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第37話:魂の接続と創造主の決断
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ラルタワー最上階。世界の運命を賭けた最終決戦の火蓋は、二つの戦場で同時に切って落とされた。
「うおおおおおおっ!」
メイプルが、全身全霊でゼノの歪みの剣を受け止める。彼女の聖なる盾と、ゼノの不浄な剣がぶつかり合うたびに、空間が悲鳴を上げて軋み、激しい衝撃波がホール全体を揺るがした。
「どきなさいよ! 鉄クズ女!」
「誰が鉄クズですって!? あなたこそ、そのダサい紫色のオーラ、なんとかしなさいよ!」
口では軽口を叩きながらも、メイプルの表情は苦痛に満ちていた。ゼノの一撃は、もはや物理的なダメージだけでなく、精神力(SAN値)すら削り取るような、呪いの力を帯びていた。
「無駄だ!」
カナデは、ゼノの足元を変成させて動きを封じようとする。だが、ゼノは自らが発する歪みの力で、カナデの創造を上書きするように、足元の地形を強制的に安定させてしまう。
「言ったはずだ、カナデ! 貴様の創造(ルール)は、俺の破壊(ルール)で捻じ曲げる!」
創造と破壊。二つの相反する力が、足元の床、一本の柱、ホールに満ちる空気、その全てを奪い合うように、激しくせめぎ合っていた。
一方、ケンとシオンは、冷徹な管理者『ナンバーセブン』と対峙していた。
「何度やっても同じことだ。この空間において、貴様らは、ただのデータに過ぎん」
ナンバーセブンは、指先一つで空間断層のバリアを自在に操り、二人の攻撃を完璧にいなしていく。
「……ならば、その定義を、超えるまで」
シオンは、無数の矢を同時に放った。それは、ナンバーセブンを狙ったものではない。ホールの壁、天井、床へと、ランダムに放たれたように見えた。
「なにを……?」
ナンバーセブンが、その意図を測りかねた瞬間、ケンが杖を天に掲げた。
「矢よ、我が魔力の道標となれ! 繋がれ、そして、収束せよ! 《プリズマティック・ジェイル》!」
シオンが撃ち込んだ矢が、一斉に魔法の光を放ち、互いを光の線で結びつけていく。あっという間に、ナンバーセブンを中心とした、光の檻が形成された。
「ほう、小賢しい」
ナンバーセブンは、空間断層で檻を破壊しようとする。だが、檻は物理的な存在ではない。ケンの魔力と、シオンの矢の座標情報だけで構成された、概念的な牢獄だった。
「この檻は、あなたを閉じ込めるものではない。あなたの絶対防御――空間断層――の座標を、固定化し、予測するための、ただの『格子』です」
シオンが、静かに弓を引き絞る。光の格子によって、ナンバーセブンのバリアがどこに出現するかが、完璧に可視化されていた。
「これで、死角はなくなった」
シオンの矢が、光の格子の隙間を縫うように、ナンバーセブンへと殺到した。
二つの戦場、二つの死闘。
どちらも、一進一退の攻防が続いていた。だが、その均衡は、突如として破られる。
「……ああ、そうだ。これだ……。この感覚だ!」
ゼノが、恍惚とした表情で、天を仰いだ。彼の背後にあるカプセル、その中で眠るリリアの身体が、ビクリと痙攣する。
「リリアの知識、世界の法則、その全てが、俺に流れ込んでくる……!」
ゼノの身体から、紫色のオーラが、これまでとは比較にならないほど膨れ上がった。彼は、リリアとの精神同期を、さらに深めたのだ。
「もはや、貴様らの小細工は通用せんぞ、カナデ!」
ゼノが、歪みの剣を振りかぶる。その剣先から、無数の黒い触手のようなものが伸び、床や壁を侵食し始めた。それは、カナデの創造の力を、根こそぎ奪い去る、アンチ・クリエイトの領域だった。
「ぐっ……! フィールドが、俺の制御を離れて……!」
「終わりだ!」
黒い触手が、カナデとメイプルに襲いかかる。メイプルは盾で防ごうとするが、触手はその盾を易々と貫通し、彼女の身体を吹き飛ばした。
「きゃああああっ!」
「メイプルさん!」
がら空きになったカナデに、ゼノの本体が肉薄する。
「まずは、貴様からだ、カナデ。この世界から、完全にデリートしてやる!」
歪みの剣が、無防備なカナデの胸元へと、一直線に突き立てられた。
ケンとシオンも、その光景に気づき、絶叫する。
「「カナデ!!」」
万事休す。
誰もが、そう思った瞬間。
カナデは、目を閉じた。彼の表情から、焦りも、恐怖も、全てが消え失せていた。
ただ、静かな、そして、あまりにも大きな決意だけが、そこにあった。
(……ごめん、みんな。少しだけ、無茶をする)
ゼノの剣が、彼の胸を貫く、その寸前。
カナデの全身から、金色のオーラが、後光のように溢れ出した。
それは、これまでのような、局地的なスキル発動の光ではない。この世界の理そのものに干渉する、創造主としての、魂の輝きだった。
「『ワールド・クリエイト:ゼロ・レクイエム』」
カナデが、静かにその名を紡ぐ。
次の瞬間、時が、止まった。
ゼノの動きも、ナンバーセブンの動きも、仲間たちの動きも、ホールに舞う塵の一つ一つまでもが、完全に静止した。
この空間で、唯一動くことを許されているのは、カナデただ一人。
彼は、静止したゼノの横をすり抜け、二つのカプセルの前へと歩み寄った。
片方には、歪みの力に恍惚とする、かつてのライバル。
もう片方には、その力のために利用され、苦痛に顔を歪める、守るべき少女。
「ゼノさん。あなたの求めた強さは、本当に、これだったんですか?」
カナデは、静止したゼノに語りかける。
「リリアさん。あなたの涙は、もう見たくない」
彼は、リリアが眠るカプセルに、そっと手を触れた。
『ゼロ・レクイエム』。
それは、この世界の時間を一時的に停止させ、その間に、因果律そのものを書き換えるという、神ですら禁忌とする、究極の創造スキル。
その対価は、計り知れない。おそらく、彼の存在そのものが、この世界から消え去ってしまうほどの。
だが、カナデに、迷いはなかった。
仲間たちがいる。リリアがいる。この世界がある。
それらを守れるなら、自分の存在など、惜しくはない。
「……俺は、俺の世界を、取り戻す」
カナデは、二つのカプセルに向かって、両手を広げた。
彼の身体が、足元から、ゆっくりと金色の光の粒子となって、消え始めていた。
その全てを、この最後の一撃に注ぎ込むために。
「さようなら、みんな」
カナデの、最後の創造が、始まろうとしていた。
それは、世界を救うための、あまりにも悲しい、鎮魂歌(レクイエム)だった。
「うおおおおおおっ!」
メイプルが、全身全霊でゼノの歪みの剣を受け止める。彼女の聖なる盾と、ゼノの不浄な剣がぶつかり合うたびに、空間が悲鳴を上げて軋み、激しい衝撃波がホール全体を揺るがした。
「どきなさいよ! 鉄クズ女!」
「誰が鉄クズですって!? あなたこそ、そのダサい紫色のオーラ、なんとかしなさいよ!」
口では軽口を叩きながらも、メイプルの表情は苦痛に満ちていた。ゼノの一撃は、もはや物理的なダメージだけでなく、精神力(SAN値)すら削り取るような、呪いの力を帯びていた。
「無駄だ!」
カナデは、ゼノの足元を変成させて動きを封じようとする。だが、ゼノは自らが発する歪みの力で、カナデの創造を上書きするように、足元の地形を強制的に安定させてしまう。
「言ったはずだ、カナデ! 貴様の創造(ルール)は、俺の破壊(ルール)で捻じ曲げる!」
創造と破壊。二つの相反する力が、足元の床、一本の柱、ホールに満ちる空気、その全てを奪い合うように、激しくせめぎ合っていた。
一方、ケンとシオンは、冷徹な管理者『ナンバーセブン』と対峙していた。
「何度やっても同じことだ。この空間において、貴様らは、ただのデータに過ぎん」
ナンバーセブンは、指先一つで空間断層のバリアを自在に操り、二人の攻撃を完璧にいなしていく。
「……ならば、その定義を、超えるまで」
シオンは、無数の矢を同時に放った。それは、ナンバーセブンを狙ったものではない。ホールの壁、天井、床へと、ランダムに放たれたように見えた。
「なにを……?」
ナンバーセブンが、その意図を測りかねた瞬間、ケンが杖を天に掲げた。
「矢よ、我が魔力の道標となれ! 繋がれ、そして、収束せよ! 《プリズマティック・ジェイル》!」
シオンが撃ち込んだ矢が、一斉に魔法の光を放ち、互いを光の線で結びつけていく。あっという間に、ナンバーセブンを中心とした、光の檻が形成された。
「ほう、小賢しい」
ナンバーセブンは、空間断層で檻を破壊しようとする。だが、檻は物理的な存在ではない。ケンの魔力と、シオンの矢の座標情報だけで構成された、概念的な牢獄だった。
「この檻は、あなたを閉じ込めるものではない。あなたの絶対防御――空間断層――の座標を、固定化し、予測するための、ただの『格子』です」
シオンが、静かに弓を引き絞る。光の格子によって、ナンバーセブンのバリアがどこに出現するかが、完璧に可視化されていた。
「これで、死角はなくなった」
シオンの矢が、光の格子の隙間を縫うように、ナンバーセブンへと殺到した。
二つの戦場、二つの死闘。
どちらも、一進一退の攻防が続いていた。だが、その均衡は、突如として破られる。
「……ああ、そうだ。これだ……。この感覚だ!」
ゼノが、恍惚とした表情で、天を仰いだ。彼の背後にあるカプセル、その中で眠るリリアの身体が、ビクリと痙攣する。
「リリアの知識、世界の法則、その全てが、俺に流れ込んでくる……!」
ゼノの身体から、紫色のオーラが、これまでとは比較にならないほど膨れ上がった。彼は、リリアとの精神同期を、さらに深めたのだ。
「もはや、貴様らの小細工は通用せんぞ、カナデ!」
ゼノが、歪みの剣を振りかぶる。その剣先から、無数の黒い触手のようなものが伸び、床や壁を侵食し始めた。それは、カナデの創造の力を、根こそぎ奪い去る、アンチ・クリエイトの領域だった。
「ぐっ……! フィールドが、俺の制御を離れて……!」
「終わりだ!」
黒い触手が、カナデとメイプルに襲いかかる。メイプルは盾で防ごうとするが、触手はその盾を易々と貫通し、彼女の身体を吹き飛ばした。
「きゃああああっ!」
「メイプルさん!」
がら空きになったカナデに、ゼノの本体が肉薄する。
「まずは、貴様からだ、カナデ。この世界から、完全にデリートしてやる!」
歪みの剣が、無防備なカナデの胸元へと、一直線に突き立てられた。
ケンとシオンも、その光景に気づき、絶叫する。
「「カナデ!!」」
万事休す。
誰もが、そう思った瞬間。
カナデは、目を閉じた。彼の表情から、焦りも、恐怖も、全てが消え失せていた。
ただ、静かな、そして、あまりにも大きな決意だけが、そこにあった。
(……ごめん、みんな。少しだけ、無茶をする)
ゼノの剣が、彼の胸を貫く、その寸前。
カナデの全身から、金色のオーラが、後光のように溢れ出した。
それは、これまでのような、局地的なスキル発動の光ではない。この世界の理そのものに干渉する、創造主としての、魂の輝きだった。
「『ワールド・クリエイト:ゼロ・レクイエム』」
カナデが、静かにその名を紡ぐ。
次の瞬間、時が、止まった。
ゼノの動きも、ナンバーセブンの動きも、仲間たちの動きも、ホールに舞う塵の一つ一つまでもが、完全に静止した。
この空間で、唯一動くことを許されているのは、カナデただ一人。
彼は、静止したゼノの横をすり抜け、二つのカプセルの前へと歩み寄った。
片方には、歪みの力に恍惚とする、かつてのライバル。
もう片方には、その力のために利用され、苦痛に顔を歪める、守るべき少女。
「ゼノさん。あなたの求めた強さは、本当に、これだったんですか?」
カナデは、静止したゼノに語りかける。
「リリアさん。あなたの涙は、もう見たくない」
彼は、リリアが眠るカプセルに、そっと手を触れた。
『ゼロ・レクイエム』。
それは、この世界の時間を一時的に停止させ、その間に、因果律そのものを書き換えるという、神ですら禁忌とする、究極の創造スキル。
その対価は、計り知れない。おそらく、彼の存在そのものが、この世界から消え去ってしまうほどの。
だが、カナデに、迷いはなかった。
仲間たちがいる。リリアがいる。この世界がある。
それらを守れるなら、自分の存在など、惜しくはない。
「……俺は、俺の世界を、取り戻す」
カナデは、二つのカプセルに向かって、両手を広げた。
彼の身体が、足元から、ゆっくりと金色の光の粒子となって、消え始めていた。
その全てを、この最後の一撃に注ぎ込むために。
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