ログインしたら人外でした。 ~VRMMOで最恐の魔物になる~

夏見ナイ

文字の大きさ
37 / 76

第三十七話 竜の涙、灯りし刻

しおりを挟む
マグマ・ヒュドラとの死闘を制し、「竜の涙」を手に入れたオブシディアンは、休む間もなく活火山の溶岩洞窟を後にした。目指すは、第二の試練の舞台である古代の炉。ヒュドラから吸収した膨大な経験値によってレベルは18に上がり、全身に更なる力が漲(みなぎ)るのを感じていた。特に【自己再生(小) Lv.1】スキルは、戦闘中のダメージだけでなく、この灼熱地帯で常に受けている微細な環境ダメージすらも自動で修復してくれるため、継戦能力と探索効率を大幅に向上させていた。

(この力があれば、あの炉での試練も乗り越えられるはずだ)

オブシディアンは【影潜行 Lv.2】を発動し、火山地帯を来た道とは違うルートで進む。核(コア)に蓄積された知識と【蟲の共鳴 Lv.1】による広範囲索敵を組み合わせ、最短かつ安全な経路を選択する。途中、遭遇したファイア・エレメンタル(Lv.17)の群れには、新たに獲得した【火炎ブレス Lv.1】を試してみた。オブシディアンの不定形の身体の一部が竜の顎のように変形し、そこから灼熱の奔流が放たれる。威力はマグマ・ヒュドラのブレスには及ばないものの、それでもレベル17のエレメンタルを複数まとめて焼き払うには十分な威力だった。MP消費は大きいが、決定的な攻撃手段がまた一つ増えた。

やがて、オブシディアンは再び古代の炉があったドーム状の空間へとたどり着いた。PKギルド「スカル・ブレイド」との戦闘の痕跡は、溶岩の熱によってか、あるいは時間経過によるものか、ほとんど消え失せていた。中央の巨大な炉は静かに熱を放ち、その上に吊るされていた黒い心臓は、オブシディアンがエネルギーを吸収し尽くしたためか、今はただの冷たい金属塊となっている。

(さて、どうやって「竜の涙を灯す」のか…)

オブシディアンは、試練の石碑にあった言葉を反芻する。「灼熱の心臓にて竜の涙を灯せ」。この「灼熱の心臓」とは、やはりこの炉そのもの、あるいは炉の中心にある燃え盛る溶岩を指すのだろうか?

オブシディアンはインベントリから「竜の涙」を取り出した。燃えるように赤い、脈打つ宝石。それは周囲の熱気を受けて、さらに強く輝きを増しているように見えた。

オブシディアンは、まず炉の周囲に設置されている祭壇らしき台座を調べた。古代文字が刻まれているが、【古代言語解読 Lv.2】をもってしても、まだ完全には意味を読み取れない。「捧げよ」「開かれん」といった断片的な言葉が見える程度だ。

次に、炉本体に近づく。炉の内部では、今も赤い溶岩が煮えたぎり、強烈な熱と魔力を放っている。ここに「竜の涙」を投入すれば良いのだろうか?

(しかし、それでは「灯す」という表現とは少し違う気がする…)

オブシディアンは、炉の側面を注意深く観察した。すると、一箇所だけ、竜の瞳のような形状をした窪みが設けられているのを発見した。その窪みの大きさは、「竜の涙」の大きさとほぼ一致している。

(ここか…!)

オブシディアンは、「竜の涙」を慎重にその窪みへと嵌め込んだ。瞬間、竜の涙は一際強く脈打ち、周囲の溶岩からエネルギーを吸収するように、眩いばかりの赤い光を放ち始めた。

ゴゴゴゴゴゴ…!

炉全体が激しく振動し、内部の溶岩が沸騰するように泡立ち始める。壁画に描かれていた古代文字が次々と点灯し、ドーム全体が共鳴するように唸りを上げた。そして、炉の中央から、巨大な炎の柱が天井に向かって噴き上がった。

炎の柱は、天井近くで収束し、一つの巨大な炎の渦を形成した。その渦の中心には、燃え盛る心臓のような形をした、純粋な火のエネルギー体が現れた。それは、ヘルハウンド・ロードが守っていた黒い心臓とは比較にならないほど強大で、神聖さすら感じさせるオーラを放っている。

(あれが…真の「灼熱の心臓」か…!)

『第二の試練を達成しました』
『称号【炎心を識る者】を獲得しました』
『次の試練の地への手がかりが示されます…』

システムメッセージと共に、オブシディアンの意識の中に、再び新たな地図情報が流れ込んできた。それは、深く暗い海の底、あるいは湖の底にあると思われる、巨大な海底遺跡のような場所を示していた。「深淵の祭壇」とは、おそらくその場所を指すのだろう。

同時に、灼熱の心臓から一条の光が伸び、オブシディアンの核(コア)へと注がれた。それは攻撃ではなく、祝福か、あるいは何らかの情報の伝達のようだった。

『スキル【火炎耐性(大)】が【火炎耐性(極)】に進化しました』
『スキル【ブレス耐性(中)】が【ブレス耐性(大)】に進化しました』
『スキル【エレメンタル知識(炎)】がLv.2に上がりました』
『スキル【古代言語解読(初級)】がLv.3に上がりました』

耐性がさらに向上し、知識スキルもレベルアップした。特に【古代言語解読 Lv.3】への到達は大きい。これで、日誌や断章の解読がさらに加速するだろう。

灼熱の心臓は、しばらくの間輝き続けた後、ゆっくりとその輝きを収束させ、再び炉の中の溶岩へと戻っていった。炉の振動も収まり、ドームには元の静けさが戻る。しかし、炉の側面に嵌め込まれた「竜の涙」は、今もなお静かに脈打ち、赤い光を放ち続けていた。

(第二の試練、クリア。そして、第三の試練の場所も判明した…)

オブシディアンは、達成感と共に、次なる目標への決意を新たにする。「深淵の祭壇」での「古き血の誓い」。それは一体何を意味するのか? 海底遺跡となれば、【水中活動】スキルが重要になるだろう。レベルアップも必要かもしれない。

オブシディアンは、古代の炉に一礼するような気持ちで(あくまでイメージだが)、その場を後にした。火山地帯を出て、次なる目的地である「深淵の祭壇」に関する情報を集める必要がある。

灼熱の大地を踏破し、古代竜の試練を二つまで達成したオブシディアン。その力と知識は、確実に世界の深奥へと近づいている。しかし、試練はまだ終わらない。そして、彼の存在を脅威と見なし、あるいは利用しようと企む者たちの影も、すぐそこまで迫っているのかもしれない。黒曜石の影は、次なる深淵を目指し、再び静かに動き始めた。

名前: オブシディアン
種族: アビス・スライム
称号: 影に潜む者 (効果向上), 墓守殺し, 深淵を宿す者, 竜殺し, 風を征す者, 炎心を識る者
所属: 未定義

【能力値】
体力: 31
魔力容量: 42
物理攻撃力: 9
物理防御力: 18
魔法攻撃力: 14
魔法防御力: 25
素早さ: 20

【スキル】
・捕食吸収 Lv.3
・影潜行 Lv.2
・微光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・嗅覚強化 Lv.1
・糸生成 Lv.2
・毒耐性(大) Lv.1
・竜鱗 Lv.2
・爪撃 Lv.2
・腐食溶解液 Lv.1
・物理耐性(小) Lv.1
・物質生成(初級) Lv.1
・アンデッド耐性(微) Lv.1
・死霊魔術(初級) Lv.1
・精神耐性(中) Lv.1
・ブレス耐性(大) Lv.1 (ブレス耐性(中)より進化)
・怨念耐性(小) Lv.1
・深淵の核 Lv.1
・統率力(微) Lv.1
・水中活動(微) Lv.1
・粘液噴射 Lv.1
・麻痺耐性(小) Lv.1
・壁面歩行(小) Lv.1
・鎌鼬 Lv.1
・蟲の共鳴 Lv.1
・威圧 Lv.1
・猛禽の目 Lv.1
・古代言語解読(初級) Lv.1 -> Lv.3
・魅了耐性(微) Lv.1
・突風耐性(小) Lv.1
・風操作(小) Lv.1
・火炎耐性(極) Lv.1 (火炎耐性(大)より進化)
・熱源感知 Lv.1
・エレメンタル知識(風) Lv.1
・エレメンタル知識(炎) Lv.1 -> Lv.2
・自己再生(小) Lv.1
・火炎ブレス Lv.1
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚… スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。 いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて… 気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。 愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。 生きていればいつかは幼馴染達とまた会える! 愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」 「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」 幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。 愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。 はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...