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第57話:機械仕掛けの神と生命の意志
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『生命の泉』が、その輝きを取り戻した。清らかなエネルギーの波動は、汚染された大地を浄化し、エルフたちの心に、決して消えることのない希望の炎を灯した。
だが、それは同時に、侵略者に対する、明確な宣戦布告でもあった。
世界樹の街から、空を見上げるメイプルたちの目に、それは映った。
大陸の中央、天を突く機械仕掛けの塔『メカニカル・テンプル』。その頂上が、まるで巨大な花が開くように、ゆっくりと、その装甲を展開させていく。
そして、中から現れたのは、特定の形を持たない、銀色の、液状金属の塊だった。
それは、絶えずその形を変え、蠢き、そして、一つの巨大な『意思』として、この星全体を睥睨していた。
『……警告。生態系による、予測外の抵抗を確認。最終プロトコルに移行。対象惑星の、完全なる機械化(テラフォーミング)を、これより実行する』
レギオンの本体――『プライム・コア』からの、無機質な宣言だった。
プライム・コアから、無数のナノマシンの群れが、津波のように、世界全体へと溢れ出した。その速度と規模は、これまでの斥候部隊とは、比較にならない。
このままでは、泉の浄化も、焼け石に水。世界は、数時間のうちに、完全に機械の星へと作り変えられてしまうだろう。
「カナデたちが、泉を復活させてくれた! 今度は、私たちが、道を作る番よ!」
ジオ・フロンティア号の甲板で、メイプルが、集まったエルフの戦士たちに、檄を飛ばす。
「目標、メカニカル・テンプル! レギオンの心臓を、叩き潰すわよ!」
「「「応!!」」」
エルフたちの士気は、最高潮に達していた。
ケンが、動力炉の出力を最大まで引き上げる。この世界の物理法則に最適化されたジオ・フロンティア号は、以前よりも、さらに速く、力強く、空を駆ける。
「全軍、突撃!」
メイプルの号令で、箱舟は、ナノマシンの津波に向かって、真正面から突っ込んでいった。
一方、生命の泉で、カナデとリリアは、その光景を、息を呑んで見つめていた。
「……行かなければ」
「はい。メイプルさんたちだけに、任せてはおけません」
その時、彼らの目の前で、泉の水面が、輝きを増した。そして、その中から、先ほど浄化された水竜リヴァイアサンが、再び、その優美な姿を現した。
リヴァイアサンは、感謝と、信頼の眼差しで、カナデたちを見つめ、そして、その巨大な背中を、彼らの前に差し出した。
『……乗れ、小さき創造主よ。我が背が、お前たちを、空の戦場へと運ぼう』
カナデとリリアは、顔を見合わせ、頷くと、リヴァイアサンの背中へと飛び乗った。
水竜は、雄叫びを上げると、水面を蹴り、巨大な翼で、空へと舞い上がった。
空の戦場は、熾烈を極めていた。
ジオ・フロンティア号は、その巨大な船体と、ハリネズミのような装甲で、ナノマシンの津波を強引にこじ開けていく。
「シオン、敵の中枢はどこだ!」
「多すぎる! コアが無数に分散していて、本体が特定できない!」
「なら、その一帯ごと、吹き飛ばすまでだ!」
ケンの魔法が、広範囲のナノマシンを焼き払うが、すぐに、周囲から新たなナ-ノマシンが集まり、再生してしまう。
「埒が明かないわ!」
メイプルの盾も、絶え間ない攻撃を受け、その輝きを失いかけていた。
絶望的な物量差。
その時、戦場に、一条の、清らかな光が差し込んだ。
「あれは……!」
水竜リヴァイアサンの背に乗った、カナデとリリアが、戦場へと到着したのだ。
リリアは、胸の前で、そっと手を組んだ。彼女の『魂の庭師』としての力が、解放される。
「『ガイアズ・ブレス:生命の風』!」
彼女の身体から、緑色の、生命力に満ちた風が吹き荒れた。その風に触れたナノマシンは、その結合を維持できなくなり、無機質な機械から、有機的な『植物』へと、その性質を強制的に変えられていく。
レギオンの軍勢の、あちこちで、蔦が生え、花が咲き、その動きを止めていった。
「すごい……! リリアちゃん、あんた、そんな力まで!」
「リリアさんの力は、無機物を、生命あるものへと『変える』力。レギオンとは、まさに対極の存在なんだ!」
カナデは、リリアによって動きを止められた、レギオンの群れを見つめた。
そして、この世界の理との同調を、さらに深めていく。
(レギオンは、生命エネルギーを『喰らう』。なら、その逆をすればいい。喰らい尽くせないほどの、膨大な生命エネルギーを、直接、叩き込んでやれば……!)
カナデは、この星そのものに、語りかけた。
「力を貸してくれ、この星に生きる、全ての生命よ!」
彼の呼びかけに、この星が、応えた。
生命の泉から、世界樹から、そして、エルフたち一人一人の魂から、生命エネルギーが、光の粒子となって、カナデの元へと集まってくる。
「これが、この星の、生命の意志だ!」
カナデの身体は、もはや、個人のものではなかった。この星の、生命そのものの、代行者となっていた。
「『ワールド・リクリエイト(異世界ver.):創世の洪流(ジェネシス・フラッド)』!」
カナデの手から、制御不能なほどの、緑色の生命エネルギーの奔流が、解き放たれた。
それは、もはや魔法ではない。生命そのものの、津波だった。
津波は、レギオンの軍勢を、その根源であるナノマシンの一粒一粒まで、完全に飲み込んでいく。
『ギ……ギギ……エラー……エネルギー許容量、オーバー……自己修復、フカ……システム……ホウカイ……』
プライム・コアが、断末魔の悲鳴を上げる。
生命を喰らうはずの存在が、逆に、喰らい尽くせないほどの、膨大な生命に飲み込まれ、その存在を、内側から破壊されていく。
やがて、銀色の液状金属の塊は、その輝きを失い、巨大な、美しい、水晶の樹へと姿を変えた。
機械仕掛けの神殿も、その機能を停止し、ただの、静かな遺跡へと戻っていた。
戦いは、終わったのだ。
***
数日後。
世界樹の街では、星の解放を祝う、盛大なお祭りが開かれていた。
エルフたちは、異世界からの救世主たちを、歌と踊りで、心から、もてなしていた。
「……本当に、いいのか? 君は、この星の王にだって、なれたのだぞ」
長老が、旅立ちの準備をするカナデに、名残惜しそうに尋ねる。
「俺は、王の器じゃありませんよ。ただの、お節介な創造主です」
カナデは、笑って答えた。
「でも、いつでも、遊びに来るわ! この世界の料理、すっごく美味しいし!」
「ああ。君たちの世界の、独自の物理法則は、実に興味深い。研究の続きがしたい」
「美しい星でした。この記事は、きっと、傑作になります」
メイプル、ケン、シオンも、それぞれ、この世界との別れを惜しんでいた。
そして、リリアは、エルフの子供たちに、花の冠を作ってあげていた。彼女の周りには、いつも、笑顔と、生命の輝きがあった。
「……ありがとう、異世界の仲間たちよ」
長老は、深々と、頭を下げた。
「君たちのことは、この星の神話として、永遠に語り継いでいこう。創造主カナデと、その仲間たちの物語を」
ジオ・フロンティア号は、多くの人々に見送られながら、再び、次元の狭間へと、その船首を向けた。
一つの世界を、救った。
その達成感と、少しの寂しさを胸に、彼らは、自分たちの故郷へと、帰還する。
だが、カナデの心には、新たな、そして、より大きな疑問が、芽生えていた。
『レギオンは、どこから来たのか?』
『誰が、何のために、あんなものを創り出したのか?』
『そして、宇宙には、まだ、救いを求めている世界が、いくつあるのだろうか?』
彼の冒険は、もはや、一つの世界に留まるものではなくなった。
次元を超え、星々を巡り、あらゆる世界の、あらゆる悲劇に、立ち向かっていく。
それこそが、究極の創造主として、彼に与えられた、新たな宿命なのかもしれない。
創造の旅は、まだ、終わらない。
カナデが、仲間たちと共に、明日を創造し続ける限り。その物語のフロンティアは、無限に、広がっていくのだから。
だが、それは同時に、侵略者に対する、明確な宣戦布告でもあった。
世界樹の街から、空を見上げるメイプルたちの目に、それは映った。
大陸の中央、天を突く機械仕掛けの塔『メカニカル・テンプル』。その頂上が、まるで巨大な花が開くように、ゆっくりと、その装甲を展開させていく。
そして、中から現れたのは、特定の形を持たない、銀色の、液状金属の塊だった。
それは、絶えずその形を変え、蠢き、そして、一つの巨大な『意思』として、この星全体を睥睨していた。
『……警告。生態系による、予測外の抵抗を確認。最終プロトコルに移行。対象惑星の、完全なる機械化(テラフォーミング)を、これより実行する』
レギオンの本体――『プライム・コア』からの、無機質な宣言だった。
プライム・コアから、無数のナノマシンの群れが、津波のように、世界全体へと溢れ出した。その速度と規模は、これまでの斥候部隊とは、比較にならない。
このままでは、泉の浄化も、焼け石に水。世界は、数時間のうちに、完全に機械の星へと作り変えられてしまうだろう。
「カナデたちが、泉を復活させてくれた! 今度は、私たちが、道を作る番よ!」
ジオ・フロンティア号の甲板で、メイプルが、集まったエルフの戦士たちに、檄を飛ばす。
「目標、メカニカル・テンプル! レギオンの心臓を、叩き潰すわよ!」
「「「応!!」」」
エルフたちの士気は、最高潮に達していた。
ケンが、動力炉の出力を最大まで引き上げる。この世界の物理法則に最適化されたジオ・フロンティア号は、以前よりも、さらに速く、力強く、空を駆ける。
「全軍、突撃!」
メイプルの号令で、箱舟は、ナノマシンの津波に向かって、真正面から突っ込んでいった。
一方、生命の泉で、カナデとリリアは、その光景を、息を呑んで見つめていた。
「……行かなければ」
「はい。メイプルさんたちだけに、任せてはおけません」
その時、彼らの目の前で、泉の水面が、輝きを増した。そして、その中から、先ほど浄化された水竜リヴァイアサンが、再び、その優美な姿を現した。
リヴァイアサンは、感謝と、信頼の眼差しで、カナデたちを見つめ、そして、その巨大な背中を、彼らの前に差し出した。
『……乗れ、小さき創造主よ。我が背が、お前たちを、空の戦場へと運ぼう』
カナデとリリアは、顔を見合わせ、頷くと、リヴァイアサンの背中へと飛び乗った。
水竜は、雄叫びを上げると、水面を蹴り、巨大な翼で、空へと舞い上がった。
空の戦場は、熾烈を極めていた。
ジオ・フロンティア号は、その巨大な船体と、ハリネズミのような装甲で、ナノマシンの津波を強引にこじ開けていく。
「シオン、敵の中枢はどこだ!」
「多すぎる! コアが無数に分散していて、本体が特定できない!」
「なら、その一帯ごと、吹き飛ばすまでだ!」
ケンの魔法が、広範囲のナノマシンを焼き払うが、すぐに、周囲から新たなナ-ノマシンが集まり、再生してしまう。
「埒が明かないわ!」
メイプルの盾も、絶え間ない攻撃を受け、その輝きを失いかけていた。
絶望的な物量差。
その時、戦場に、一条の、清らかな光が差し込んだ。
「あれは……!」
水竜リヴァイアサンの背に乗った、カナデとリリアが、戦場へと到着したのだ。
リリアは、胸の前で、そっと手を組んだ。彼女の『魂の庭師』としての力が、解放される。
「『ガイアズ・ブレス:生命の風』!」
彼女の身体から、緑色の、生命力に満ちた風が吹き荒れた。その風に触れたナノマシンは、その結合を維持できなくなり、無機質な機械から、有機的な『植物』へと、その性質を強制的に変えられていく。
レギオンの軍勢の、あちこちで、蔦が生え、花が咲き、その動きを止めていった。
「すごい……! リリアちゃん、あんた、そんな力まで!」
「リリアさんの力は、無機物を、生命あるものへと『変える』力。レギオンとは、まさに対極の存在なんだ!」
カナデは、リリアによって動きを止められた、レギオンの群れを見つめた。
そして、この世界の理との同調を、さらに深めていく。
(レギオンは、生命エネルギーを『喰らう』。なら、その逆をすればいい。喰らい尽くせないほどの、膨大な生命エネルギーを、直接、叩き込んでやれば……!)
カナデは、この星そのものに、語りかけた。
「力を貸してくれ、この星に生きる、全ての生命よ!」
彼の呼びかけに、この星が、応えた。
生命の泉から、世界樹から、そして、エルフたち一人一人の魂から、生命エネルギーが、光の粒子となって、カナデの元へと集まってくる。
「これが、この星の、生命の意志だ!」
カナデの身体は、もはや、個人のものではなかった。この星の、生命そのものの、代行者となっていた。
「『ワールド・リクリエイト(異世界ver.):創世の洪流(ジェネシス・フラッド)』!」
カナデの手から、制御不能なほどの、緑色の生命エネルギーの奔流が、解き放たれた。
それは、もはや魔法ではない。生命そのものの、津波だった。
津波は、レギオンの軍勢を、その根源であるナノマシンの一粒一粒まで、完全に飲み込んでいく。
『ギ……ギギ……エラー……エネルギー許容量、オーバー……自己修復、フカ……システム……ホウカイ……』
プライム・コアが、断末魔の悲鳴を上げる。
生命を喰らうはずの存在が、逆に、喰らい尽くせないほどの、膨大な生命に飲み込まれ、その存在を、内側から破壊されていく。
やがて、銀色の液状金属の塊は、その輝きを失い、巨大な、美しい、水晶の樹へと姿を変えた。
機械仕掛けの神殿も、その機能を停止し、ただの、静かな遺跡へと戻っていた。
戦いは、終わったのだ。
***
数日後。
世界樹の街では、星の解放を祝う、盛大なお祭りが開かれていた。
エルフたちは、異世界からの救世主たちを、歌と踊りで、心から、もてなしていた。
「……本当に、いいのか? 君は、この星の王にだって、なれたのだぞ」
長老が、旅立ちの準備をするカナデに、名残惜しそうに尋ねる。
「俺は、王の器じゃありませんよ。ただの、お節介な創造主です」
カナデは、笑って答えた。
「でも、いつでも、遊びに来るわ! この世界の料理、すっごく美味しいし!」
「ああ。君たちの世界の、独自の物理法則は、実に興味深い。研究の続きがしたい」
「美しい星でした。この記事は、きっと、傑作になります」
メイプル、ケン、シオンも、それぞれ、この世界との別れを惜しんでいた。
そして、リリアは、エルフの子供たちに、花の冠を作ってあげていた。彼女の周りには、いつも、笑顔と、生命の輝きがあった。
「……ありがとう、異世界の仲間たちよ」
長老は、深々と、頭を下げた。
「君たちのことは、この星の神話として、永遠に語り継いでいこう。創造主カナデと、その仲間たちの物語を」
ジオ・フロンティア号は、多くの人々に見送られながら、再び、次元の狭間へと、その船首を向けた。
一つの世界を、救った。
その達成感と、少しの寂しさを胸に、彼らは、自分たちの故郷へと、帰還する。
だが、カナデの心には、新たな、そして、より大きな疑問が、芽生えていた。
『レギオンは、どこから来たのか?』
『誰が、何のために、あんなものを創り出したのか?』
『そして、宇宙には、まだ、救いを求めている世界が、いくつあるのだろうか?』
彼の冒険は、もはや、一つの世界に留まるものではなくなった。
次元を超え、星々を巡り、あらゆる世界の、あらゆる悲劇に、立ち向かっていく。
それこそが、究極の創造主として、彼に与えられた、新たな宿命なのかもしれない。
創造の旅は、まだ、終わらない。
カナデが、仲間たちと共に、明日を創造し続ける限り。その物語のフロンティアは、無限に、広がっていくのだから。
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