私、魔王軍の四天王(紅一点)なんですが、敵であるはずの勇者が会うたびに口説いてきます

夏見ナイ

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第48話 聖剣の誓い

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王城を抜け出したアルフレッドたちは、夜の闇に紛れて、魔王領へと続く険しい山道を進んでいた。
月明かりだけが頼りの道行きは、困難を極めた。しかし、四人の足取りに、迷いは一切なかった。

「……見えてきた」

先頭を歩いていたダリウスが、低く呟いた。
木々の切れ間から、遥か前方に、禍々しくも荘厳なシルエットが浮かび上がっている。
天を突く漆黒の尖塔。魔王城だ。

その姿を視界に捉えた瞬間、アルフレッドは足を止めた。
彼は、腰に佩いた聖剣の柄に、そっと手を触れる。

(待っていてくれ、リディア。必ず、君を迎えに行く)

心の中で、強く誓う。
彼女が、あの城のどこかで、苦しんでいる。そう思うだけで、胸が張り裂けそうだった。
しかし、感傷に浸っている時間はない。ここからは、一瞬の油断も許されない、本当の戦場だ。

「アルフレッド」
イリーナが、彼の隣に並び立った。「大丈夫?」

「ああ」
アルフレッドは、短く頷いた。「僕は、大丈夫だ。それよりも、皆に改めて礼を言わせてくれ。僕の無謀な決断に、ここまでついてきてくれたこと、心から感謝する」

「今更、水臭いですわ」
エルザが、ふわりと微笑んだ。「私たちは、一心同体。あなたの見る未来を、私たちも見てみたい。ただ、それだけのことです」

「そうだ」と、ダリウスも頷く。「それに、魔王の世界再創造などという計画を、黙って見過ごすことは、俺の騎士道が許さん」

仲間たちの変わらぬ信頼に、アルフレッドの心は温かくなった。
自分は、一人ではない。この仲間たちがいれば、どんな困難も乗り越えられる。

彼は、ゆっくりと聖剣を抜き放った。
白銀の刀身が、月明かりのない暗闇の中で、自ら淡い光を放ち始める。その光は、まるで彼の決意に呼応するかのように、静かで、しかし力強い輝きを宿していた。

「聖剣よ」
アルフレッドは、剣に語りかけるように、静かに言った。「僕に、力を貸してくれ。僕が信じる正義を、そして、愛する人を守り抜くための、力を」

彼の言葉に応えるかのように、聖剣の輝きが、一際強くまたたいた。
今まで見たこともないような、眩いばかりの光。それは、アルフレッドの体から溢れ出す聖なる力と共鳴し、周囲の闇を完全に払拭するほどの輝きを放った。

ウォォォン……

聖剣が、低く、しかし心地よい共鳴音を発する。
それは、剣に宿る古代の意志が、アルフレッドの覚悟を認め、その力を完全に解放した証だった。

「これは……」
イリーナが、その神々しい光景に息を呑む。

アルフレッドは、自らの内に満ちる、かつてないほどの力の奔流を感じていた。
絶望の淵から這い上がり、愛と責務、その全てを背負う覚悟を決めたことで、彼は勇者として、さらなる高みへと至ったのだ。

聖剣の光が、ゆっくりと収束していく。
しかし、その刀身に宿る輝きは、以前とは比べ物にならないほど、強く、そして清らかになっていた。

「行こう」

アルフレッドは、聖剣を構え直し、仲間たちに告げた。
その声には、もう一切の迷いも、不安もなかった。
あるのはただ、リディアを救い出し、魔王を討つという、絶対的な確信だけ。

彼は、仲間たちに改めて向き直ると、深く、深く頭を下げた。

「この戦いは、僕個人の我儘から始まった。だが、もはやそれだけではない。世界の運命を賭けた、聖戦だ。どうか、皆の命を、僕に預けてほしい」

その言葉に、イリーナたちは、静かに、しかし力強く頷き返した。

「元より、そのつもりです」
「あなたの背中は、我々が守ります」
「派手にやりましょう。歴史に残る、大立ち回りをね」

四つの魂が、完全に一つになった。
彼らは、互いの顔を見合わせ、静かに微笑み合った。

これから始まるのは、絶望的な戦力差の中での、無謀な潜入作戦。
しかし、彼らの心に、恐怖はなかった。
あるのは、夜明け前の、静かな高揚感だけ。

アルフレッドは、再び魔王城へと視線を向けた。
その漆黒の城が、まるで巨大な獣のように、口を開けて彼らを待ち構えているように見えた。

「リディア」

彼は、もう一度、愛しい人の名を呟いた。
今度は、心の中ではなく、はっきりと声に出して。

「君を縛る、全ての呪いを、この剣が断ち切ってみせる」

それは、聖剣に刻まれた、破られることのない誓い。
勇者が、その全てを賭けて交わした、愛の誓約。

闇夜の中、聖剣の輝きだけが、彼らの進むべき道を、まっすぐに照らし出していた。
物語は、ついに決戦の地へと、その歩みを進める。
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