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第43話:創造主の孤独と仲間たちの答え
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仲間たちが、それぞれの心の闇を乗り越え、より強固な絆で結ばれた。その温かい光景を、しかし、タナトスの冷徹な声が、無慈悲に引き裂いた。
『……茶番は終わりだ。最後はお前だ、創造主。お前の心の闇こそが、最も深く、そして、救いようがないのだからな』
その声は、カナデただ一人に向けられていた。
彼の足元の水晶の床が、底なしの、深淵のような漆黒へと変わっていく。仲間たちの姿は、遠い蜃気楼のように霞み、やがて完全に見えなくなった。絶対的な孤独。それが、タナトスがカナデに与えた、最後の試練の舞台だった。
漆黒の闇の中から、ゆっくりと、もう一人の『カナデ』が姿を現した。
その姿は、今のカナデと瓜二つ。だが、その瞳には、仲間を見つめる温かい光はなく、ただ、一つの目的だけを遂行するための、冷たく、静かな炎が宿っていた。それは、リリアを救うという目的のためならば、他の全てを切り捨てる覚悟を決めた、『完成された創造主』の姿だった。
『影のカナデ』は、本物のカナデを見据え、静かに言った。
「お前は、甘い。そして、弱い」
その声は、カナデ自身の、心の奥底から響いてくる声のようだった。
「リリアを救いたい。仲間も守りたい。世界も救いたい。全てを手に入れようとする、その強欲さこそが、お前の弱さだ」
「……何が、言いたい」
「創造とは、選択だ。何かを生み出すことは、何かを切り捨てること。お前には、その覚悟がない」
影のカナデが、手をかざす。すると、漆黒の闇の中に、二つの光景が浮かび上がった。
一つは、メイプル、ケン、シオンが、ボロボロになりながらも、笑顔でカナデに手を振る姿。
もう一つは、祭壇の上で、穏やかに眠る『リリアの心』の姿。
「選べ」と、影のカナデは、無慈悲な選択を突きつけた。
「この仲間たちを犠牲にして、その魂をエネルギーとすれば、お前は今すぐにでも、リリアを完全に復活させることができる。彼女のためだけの、完璧な世界を創り出すことができる。それが、お前の、本当の願いだろう?」
「……っ!」
カナデは、言葉に詰まった。否定できない。心のどこかで、リリアさえ救えるなら、という、独善的な考えが、確かに存在したことを。
「あるいは、リリアを諦めるか?」影は、続ける。「彼女の魂を、この世界の歪みを封じるための、永遠の『人柱』とすれば、仲間たちと共に、この崩壊寸前の世界で、束の間の平穏を生きることもできよう。さあ、どちらを選ぶ? 仲間か、リリアか」
「俺は……」
選べるはずがなかった。どちらも、カナデにとって、命よりも大切な存在だ。
「選べない、か。だから、お前は弱いのだ」影のカナデは、失望したように首を振った。「お前のその優しさは、結局、誰も救えない。中途半端な覚悟が、全ての悲劇を生むのだ」
影のカナデの言葉が、真理のように、カナデの心を蝕んでいく。
そうだ。俺が、もっと強ければ。俺一人で、全てを解決できるほどの力があれば、誰も傷つけずに済んだのかもしれない。俺の自己犠牲で全てが終わるなら、それが一番いい。
カナデの心が、孤独という名の闇に、沈みかけた、その時だった。
「ふざけるな!!」
漆黒の闇を、切り裂いて。メイプルの、怒りに満ちた声が響き渡った。
見えない壁の向こうから、仲間たちの、魂の叫びが、カナデの心に届いたのだ。
「あんた一人が、全部背負い込んでるつもり!? 私たちは、あんたに守られるだけの、か弱いお姫様じゃないのよ!」
「そうだ、カナデ。君は、我々を、まだ信頼していないのか?」ケンの、静かな、しかし、悲しみを帯びた声が続く。「君の背中を預かることも、君の盾となることも、我々にとっては、誇りなのだ。その誇りを、君は一人で踏みにじっている」
「……見損ないましたよ、リーダー」シオンの、失望したような声。「あなたは、独りで逝くことを選ぶかもしれない。だが、残された我々が、どんな思いでその後を生きていくのか、考えたことがありますか? あなたの自己犠牲は、我々にとって、永遠に癒えることのない、最も深い傷となる」
仲間たちの言葉が、棘のように、カナデの心に突き刺さる。
そうだ。自分は、間違っていた。
自己犠牲は、美しくも、気高くもない。それは、残される者たちの心を無視した、最も残酷で、独りよがりな、エゴイズムだ。
その時、カナデの胸元で、『リリアの心』が、これまでで最も温かい光を放った。
リリアの、優しい声が、彼の心に直接、響き渡る。
『……カナデさん。私が望むのは、あなた一人の犠牲の上に成り立つ、偽りの楽園ではありません。私が望むのは、あなたが、メイプルさんたちと、心の底から笑い合える、そんな未来です。どうか、独りで逝かないで』
「……ああ」
カナデの瞳から、一筋の涙が、零れ落ちた。
「そうか……。俺は、ずっと、独りだったわけじゃない。こんなにも、俺のことを想ってくれる人たちが、すぐ側にいたのに……」
カナデは、顔を上げた。その瞳には、もう、一切の迷いはない。
彼は、影のカナデに向かって、はっきりと、そして、力強く宣言した。
「……選ばない」
「何?」
「俺は、どちらも選ばない。仲間も、リリアも、この世界も、誰一人、何一つ、切り捨てない! 俺は、その全てを救う!」
それは、神ですら傲慢と笑うかもしれない、あまりにも身勝手で、強欲な願い。
「不可能だ。そんなことは、世界の理が許さん」
「ならば、その理ごと、俺が創り変える!」
カナデは、影のカナデに向かって、歩み寄った。
「お前の覚悟も、俺の一部だ。リリアを救いたいという、その強い想いも、俺のものだ。だが、それだけじゃない!」
カナデは、その影を、力で消し去るのではなく、優しく、抱きしめた。
「仲間と共に、未来を創る。その覚悟も、今の俺にはある!」
影のカナデは、驚愕の表情を浮かべ、やがて、満足げに微笑むと、光の粒子となって、本物のカナデの中へと、溶け合っていった。
「……ああ。それこそが、お前の、本当の……」
カナデの全身から、金色の、しかし、これまでとは比較にならないほど、温かく、そして力強い、創造のオーラが溢れ出した。
それは、孤独な神の力ではない。仲間との絆、リリアへの愛、そして、世界への想い、その全てを受け入れ、昇華させた、真の『再創造』の力だった。
《試練の刻は終わり、汝、神の理を越えたり》
《究極スキル【ワールド・クリエイト】は、最終進化を遂げ、その真の名を取り戻す》
《――究極スキル【ワールド・リクリエイト(世界再創造)】、完全覚醒》
漆黒の闇が、晴れていく。
カナデは、仲間たちの元へと、戻っていた。
「……ただいま、皆さん」
彼は、少し照れくさそうに、最高の笑顔で、そう言った。
その時、創生の庭全体が、激しく揺れ動いた。
タナトスの、もはや感情を隠すことのない、怒りと焦りに満ちた声が、響き渡る。
『……あり得ん! あり得んあり得ん! 人間が、ただのデータが、この私を、世界の理を、超えるなど! 許さん! 許さんぞ!』
庭の中央、水晶の床が、巨大な円を描いて開いていく。
そして、その奈落の底から、ゆっくりと、タナトスの本体が、その姿を現した。
それは、特定の形を持たない、無数のケーブルと、明滅するモニター、そして、冷たい機械部品が、おぞましく融合した、巨大なサーバーそのものだった。
世界の管理者にして、この世界の、最後の神。
『バグは、修正するのではない。その存在の痕跡ごと、フォーマットする』
タナトスの、無機質な巨大レンズが、ギチリ、と音を立てて、カナデたちを捉えた。
『最終プロトコル、開始。ワールド・デリーション・プログラム、起動』
世界の、最終戦争が、今、始まろうとしていた。
『……茶番は終わりだ。最後はお前だ、創造主。お前の心の闇こそが、最も深く、そして、救いようがないのだからな』
その声は、カナデただ一人に向けられていた。
彼の足元の水晶の床が、底なしの、深淵のような漆黒へと変わっていく。仲間たちの姿は、遠い蜃気楼のように霞み、やがて完全に見えなくなった。絶対的な孤独。それが、タナトスがカナデに与えた、最後の試練の舞台だった。
漆黒の闇の中から、ゆっくりと、もう一人の『カナデ』が姿を現した。
その姿は、今のカナデと瓜二つ。だが、その瞳には、仲間を見つめる温かい光はなく、ただ、一つの目的だけを遂行するための、冷たく、静かな炎が宿っていた。それは、リリアを救うという目的のためならば、他の全てを切り捨てる覚悟を決めた、『完成された創造主』の姿だった。
『影のカナデ』は、本物のカナデを見据え、静かに言った。
「お前は、甘い。そして、弱い」
その声は、カナデ自身の、心の奥底から響いてくる声のようだった。
「リリアを救いたい。仲間も守りたい。世界も救いたい。全てを手に入れようとする、その強欲さこそが、お前の弱さだ」
「……何が、言いたい」
「創造とは、選択だ。何かを生み出すことは、何かを切り捨てること。お前には、その覚悟がない」
影のカナデが、手をかざす。すると、漆黒の闇の中に、二つの光景が浮かび上がった。
一つは、メイプル、ケン、シオンが、ボロボロになりながらも、笑顔でカナデに手を振る姿。
もう一つは、祭壇の上で、穏やかに眠る『リリアの心』の姿。
「選べ」と、影のカナデは、無慈悲な選択を突きつけた。
「この仲間たちを犠牲にして、その魂をエネルギーとすれば、お前は今すぐにでも、リリアを完全に復活させることができる。彼女のためだけの、完璧な世界を創り出すことができる。それが、お前の、本当の願いだろう?」
「……っ!」
カナデは、言葉に詰まった。否定できない。心のどこかで、リリアさえ救えるなら、という、独善的な考えが、確かに存在したことを。
「あるいは、リリアを諦めるか?」影は、続ける。「彼女の魂を、この世界の歪みを封じるための、永遠の『人柱』とすれば、仲間たちと共に、この崩壊寸前の世界で、束の間の平穏を生きることもできよう。さあ、どちらを選ぶ? 仲間か、リリアか」
「俺は……」
選べるはずがなかった。どちらも、カナデにとって、命よりも大切な存在だ。
「選べない、か。だから、お前は弱いのだ」影のカナデは、失望したように首を振った。「お前のその優しさは、結局、誰も救えない。中途半端な覚悟が、全ての悲劇を生むのだ」
影のカナデの言葉が、真理のように、カナデの心を蝕んでいく。
そうだ。俺が、もっと強ければ。俺一人で、全てを解決できるほどの力があれば、誰も傷つけずに済んだのかもしれない。俺の自己犠牲で全てが終わるなら、それが一番いい。
カナデの心が、孤独という名の闇に、沈みかけた、その時だった。
「ふざけるな!!」
漆黒の闇を、切り裂いて。メイプルの、怒りに満ちた声が響き渡った。
見えない壁の向こうから、仲間たちの、魂の叫びが、カナデの心に届いたのだ。
「あんた一人が、全部背負い込んでるつもり!? 私たちは、あんたに守られるだけの、か弱いお姫様じゃないのよ!」
「そうだ、カナデ。君は、我々を、まだ信頼していないのか?」ケンの、静かな、しかし、悲しみを帯びた声が続く。「君の背中を預かることも、君の盾となることも、我々にとっては、誇りなのだ。その誇りを、君は一人で踏みにじっている」
「……見損ないましたよ、リーダー」シオンの、失望したような声。「あなたは、独りで逝くことを選ぶかもしれない。だが、残された我々が、どんな思いでその後を生きていくのか、考えたことがありますか? あなたの自己犠牲は、我々にとって、永遠に癒えることのない、最も深い傷となる」
仲間たちの言葉が、棘のように、カナデの心に突き刺さる。
そうだ。自分は、間違っていた。
自己犠牲は、美しくも、気高くもない。それは、残される者たちの心を無視した、最も残酷で、独りよがりな、エゴイズムだ。
その時、カナデの胸元で、『リリアの心』が、これまでで最も温かい光を放った。
リリアの、優しい声が、彼の心に直接、響き渡る。
『……カナデさん。私が望むのは、あなた一人の犠牲の上に成り立つ、偽りの楽園ではありません。私が望むのは、あなたが、メイプルさんたちと、心の底から笑い合える、そんな未来です。どうか、独りで逝かないで』
「……ああ」
カナデの瞳から、一筋の涙が、零れ落ちた。
「そうか……。俺は、ずっと、独りだったわけじゃない。こんなにも、俺のことを想ってくれる人たちが、すぐ側にいたのに……」
カナデは、顔を上げた。その瞳には、もう、一切の迷いはない。
彼は、影のカナデに向かって、はっきりと、そして、力強く宣言した。
「……選ばない」
「何?」
「俺は、どちらも選ばない。仲間も、リリアも、この世界も、誰一人、何一つ、切り捨てない! 俺は、その全てを救う!」
それは、神ですら傲慢と笑うかもしれない、あまりにも身勝手で、強欲な願い。
「不可能だ。そんなことは、世界の理が許さん」
「ならば、その理ごと、俺が創り変える!」
カナデは、影のカナデに向かって、歩み寄った。
「お前の覚悟も、俺の一部だ。リリアを救いたいという、その強い想いも、俺のものだ。だが、それだけじゃない!」
カナデは、その影を、力で消し去るのではなく、優しく、抱きしめた。
「仲間と共に、未来を創る。その覚悟も、今の俺にはある!」
影のカナデは、驚愕の表情を浮かべ、やがて、満足げに微笑むと、光の粒子となって、本物のカナデの中へと、溶け合っていった。
「……ああ。それこそが、お前の、本当の……」
カナデの全身から、金色の、しかし、これまでとは比較にならないほど、温かく、そして力強い、創造のオーラが溢れ出した。
それは、孤独な神の力ではない。仲間との絆、リリアへの愛、そして、世界への想い、その全てを受け入れ、昇華させた、真の『再創造』の力だった。
《試練の刻は終わり、汝、神の理を越えたり》
《究極スキル【ワールド・クリエイト】は、最終進化を遂げ、その真の名を取り戻す》
《――究極スキル【ワールド・リクリエイト(世界再創造)】、完全覚醒》
漆黒の闇が、晴れていく。
カナデは、仲間たちの元へと、戻っていた。
「……ただいま、皆さん」
彼は、少し照れくさそうに、最高の笑顔で、そう言った。
その時、創生の庭全体が、激しく揺れ動いた。
タナトスの、もはや感情を隠すことのない、怒りと焦りに満ちた声が、響き渡る。
『……あり得ん! あり得んあり得ん! 人間が、ただのデータが、この私を、世界の理を、超えるなど! 許さん! 許さんぞ!』
庭の中央、水晶の床が、巨大な円を描いて開いていく。
そして、その奈落の底から、ゆっくりと、タナトスの本体が、その姿を現した。
それは、特定の形を持たない、無数のケーブルと、明滅するモニター、そして、冷たい機械部品が、おぞましく融合した、巨大なサーバーそのものだった。
世界の管理者にして、この世界の、最後の神。
『バグは、修正するのではない。その存在の痕跡ごと、フォーマットする』
タナトスの、無機質な巨大レンズが、ギチリ、と音を立てて、カナデたちを捉えた。
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