私、魔王軍の四天王(紅一点)なんですが、敵であるはずの勇者が会うたびに口説いてきます

夏見ナイ

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第45話 集う仲間たち

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父との対峙を終えたアルフレッドの元に、夜の闇に紛れて、三つの人影が訪れた。
イリーナ、ダリウス、そしてエルザ。彼の、かけがえのない仲間たちだった。

「……話は、聞かせてもらったわ」
部屋に入るなり、イリーナが切り出した。その声は、僅かに震えていたが、その瞳には強い意志の光が宿っている。衛兵たちの会話から、国王とアルフレッドのやり取りを、彼女たちは全て知っていたのだ。

「王位を捨ててでも、彼女を救いに行く。本気なのね、アルフレッド」

「ああ、本気だ」
アルフレッドは、静かに頷いた。「これは、僕が選んだ道だ。君たちを、巻き込むわけにはいかない。ここからは、僕一人の戦いだ」

彼は、仲間たちを危険な道連れにしないために、あえて突き放すような言葉を口にした。反逆者として、魔王城に単身乗り込む。それは、九死に一生を得るどころか、十死零生の無謀な賭けだ。

しかし、彼の仲間たちは、そんな言葉で引き下がるような、半端な覚悟の持ち主ではなかった。

「何を、水臭いことを言っている」
腕を組んだまま黙って話を聞いていたダリウスが、低い声で言った。「俺の剣は、勇者アルフレッドに捧げると誓ったはずだ。あなたが王太子であろうが、反逆者になろうが、その誓いが変わることはない」

「そうですわ」
エルザも、やれやれと肩をすくめながら、続けた。「そもそも、あなた一人で魔王城に乗り込んで、一体何ができるというのです? 猪突猛進も、大概になさい。あなたの無茶を止めて、正しい道筋を示すのが、我々参謀の役目でしょう?」

その言葉は、ぶっきらぼうで、少し皮肉っぽかったが、その奥には揺るぎない信頼と、深い友情が込められていた。

そして、最後にイリーナが、アルフレッドの前に一歩進み出た。
彼女は、その澄んだ瞳で、まっすぐに彼の目を見つめると、静かに、しかしはっきりと告げた。

「あなた一人で行かせません」

その声には、聖女としての慈愛と、そして、一人の幼馴染としての、譲れない想いが込められていた。

「あなたは、いつもそうなのです。全てを一人で背負い込んで、誰にも頼ろうとしない。でも、もうそんなことはさせません。あなたの背負うものが、愛であろうと、王務であろうと、世界そのものであろうと……私たちも、半分、いえ、四分の一ずつ、一緒に背負います」

彼女は、そっと自分の胸に手を当てた。

「私は、聖女として、あなたの魂が光を失わないよう、最後まで見守ると誓いました。その誓いを、ここで違えるわけにはいきません。それに……」
彼女は、少しだけ頬を赤らめ、はにかむように微笑んだ。「あなたがいないパーティーなんて、退屈で仕方がありませんから」

仲間たちの、温かく、そして揺るぎない言葉。
それは、孤独な戦いを覚悟していたアルフレッドの心に、温かい光となって染み渡っていった。

彼は、自分が一人ではないことを、改めて思い知らされた。
この仲間たちがいる限り、どんな絶望的な状況でも、決して諦めることはないだろう。

「……みんな」
彼の声が、感謝に震えた。「ありがとう。君たちは、僕の、最高の仲間だ」

彼は、仲間たち一人一人と、固い視線を交わした。
そこにはもう、言葉は必要なかった。
同じ目的を見据え、同じ覚悟を共有した、真の仲間たちの間に、かつてないほど強い絆が結ばれた瞬間だった。

「さて、と」
エルザが、現実的な問題へと話を切り替えた。「感傷に浸るのは、全てを終わらせてからにして、具体的な作戦を立てませんこと? 敵は、魔王城。正面から乗り込むのは、愚の骨頂ですわ」

「ああ、そのことなんだが……」
アルフレッドは、懐から一枚の羊皮紙を取り出した。レヴィから渡された、魔王城の詳細な地図だ。

「これを見てくれ。信頼できる筋から、手に入れた」

地図を広げた仲間たちは、そのあまりの精密さに目を見開いた。
罠の位置、警備兵の巡回ルート、そして、公にはされていない秘密の通路までが、詳細に記されている。

「これは……一体、どこから?」
イリーナの問いに、アルフレッドは静かに答えた。

「魔王軍の内部に、協力者がいる」

その事実は、彼らにとって大きな希望となった。
たとえそれが、敵である四天王の一人だとしても、今はその情報を信じるしかない。

「この地図によれば、城の地下水路から、内部に侵入することが可能なようだ」
アルフレッドは、地図の一点を指し示した。「そこから、リディアが囚われているという最深部、『魔力の炉心』を目指す。道中は、困難を極めるだろう。だが、これが最も確実で、唯一の道だ」

彼の言葉に、誰も異論を唱える者はいなかった。
道筋は、示された。
あとは、覚悟を決めて、進むだけだ。

「決行は、王国軍が総攻撃を開始する、明日未明」
アルフレッドは、最終的な決断を下した。「軍の動きが、僕たちの行動を隠す、絶好の陽動になるだろう」

その夜、彼らは誰にも気づかれることなく、王城を抜け出した。
たった四人の、小さなパーティー。
しかし、その一人一人が、一騎当千の実力と、世界を救うという揺るぎない覚悟を胸に宿していた。

彼らが目指すは、闇に閉ざされた敵の本拠地、魔王城。
その先で待ち受けるのが、いかなる困難と絶望であろうとも、彼らの歩みは、もう止まらない。

愛する人を、そして世界を救うため。
勇者とその仲間たちの、最後の戦いが、静かに、しかし確かに、始まろうとしていた。
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