曲がり角でぶつかった少女に回復魔法を使ったら不治の病と盲目なのを治してしまってめちゃくちゃ懐かれてた

夏見ナイ

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第61話 史上最高のプロポーズ作戦会議

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ルナに「奥さんにしたい」と告げたあの夜から、俺の心は一つの確かな決意で満たされていた。
彼女にプロポーズをしよう。
この世界で一番彼女を幸せにする言葉を、最高の形で贈ろう。
その決意は、俺の日常に新たな目的と輝きを与えてくれた。

もう俺は迷わない。
「聖者」と呼ばれようと、貴族として生きることになろうと関係ない。
俺の進むべき道はただ一つ。
ルナの隣で、彼女と共に未来を歩んでいくことだ。
そのための最初の、そして最も重要な一歩。
それがプロポーズだった。

だが、すぐに一つの問題に直面した。
「最高のプロポーズ」とは一体どんなものだろうか。
前世でも恋愛経験ゼロの俺には皆目見当がつかない。指輪を渡して結婚してくださいと言うだけでは、あまりにも味気ない気がした。
彼女が一生の思い出としてその胸に刻み込めるような、特別で忘れられない一日にしたい。

一人で考えていても埒が明かない。
俺は、この壮大な計画を成功させるために最強の協力者を募ることに決めた。
彼女のことを誰よりも深く愛し、そして絶大な権力を持つ人物。
そして、俺たちの関係を誰よりも応援してくれている頼れる友人。
この二人をおいて他に考えられなかった。



その日の放課後、俺はルナに「少し野暮用ができたから」とだけ告げ、一人シルフィード公爵邸を訪れていた。
もちろんアルフォンス公爵に会うためだ。
応接室で待っていると、彼はいつもの威厳に満ちた姿で現れた。だが、その瞳には「何かあったのか?」という心配の色が浮かんでいる。

「して、ユウキ。わざわざ私を訪ねてくるとは、何か緊急の用件かな?」
俺は居住まいを正した。
そして深呼吸を一つすると、単刀直入に用件を切り出した。

「公爵様。…いえ、お義父さん。一つお願いがあって参りました」

俺が初めて口にした「お義父さん」という呼び名。
その一言にアルフォンス公爵はびくりと肩を震わせ、大きく目を見開いた。
そして何かを察したように、ゴクリと喉を鳴らす。

俺は彼の真剣な眼差しを受け止めながら、はっきりと告げた。
「ルナにプロポーズをしたいと思っています。そのために、お義父さんのお力をお貸しいただけないでしょうか」

一瞬の静寂。
そして次の瞬間、アルフォンス公爵の威厳は完全に崩壊した。

「おお…おおおおおおおおおおおおおおおおお!」

彼の瞳からダムが決壊したかのように涙が溢れ出した。
その巨体は感動のあまりわなわなと震えている。
「この日を…! このアルフォンス、どれほど待ちわびたことか…!」
彼はその場に崩れ落ちるように膝をつくと、もはや嗚咽とも絶叫ともつかない声で天を仰いだ。

「我が息子よ! よくぞ、よくぞ言った! でかした!」
彼はよろよろと立ち上がると俺の元へ駆け寄り、先日の祝宴の時以上に力強く俺に抱きついてきた。
「もちろん! 協力するに決まっているだろう! 我がシルフィード家の全てを、いや、この私の人生の全てを賭けて君のプロポーズを成功させてみせるぞ!」

そのあまりにも熱烈な反応。
俺は彼の腕の中で喜びと、そして少しばかりの窒息の危機を感じていた。
「あ、ありがとうございます…! ですが、まずは落ち着いて…!」
「落ち着いてなどいられるか! さあ、すぐにでも王家に掛け合い、国中を挙げての盛大な婚約式典を…!」
「いえ! まずはプロポーズです! 順序が違います!」

暴走しかける義父(仮)を、俺は必死に宥めすかした。
彼の親バカっぷりは想像以上だったが、これほど頼もしい味方もいないだろう。



そしてもう一人の協力者。
翌日の昼休み、俺はクラリスを学園の屋上へと呼び出していた。
ルナには「クラリスさんに、少し勉強のことで相談があるから」と言ってある。彼女は「まあ、感心ですわ!」と少しも疑っていない様子だった。

「それで、ユウキ。わたくしに一体何のご用ですの? ルナに隠れて二人きりだなんて…あらぬ誤解を招きますわよ」
クラリスは腕を組んで、少しだけ意地悪そうに言った。
俺はそんな彼女にまっすぐに向き直った。
「クラリスさん。君にしか頼めないことがあるんだ」

俺のただならぬ雰囲気を察したのか、彼女の表情からからかうような色が消えた。
俺はアルフォンス公爵に話したのと同じように、自分の決意を彼女に伝えた。
「ルナにプロポーズしようと思う。最高の形で彼女に想いを伝えたいんだ。だから、君の力を貸してほしい」

俺の言葉にクラリスは翠色の瞳を信じられないといった様子で大きく見開いた。
「プ、プロポーズ…ですって!?」
その声は上擦っていた。
「ま、まだ早いですわ! 交際を始めたばかりではありませんの! 順序というものが…!」
彼女は顔を真っ赤にしながら狼狽している。それは親友のあまりにも早い展開に動揺しているようでもあり、どこか寂しがっているようでもあった。

だが、俺の真剣な瞳を見て彼女もまた俺の決意が揺るぎないものであることを理解したようだった。
彼女はふぅと一つ大きなため息をついた。
そして次の瞬間、その顔にはいつもの自信に満ち溢れた応援団長の笑みが浮かんでいた。

「…仕方ありませんわね」
彼女は髪をかき上げながら不敵に言った。
「親友の人生で最も輝かしい瞬間ですもの。このクラリス・フォン・ヴァレンシュタインが、中途半端な演出を許すはずがありませんわ」
その瞳には、すでに創作意欲の炎がメラメラと燃え盛っている。
「お任せなさい! 歴史上のどんな恋物語にも勝る史上最高のプロポーズを、このわたくしが完璧に演出してさしあげますわ!」

こうして俺の最強の協力者たちが揃った。
その日の夜、俺とアルフォンス公爵、そしてクラリスの三人はシルフィード公爵邸の書斎に秘密裏に集結していた。
テーブルの上には王都の地図や様々な資料が広げられている。
「第一回・史上最高のプロポーズ作戦会議」の始まりだ。

「うむ! やはり舞台は王城の『天空のバルコニー』が良いだろう! そこで国王陛下に立会人となっていただき、花火が打ち上がる中で愛を誓うのだ!」
アルフォンス公爵が国家事業レベルの壮大な案をぶち上げる。

「いえ、お義父様! 派手さよりもロマンチックな演出が不可欠ですわ!」
クラリスがそれに待ったをかける。
「夜の湖に無数の魔法の光を浮かべ、花びらでできた小舟で彼が彼女を迎えに行くのです! そして月明かりの下で愛の言葉を…!」
彼女の頭の中は完全に少女漫画の世界だ。

二人のあまりにもスケールが大きく、そして現実離れしたアイデアの応酬。
その間で俺はただただ頭を抱えることしかできなかった。

「あの…お二人とも、少し落ち着いて…」
俺の弱々しい声は、二人の熱弁にかき消されていく。

史上最高のプロポーズへの道は、どうやら想像以上に前途多難なものになりそうだった。
俺はこの二人の暴走を止めつつ、無事にルナに想いを届けることができるのだろうか。
ルナに気づかれずにこの極秘作戦を遂行するという、新たなドキドキ感を胸に。
俺の人生を賭けた新たな挑戦が、今始まった。
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