった。だが、彼女のその大胆な行動に俺はもう何も言い返すことができなかった。
「……ずりいぞ、玲!」
「なんてことを……!」
「…………」
俺の後ろにいた葵、湊、雅もその光景を見て、それぞれ悔しそうな嫉妬に満ちた表情を浮かべている。
玲からのあまりにも甘く、そして大胆なメッセージ。
それは俺のためだけの特別サービスという名の、宣戦布告だったのかもしれない。
俺たちの執事喫-茶は、一人の王子様の行動によってただの文化祭の出し物から、甘くて危険な恋愛リアリティーショーの舞台へとその姿を変えてしまった。
俺は目の前の、俺のためだけに作られた特別な紅茶を飲むこともできずに、ただ呆然と見つめることしかできなかった。
その琥珀色の水面には、真っ赤になった俺の顔が情けなく映り込んでいた。
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