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第63話:再訪、アストラル研究所
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テル村の仲間たちに見送られ、俺たち三人は再びアストラル研究所へと続く森の道を踏み出した。前回は俺一人だったが、今回はシルフィとレナという頼もしい仲間がいる。それだけで、心の重圧はだいぶ違った。
しかし、森に足を踏み入れてすぐに、俺たちは異変に気づいた。以前よりも、森が妙に静まり返っているのだ。小動物の気配や、鳥の声が極端に少ない。
「…なんか、変だな。静かすぎるぜ」
レナが鋭い嗅覚で周囲を探りながら、訝しげに呟く。
「ええ…空気も、なんだか重い気がします…」
シルフィも、精霊との繋がりを通じて、森の微妙な変化を感じ取っているようだった。
俺も【万物解析】で周囲を探る。確かに、通常の魔物の生体反応が、以前調査した時よりも明らかに減少している。だが、その代わりに…。
ガサッ!
突然、前方の茂みから、巨大な牙猪(ファングボア)が飛び出してきた! 通常の個体よりも一回り以上大きく、その目は赤く充血し、涎を垂らして猛烈な勢いで突進してくる!
「危ない!」
レナが瞬時に反応し、シルフィを庇うように前に出る。そして、突進してくる牙猪の鼻先を、強烈な蹴りで打ち据えた!
ブゴォッ! という鈍い音と共に、巨大な牙猪はんどバランスを崩して横転し、地面を転がった。
「…こいつ、普通の牙猪じゃねぇな。妙にデカいし、凶暴すぎる」
レナが警戒しながら呟く。俺も解析して確信した。
「ああ。魔力反応も異常に高い。何らかの影響で、凶暴化・大型化しているようだ」
その後も、道中では何度か、同じように異常に凶暴化した魔物に遭遇した。数は少ないが、一体一体が手強く、油断できない。幸い、レナの戦闘能力と、シルフィの援護魔法、そして俺の的確な指示によって、大きな損害を受けることなく進むことができたが、この森で何かが起こっているのは明らかだった。
(遺跡の異変が、外部の生態系にまで影響を及ぼし始めているのか…?)
不安を抱えながらも、俺たちは慎重に歩を進め、ついに目的地の古びた祠へと到着した。祠の周囲には特に変わった様子はない。俺は隠し階段の入り口を開け、シルフィとレナに声をかけた。
「ここから地下に入る。中は暗くて、罠もあるかもしれない。十分に気をつけてくれ」
「はい!」
「おう!」
松明の明かりを頼りに、俺たちは再びアストラル研究所の内部へと足を踏み入れた。ひんやりとした古びた空気と、独特の魔力の匂い。初めてこの光景を目にするシルフィとレナは、息を呑んで周囲を見回していた。
「ここが…古代の遺跡…」シルフィが、壁に刻まれた精巧な模様に目を奪われている。
「すっげぇ…なんか、とんでもない場所に来ちまった感じだな…」レナも、その規模と雰囲気に圧倒されているようだった。
俺は前回確認した落とし穴の罠が作動しないように注意を促し、壁画についても簡単に説明しながら、通路を進んでいく。そして、再びあの巨大な動力炉が鎮座する広間へとたどり着いた。
「うわぁ…!」
「なんだ、このデカい機械は…!?」
シルフィとレナは、目の前に広がる異様な光景に、再び言葉を失う。
装置は、前回訪れた時と同じように沈黙を守っている。だが、俺は【万物解析】で、明らかな変化を感じ取っていた。
『対象: 古代動力装置(星脈炉?)
状態: 停止状態維持。しかし、内部残留魔力の【不安定な揺らぎ】が増大傾向。炉心部のエネルギー封印が弱まっている可能性? 微弱な共振現象(機械音の発生源?)を観測。』
「…やはり、何かが起きている」
内部の魔力状態が、以前よりも不安定になっている。そして、あの微かな機械音も、気のせいではなく、前回よりもわずかに大きくなっているようだ。これが、地上で観測された微震の原因なのだろう。
「カイト、この機械、なんだか…すごく強い力を感じる。でも、少し怖い感じもする…」
シルフィが、魔力の流れに敏感なエルフとしての感覚で、装置の異様さを捉えている。
「ああ。下手に触れると危険だ。今は近づかない方がいい」
俺は二人に改めて注意を促した。
地震の原因は、この動力炉の不安定化にある可能性が高い。だが、なぜ不安定になっているのか? その根本原因を突き止めなければ、解決には至らないだろう。
「奥へ進もう。前回俺が見つけた、『セクター7』と呼ばれる区画へ。そこに何か手がかりがあるかもしれない」
俺たちは動力室を後にし、以前俺が開けた金属製の重厚な扉へと向かった。扉の上には、今もくっきりと『セクター7』の文字が刻まれている。扉の向こうからは、前回よりもさらに濃密な魔力の気配と、そして、何か…生き物の気配とは違う、形容しがたい未知の気配が漂ってくる気がした。
三人の間に、緊張が走る。この先に何が待ち受けているのか、全く予想がつかない。
俺はシルフィとレナと顔を見合わせ、互いの覚悟を確認するように頷き合った。そして、意を決して、再び『セクター7』の扉へと手をかけた。
ゴトン…
重い金属音と共に、扉がゆっくりと開いていく。その先に広がるのは、未知なる遺跡の深奥。鳴動する大地の謎を解き明かすための、本格的な探索が、今、始まろうとしていた。
しかし、森に足を踏み入れてすぐに、俺たちは異変に気づいた。以前よりも、森が妙に静まり返っているのだ。小動物の気配や、鳥の声が極端に少ない。
「…なんか、変だな。静かすぎるぜ」
レナが鋭い嗅覚で周囲を探りながら、訝しげに呟く。
「ええ…空気も、なんだか重い気がします…」
シルフィも、精霊との繋がりを通じて、森の微妙な変化を感じ取っているようだった。
俺も【万物解析】で周囲を探る。確かに、通常の魔物の生体反応が、以前調査した時よりも明らかに減少している。だが、その代わりに…。
ガサッ!
突然、前方の茂みから、巨大な牙猪(ファングボア)が飛び出してきた! 通常の個体よりも一回り以上大きく、その目は赤く充血し、涎を垂らして猛烈な勢いで突進してくる!
「危ない!」
レナが瞬時に反応し、シルフィを庇うように前に出る。そして、突進してくる牙猪の鼻先を、強烈な蹴りで打ち据えた!
ブゴォッ! という鈍い音と共に、巨大な牙猪はんどバランスを崩して横転し、地面を転がった。
「…こいつ、普通の牙猪じゃねぇな。妙にデカいし、凶暴すぎる」
レナが警戒しながら呟く。俺も解析して確信した。
「ああ。魔力反応も異常に高い。何らかの影響で、凶暴化・大型化しているようだ」
その後も、道中では何度か、同じように異常に凶暴化した魔物に遭遇した。数は少ないが、一体一体が手強く、油断できない。幸い、レナの戦闘能力と、シルフィの援護魔法、そして俺の的確な指示によって、大きな損害を受けることなく進むことができたが、この森で何かが起こっているのは明らかだった。
(遺跡の異変が、外部の生態系にまで影響を及ぼし始めているのか…?)
不安を抱えながらも、俺たちは慎重に歩を進め、ついに目的地の古びた祠へと到着した。祠の周囲には特に変わった様子はない。俺は隠し階段の入り口を開け、シルフィとレナに声をかけた。
「ここから地下に入る。中は暗くて、罠もあるかもしれない。十分に気をつけてくれ」
「はい!」
「おう!」
松明の明かりを頼りに、俺たちは再びアストラル研究所の内部へと足を踏み入れた。ひんやりとした古びた空気と、独特の魔力の匂い。初めてこの光景を目にするシルフィとレナは、息を呑んで周囲を見回していた。
「ここが…古代の遺跡…」シルフィが、壁に刻まれた精巧な模様に目を奪われている。
「すっげぇ…なんか、とんでもない場所に来ちまった感じだな…」レナも、その規模と雰囲気に圧倒されているようだった。
俺は前回確認した落とし穴の罠が作動しないように注意を促し、壁画についても簡単に説明しながら、通路を進んでいく。そして、再びあの巨大な動力炉が鎮座する広間へとたどり着いた。
「うわぁ…!」
「なんだ、このデカい機械は…!?」
シルフィとレナは、目の前に広がる異様な光景に、再び言葉を失う。
装置は、前回訪れた時と同じように沈黙を守っている。だが、俺は【万物解析】で、明らかな変化を感じ取っていた。
『対象: 古代動力装置(星脈炉?)
状態: 停止状態維持。しかし、内部残留魔力の【不安定な揺らぎ】が増大傾向。炉心部のエネルギー封印が弱まっている可能性? 微弱な共振現象(機械音の発生源?)を観測。』
「…やはり、何かが起きている」
内部の魔力状態が、以前よりも不安定になっている。そして、あの微かな機械音も、気のせいではなく、前回よりもわずかに大きくなっているようだ。これが、地上で観測された微震の原因なのだろう。
「カイト、この機械、なんだか…すごく強い力を感じる。でも、少し怖い感じもする…」
シルフィが、魔力の流れに敏感なエルフとしての感覚で、装置の異様さを捉えている。
「ああ。下手に触れると危険だ。今は近づかない方がいい」
俺は二人に改めて注意を促した。
地震の原因は、この動力炉の不安定化にある可能性が高い。だが、なぜ不安定になっているのか? その根本原因を突き止めなければ、解決には至らないだろう。
「奥へ進もう。前回俺が見つけた、『セクター7』と呼ばれる区画へ。そこに何か手がかりがあるかもしれない」
俺たちは動力室を後にし、以前俺が開けた金属製の重厚な扉へと向かった。扉の上には、今もくっきりと『セクター7』の文字が刻まれている。扉の向こうからは、前回よりもさらに濃密な魔力の気配と、そして、何か…生き物の気配とは違う、形容しがたい未知の気配が漂ってくる気がした。
三人の間に、緊張が走る。この先に何が待ち受けているのか、全く予想がつかない。
俺はシルフィとレナと顔を見合わせ、互いの覚悟を確認するように頷き合った。そして、意を決して、再び『セクター7』の扉へと手をかけた。
ゴトン…
重い金属音と共に、扉がゆっくりと開いていく。その先に広がるのは、未知なる遺跡の深奥。鳴動する大地の謎を解き明かすための、本格的な探索が、今、始まろうとしていた。
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