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第67話:情報と脱出、残された警鐘
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ピ…ピ…ピ…
情報保管庫の奥で鳴り始めた無機質なアラート音は、徐々にその間隔を狭め、俺たちの焦燥感を煽る。そして、奥へと続く扉の向こうから聞こえてきた重い足音が、急速に近づいてくる!
「カイト! もう少しだ! なんとかしろ!」
レナがナイフを構え、扉を睨みつけながら叫ぶ。
「分かってる!」
俺は残された魔力を振り絞り、『星見の欠片』へのデータコピーを加速させる。遺跡の構造図、エネルギーシステムの概要、事故記録、来訪者…。断片的でもいい、とにかく情報を! 魔力が底を突きかけ、意識が遠のきそうになる。
その時、凄まじい衝撃音と共に、奥の金属扉が内側から吹き飛ばされた!
ガッシャァァン!!
土煙の中から現れたのは、先ほど遭遇した小型ゴーレムよりも一回りも二回りも巨大な、銀色の金属ゴーレムだった。身長は3メートル近くあり、その両腕は無骨なアームキャノンのような形状をしている。赤い単眼センサーが、部屋の中を素早くスキャンし、俺たちを捉えた。
「……侵入者、確認。レベル2脅威と判定。排除シークエンス、実行」
抑揚のない機械音声が響き渡る。中型警備ゴーレム。明らかに、小型のものとは比較にならない戦闘能力を持っていそうだ。
「させるかよっ!」
ゴーレムがアームキャノンを構えるより早く、レナが動いた! 床を蹴り、一瞬でゴーレムの懐へと飛び込む!
「カイトから離れろ!」
その拳が、ゴーレムの胴体部分に叩き込まれる!
ゴウンッ!
重い金属音が響くが、ゴーレムはわずかに後退しただけで、目立った損傷はないようだ。装甲が厚い!
「風よ!」
シルフィも即座に反応し、風の刃をゴーレムの関節部やセンサー部分目掛けて放つ! しかし、ゴーレムは巧みに腕でガードし、風の刃は硬い装甲に弾かれてしまう。
「警告。抵抗は無意味。投降セヨ」
ゴーレムは機械音声を響かせながら、アームキャノンをレナとシルフィに向けた。先端が赤熱し、エネルギーが充填されていく!
「まずい、避けろ!」俺が叫ぶ!
レナとシルフィは左右に跳んで回避! 直後、ゴーレムのアームキャノンから高熱のエネルギー弾が発射され、彼女たちがいた場所の床を溶解させた!
(なんて威力だ…!)
「カイト! まだか!?」レナが叫ぶ。
「…よし、終わった!」
ギリギリのタイミングで、最重要と判断した情報のコピーが完了した! 俺はふらつきながらも立ち上がり、『星見の欠片』を懐にしまう。
「撤退するぞ! ここは危険すぎる!」
俺は二人に叫び、すぐさま出口へと走り出した!
「待テ! 侵入者!」
ゴーレムが追撃してくる! その巨体に見合わぬ速度で、重い足音を響かせながら迫ってくる!
「あたしが足止めする! 先に行け!」
レナが殿(しんがり)を買って出ようとするが、俺はそれを制した。
「いや、三人で切り抜ける! シルフィ、風で援護を!」
「はいっ! 【ゲイル・ストリーム】!」
シルフィが杖を振るうと、通路に強力な向かい風が発生! ゴーレムの巨体が風圧に煽られ、その速度が鈍る!
「レナ、行くぞ!」
俺たちはその隙に通路を駆け抜ける! さらに、俺は空間収納ボックスから、以前テル村で作っておいた煙幕玉の試作品(唐辛子などを混ぜた特製品だ)を取り出し、通路に投げつけた!
ボッ!
刺激臭を伴う濃い煙が通路に充満し、ゴーレムの視界とセンサーを一時的に麻痺させるはずだ!
俺たちはそのまま、動力室、最初の広間、そして祠へと続く階段へと、一気に駆け抜けた。背後からは、ゴーレムの怒りに満ちたような機械音と、壁にぶつかるような衝撃音が聞こえていたが、その音は徐々に遠ざかっていく。どうやら、追撃を振り切ることに成功したようだ。
息を切らし、汗だくになりながら、俺たちはついに祠の階段を駆け上がり、地上へと生還した。夕暮れの森の空気が、これほどまでに美味しく感じられたことはない。
「はぁ…はぁ…なんとか、逃げ切れたか…」レナが地面にへたり込む。
「カイトさん、お怪我は…?」シルフィが、俺の魔力切れによるふらつきを心配してくれる。
「ああ、大丈夫だ…それより、二人とも、よくやってくれた」
俺たちは互いの無事を確認し合い、安堵の息をついた。
だが、その時、俺の脳裏には、アストラル研究所のさらに深部、おそらくは中央制御室のような場所の光景が、ふと浮かんだ気がした。
―――
システムアラート:セクター7、情報保管庫にて未許可アクセス及びデータ流出を確認。
セキュリティプロトコル更新:脅威レベル3に移行。
対象識別:魔力パターン記録完了。コードネーム『解析者(アナライザー)』と仮称。
対抗措置:警備システム再起動。追跡プロトコル、スタンバイ。
優先指令:対象『解析者』及び関連個体(エルフ型、獣人型)の捕獲、もしくは排除。
―――
それは幻覚だったのかもしれない。だが、俺には、遺跡の奥深くで、何かが静かに、しかし確実に目覚め、俺たちを新たな脅威として認識したような、そんな不気味な予感がした。
手に入れた情報の断片と、引き換えに呼び覚ましてしまったかもしれない更なる危険。俺は疲労困憊の身体に鞭打ち、立ち上がった。
「…村に戻ろう。そして、備えなければならない」
遺跡の謎は、まだ始まったばかりだ。そして、それは、俺たちが想像する以上に、根深く、危険なものなのかもしれない。俺たちは、手に入れたばかりの古代の知識の欠片を胸に、再びテル村への帰路についた。背後には、静かに、しかし確実に蠢き始めた、古代遺跡の影を残して。
情報保管庫の奥で鳴り始めた無機質なアラート音は、徐々にその間隔を狭め、俺たちの焦燥感を煽る。そして、奥へと続く扉の向こうから聞こえてきた重い足音が、急速に近づいてくる!
「カイト! もう少しだ! なんとかしろ!」
レナがナイフを構え、扉を睨みつけながら叫ぶ。
「分かってる!」
俺は残された魔力を振り絞り、『星見の欠片』へのデータコピーを加速させる。遺跡の構造図、エネルギーシステムの概要、事故記録、来訪者…。断片的でもいい、とにかく情報を! 魔力が底を突きかけ、意識が遠のきそうになる。
その時、凄まじい衝撃音と共に、奥の金属扉が内側から吹き飛ばされた!
ガッシャァァン!!
土煙の中から現れたのは、先ほど遭遇した小型ゴーレムよりも一回りも二回りも巨大な、銀色の金属ゴーレムだった。身長は3メートル近くあり、その両腕は無骨なアームキャノンのような形状をしている。赤い単眼センサーが、部屋の中を素早くスキャンし、俺たちを捉えた。
「……侵入者、確認。レベル2脅威と判定。排除シークエンス、実行」
抑揚のない機械音声が響き渡る。中型警備ゴーレム。明らかに、小型のものとは比較にならない戦闘能力を持っていそうだ。
「させるかよっ!」
ゴーレムがアームキャノンを構えるより早く、レナが動いた! 床を蹴り、一瞬でゴーレムの懐へと飛び込む!
「カイトから離れろ!」
その拳が、ゴーレムの胴体部分に叩き込まれる!
ゴウンッ!
重い金属音が響くが、ゴーレムはわずかに後退しただけで、目立った損傷はないようだ。装甲が厚い!
「風よ!」
シルフィも即座に反応し、風の刃をゴーレムの関節部やセンサー部分目掛けて放つ! しかし、ゴーレムは巧みに腕でガードし、風の刃は硬い装甲に弾かれてしまう。
「警告。抵抗は無意味。投降セヨ」
ゴーレムは機械音声を響かせながら、アームキャノンをレナとシルフィに向けた。先端が赤熱し、エネルギーが充填されていく!
「まずい、避けろ!」俺が叫ぶ!
レナとシルフィは左右に跳んで回避! 直後、ゴーレムのアームキャノンから高熱のエネルギー弾が発射され、彼女たちがいた場所の床を溶解させた!
(なんて威力だ…!)
「カイト! まだか!?」レナが叫ぶ。
「…よし、終わった!」
ギリギリのタイミングで、最重要と判断した情報のコピーが完了した! 俺はふらつきながらも立ち上がり、『星見の欠片』を懐にしまう。
「撤退するぞ! ここは危険すぎる!」
俺は二人に叫び、すぐさま出口へと走り出した!
「待テ! 侵入者!」
ゴーレムが追撃してくる! その巨体に見合わぬ速度で、重い足音を響かせながら迫ってくる!
「あたしが足止めする! 先に行け!」
レナが殿(しんがり)を買って出ようとするが、俺はそれを制した。
「いや、三人で切り抜ける! シルフィ、風で援護を!」
「はいっ! 【ゲイル・ストリーム】!」
シルフィが杖を振るうと、通路に強力な向かい風が発生! ゴーレムの巨体が風圧に煽られ、その速度が鈍る!
「レナ、行くぞ!」
俺たちはその隙に通路を駆け抜ける! さらに、俺は空間収納ボックスから、以前テル村で作っておいた煙幕玉の試作品(唐辛子などを混ぜた特製品だ)を取り出し、通路に投げつけた!
ボッ!
刺激臭を伴う濃い煙が通路に充満し、ゴーレムの視界とセンサーを一時的に麻痺させるはずだ!
俺たちはそのまま、動力室、最初の広間、そして祠へと続く階段へと、一気に駆け抜けた。背後からは、ゴーレムの怒りに満ちたような機械音と、壁にぶつかるような衝撃音が聞こえていたが、その音は徐々に遠ざかっていく。どうやら、追撃を振り切ることに成功したようだ。
息を切らし、汗だくになりながら、俺たちはついに祠の階段を駆け上がり、地上へと生還した。夕暮れの森の空気が、これほどまでに美味しく感じられたことはない。
「はぁ…はぁ…なんとか、逃げ切れたか…」レナが地面にへたり込む。
「カイトさん、お怪我は…?」シルフィが、俺の魔力切れによるふらつきを心配してくれる。
「ああ、大丈夫だ…それより、二人とも、よくやってくれた」
俺たちは互いの無事を確認し合い、安堵の息をついた。
だが、その時、俺の脳裏には、アストラル研究所のさらに深部、おそらくは中央制御室のような場所の光景が、ふと浮かんだ気がした。
―――
システムアラート:セクター7、情報保管庫にて未許可アクセス及びデータ流出を確認。
セキュリティプロトコル更新:脅威レベル3に移行。
対象識別:魔力パターン記録完了。コードネーム『解析者(アナライザー)』と仮称。
対抗措置:警備システム再起動。追跡プロトコル、スタンバイ。
優先指令:対象『解析者』及び関連個体(エルフ型、獣人型)の捕獲、もしくは排除。
―――
それは幻覚だったのかもしれない。だが、俺には、遺跡の奥深くで、何かが静かに、しかし確実に目覚め、俺たちを新たな脅威として認識したような、そんな不気味な予感がした。
手に入れた情報の断片と、引き換えに呼び覚ましてしまったかもしれない更なる危険。俺は疲労困憊の身体に鞭打ち、立ち上がった。
「…村に戻ろう。そして、備えなければならない」
遺跡の謎は、まだ始まったばかりだ。そして、それは、俺たちが想像する以上に、根深く、危険なものなのかもしれない。俺たちは、手に入れたばかりの古代の知識の欠片を胸に、再びテル村への帰路についた。背後には、静かに、しかし確実に蠢き始めた、古代遺跡の影を残して。
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