追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ

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第82話:共鳴する魂、エリスの力

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マスターコアの猛攻は苛烈を極め、俺たちは満身創痍になりながらも、必死で耐え続けていた。レナの赤い毛並みは返り血と自身の血で濡れ、呼吸は荒く、動きにも明らかな陰りが見える。シルフィも、顔面蒼白で杖にすがるように立ち、今にも倒れそうだ。彼女の風の盾は、もはや形を保つのがやっとで、闇の波動が防御網を掠めるたびに、俺たちの体にも衝撃が走る。俺自身も、魔力は枯渇寸前、体力も限界に近い。

(くそっ…このままでは…!)

それでも、俺は諦めなかった。【万物解析】の能力を、これまでにないレベルまで極限まで集中させる。マスターコアの複雑怪奇なエネルギー循環パターン、その僅かな揺らぎ、瞬間的な隙を捉えようと、脳が焼き切れそうなほどの負荷をかけ続ける。

そして、ついに見つけた。ほんの一瞬。マスターコアが周囲の汚染された魔力を吸収し、それを破壊的な闇の波動へと変換・放射する、そのサイクルの切り替わりの瞬間に生じる、極めて短い「澱み」。エネルギーの流れが、ほんの一瞬だけ、不安定になるポイント。そこが、唯一にして最大の弱点!

だが、その「澱み」が現れるのは、ほんの一瞬だ。通常の攻撃では、タイミングを合わせることすら不可能に近い。どうすれば…?

思考が袋小路に入りかけた、その時だった。

「あ……ああ……っ!!」

後方で戦いを見守っていたエリスから、苦痛に満ちた声が漏れた。彼女は胸を押さえ、その場にうずくまる。だが、それは単なる苦痛ではなかった。彼女の身体から、これまでとは比較にならないほどの、淡く、しかし力強く、そして何よりも清浄な光が溢れ出し始めたのだ!

(エリス!? これは…!?)

俺の【万物解析】が捉えた。エリスの中に眠っていた「エーテル感応(極高)」の能力が、俺が極限まで高めた【万物解析】の波動(おそらくはエーテルエネルギーに微かに干渉する性質を持つ)と、マスターコアが放つ強大な汚染エーテルエネルギーという、二つの強大な力に挟まれたことで、強制的に覚醒を促されたのだ!

エリスから放たれた光――それは、汚染されていない、純粋なエーテルエネルギーの清らかな波動だった。その波動は、瞬く間に広間全体へと広がり、マスターコアが放つ禍々しい闇のエネルギーと激しく共鳴し、そして干渉し始めた!

ギギギギギ………!!!

マスターコアが、まるで苦しむかのように、これまでとは違う不協和音を発する! その禍々しい輝きが揺らぎ、闇のエネルギーの放射が明らかに減衰していく! 周囲で蠢いていたシャドウ・サーヴァントたちも、浄化の光を浴びたかのように苦しげに身悶えし、その姿が不安定に掻き消えそうになっている!

(なんだ…この力は…!? エリス…!)

驚きと同時に、俺は理解した。これが、千載一遇の、そしておそらくは最後の好機(チャンス)だと! エリスが無意識に放った純粋なエーテルが、マスターコアの力を一時的に中和し、弱体化させているのだ!

「今しかないッ!! 総攻撃を仕掛けるぞ!!」

俺は最後の力を振り絞って叫んだ!

「レナ! コアへ突っ込め! 全力で!!」
「シルフィ! 残り全ての魔力で援護を! 奴を拘束しろ!」

「おおおおおおっ!!」
レナが、まるで呼応するかのように雄叫びを上げる! 傷ついた体も忘れ、月光狼の血を燃え上がらせ、弱体化したシャドウ・サーヴァントの群れを蹴散らしながら、マスターコアへと一直線に突進する!

「風よ! 光よ! 我が声に応えよ! 【テンペスト・プリズム】!!」
シルフィもまた、杖を天に掲げ、限界を超えた魔力を解き放つ! 彼女の周囲に風と光の渦が巻き起こり、浄化の力を帯びた嵐となってマスターコアへと殺到! 嵐はシャドウを薙ぎ払い、マスターコア本体の動きを激しく拘束する!

そして、俺自身も!

(タイミングは、今だ!)

【万物解析】で捉えた、マスターコアのエネルギー循環の「澱み」。防御が最も薄くなる、その一瞬を狙う!

俺は短剣を構え、残された全ての魔力を刃に込める! 刃が、俺自身の決意を映すかのように、白銀の輝きを放つ!

「行かせてもらうぞ…!」

レナと共に、弱体化し、シルフィの魔法に動きを封じられたマスターコアの懐へと、俺は最後の突撃を敢行する!

エリスの覚醒によって生まれた、奇跡のような好機。三人の力と魂を一つにした、渾身の総攻撃。

辺境の運命を、そして世界の未来をも左右するかもしれない最終決戦は、予測不能な展開を経て、ついに、そのクライマックスを迎えようとしていた!

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