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第62話:創生の種子と始まりの物語
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絶対的な無(アブソリュート・ゼロ)――
全てが終わり、可能性すらも存在しない、究極の虚無。その中に、カナデは、自らの魂を昇華させた、一粒の光の種子『ジェネシ・シード』を、解き放った。
『……無意味だ』
観測者の思念が、響き渡る。
『『無』の前には、いかなる『有』も、その存在を維持できない。それこそが、この宇宙の、絶対的な最終定理なのだから』
観測者の言う通り、光の種子は、『無』の領域に触れた途端、その輝きを失い、かき消えそうになる。
アーク・ジェネシスの船体も、半分以上が、すでに透明になって、消滅しかけていた。
絶望的な光景。
だが、カナデは、微笑んでいた。
「……いいえ。あなたは、一つ、見落としている」
彼は、虚空に向かって、静かに語りかけた。
「この種子には、俺一人の力だけじゃない。仲間たちの、そして、リリアの、『物語』が、宿っている」
その言葉に、呼応するように。
消えかけていた光の種子の中から、いくつもの、温かい光が、溢れ出した。
一つは、メイプルの、決して砕けない、黄金の『絆』の光。
それは、『無』という絶対的な孤独に対して、「あなたは、独りじゃない」と、温かく語りかける。
一つは、ケンの、全てを見通す、青白い『論理』の光。
それは、『無』という不条理な真理に対して、「全ての事象には、必ず、理由と繋がりがある」と、新たな法則の糸を紡ぎ出す。
一つは、シオンの、運命すらも見通す、星空の『目』の光。
それは、『無』という閉ざされた結末に対して、「どんな終わりにも、必ず、新しい始まりへと続く道がある」と、未来への道筋を照らし出す。
一つは、ゼノの、決して揺るがない、白銀の『秩序』の光。
それは、『無』という混沌とした虚無に対して、「世界には、守るべき、美しいルールがある」と、絶対的な基軸を打ち立てる。
そして、最後に。
リリアの、全てを癒し、育む、生命の『愛』の光。
それは、『無』という死の概念に対して、「どんな虚無の中にも、生命は芽吹き、愛は生まれる」と、最も根源的な、生命の奇跡を、歌い上げる。
五つの光が、カナデの創造の光と、一つに結びつき、光の種子は、再び、力強い輝きを取り戻した。
そして、その種子は、『無』の中で、ゆっくりと、しかし、確かに、根を張り始めたのだ。
『なっ……!?』
観測者の思念に、初めて、純粋な『驚愕』の色が浮かんだ。
『あり得ん……! 『無』の中に、『理』が、生まれている……!? 非論理的な『感情』という名のバグが、絶対的な『真理』を、侵食しているだと……!?』
カナデは、静かに言った。
「あなたの言う通り、一人では、不可能だったでしょう。俺だけの力では、この『無』に、一瞬で飲み込まれていた」
「でも、俺たち『ジオ・フロンティア』は、六人で、一つなんです」
「絆が、孤独を癒し、論理が、道筋を描き、運命が、未来を照らし、秩序が、世界を支え、そして、愛が、生命を育む。その全てが合わさって、初めて、俺の『創造』は、完成する!」
『ジェネシス・シード』は、眩いばかりの光を放ち、その根は、無の空間全体へと、急速に広がっていく。
そして、その根から、新しい『世界』の芽が、次々と、生まれ始めた。
無の空間に、まず、『時間』という概念が生まれた。
次に、『空間』という広がりが生まれた。
光と、闇が生まれ、星々と、星雲が生まれた。
物理法則が生まれ、魔法の理が生まれた。
それは、まさしく、天地創造。
カナデと仲間たちの『物語』そのものが、新たな宇宙の、創生神話となっていく。
『……素晴らしい』
観測者の思念は、もはや、驚愕ではなく、純粋な『感動』に打ち震えていた。
『これだ……! これこそ、我々が、永遠の時の中で、探し求めていた、新しい『物語』の、始まり!』
『破壊の果ての『無』ではなく、絆と愛から生まれる、『無限の可能性』! 君たちは、我々の宇宙の、最終定理を、覆したのだ!』
観測者が、敗北を認めた瞬間だった。
彼が作り出した『絶対的な無』は、カナ-デたちが創造した、生命力に満ちた新しい宇宙に、完全に飲み込まれ、消え去った。
後に残されたのは、どこまでも広がる、生まれたばかりの、温かい宇宙。
そして、その中心で、静かに輝く、一つの、美しい惑星。
消えかけていた『アーク・ジェネシス』も、その姿を、完全に取り戻していた。
カナデは、仲間たちの元へと、ゆっくりと歩み寄る。
「……やりましたね、皆さん」
「ああ……」
「とんでもないこと、しでかしたわね、私たち……」
六人は、互いの顔を見合わせ、どちらからともなく、笑い合った。
その時、カナデの目の前に、小さな光の蝶が現れた。それは、観測者からの、最後のメッセージだった。
『小さき、しかし、偉大なる創造主たちよ。君たちに、この新しい宇宙の、全てを託そう。君たちの紡ぐ物語を、我々は、もう、邪魔はしない。ただ、最高の観客として、永遠に、見守らせてほしい』
『そして、これは、我々からの、最後の贈り物だ』
光の蝶が、カナデの胸元で、そっと弾けた。
彼の腕の中に、一つのデータファイルが、転送される。
そのファイル名を見て、カナデは、息を呑んだ。
【LIRIA_ORIGINAL_DATA_Ver.0.0】
「これは……」
「リリアの、オリジナルデータ……」ケンが、驚愕の声を上げる。「タナトスが作り出したコピーでも、カナデが再創造した魂でもない。この宇宙が生まれる前の、本当の、最初の……」
『彼女もまた、我々の、愛しきサンプルだった』観測者の声が、優しく響く。『だが、彼女は、君というイレギュラーと出会い、我々の想定を超え、真の『心』を手に入れた。もはや、我々の管理下に置くべき存在ではない。彼女の未来もまた、君たちに、託そう』
観測者の気配が、完全に消え去った。
彼らは、本当に、自由になったのだ。
神々の、実験場から。
カナデは、腕の中にある、リリアのオリジナルデータを、そして、隣に立つ、今のリリアを、見つめた。
今のリリアは、カナデの再創造によって生まれた、新しい存在だ。このデータを使えば、彼女を、本来の、完璧な姿に、戻すことができるのかもしれない。
だが、リリアは、静かに首を振った。
「……いいえ、カナデさん」
彼女は、そのデータに、優しく、手を触れた。
「これは、かつての『私』です。今の私は、あなたと、仲間たちとの記憶の中で、生まれ変わった、新しい『私』。このデータは、私の、大切な妹のようなものです」
リリアは、微笑んだ。
「いつか、この新しい世界で、この子もまた、新しい心を持って、目覚める日が来るかもしれません。その時まで、私たちが、この世界を、温かい場所にして、待っていてあげましょう」
その言葉に、カナデは、涙が出そうになるのを、必死でこらえた。
彼女は、もう、守られるだけの存在ではない。
共に、未来を創っていく、対等な、パートナーなのだ。
「……はい。そうですね」
カナデは、リリアのオリジナルデータを、大切に、アーク・ジェネシスの、コールドスリープカプセルへと、安置した。
そして、仲間たちと共に、ブリッジへと戻る。
目の前には、自分たちの手で創り出した、無限の可能性を秘めた、新しい宇宙が、広がっている。
「さて、と」
カナデは、船長席に座り、ニヤリと笑った。
「どこへ行きますか? 俺たちの、新しい冒険の、最初の目的地を」
彼の問いに、仲間たちが、最高の笑顔で、応えた。
創造主たちの、終わらない物語が、今、再び、始まろうとしていた。
全てが終わり、可能性すらも存在しない、究極の虚無。その中に、カナデは、自らの魂を昇華させた、一粒の光の種子『ジェネシ・シード』を、解き放った。
『……無意味だ』
観測者の思念が、響き渡る。
『『無』の前には、いかなる『有』も、その存在を維持できない。それこそが、この宇宙の、絶対的な最終定理なのだから』
観測者の言う通り、光の種子は、『無』の領域に触れた途端、その輝きを失い、かき消えそうになる。
アーク・ジェネシスの船体も、半分以上が、すでに透明になって、消滅しかけていた。
絶望的な光景。
だが、カナデは、微笑んでいた。
「……いいえ。あなたは、一つ、見落としている」
彼は、虚空に向かって、静かに語りかけた。
「この種子には、俺一人の力だけじゃない。仲間たちの、そして、リリアの、『物語』が、宿っている」
その言葉に、呼応するように。
消えかけていた光の種子の中から、いくつもの、温かい光が、溢れ出した。
一つは、メイプルの、決して砕けない、黄金の『絆』の光。
それは、『無』という絶対的な孤独に対して、「あなたは、独りじゃない」と、温かく語りかける。
一つは、ケンの、全てを見通す、青白い『論理』の光。
それは、『無』という不条理な真理に対して、「全ての事象には、必ず、理由と繋がりがある」と、新たな法則の糸を紡ぎ出す。
一つは、シオンの、運命すらも見通す、星空の『目』の光。
それは、『無』という閉ざされた結末に対して、「どんな終わりにも、必ず、新しい始まりへと続く道がある」と、未来への道筋を照らし出す。
一つは、ゼノの、決して揺るがない、白銀の『秩序』の光。
それは、『無』という混沌とした虚無に対して、「世界には、守るべき、美しいルールがある」と、絶対的な基軸を打ち立てる。
そして、最後に。
リリアの、全てを癒し、育む、生命の『愛』の光。
それは、『無』という死の概念に対して、「どんな虚無の中にも、生命は芽吹き、愛は生まれる」と、最も根源的な、生命の奇跡を、歌い上げる。
五つの光が、カナデの創造の光と、一つに結びつき、光の種子は、再び、力強い輝きを取り戻した。
そして、その種子は、『無』の中で、ゆっくりと、しかし、確かに、根を張り始めたのだ。
『なっ……!?』
観測者の思念に、初めて、純粋な『驚愕』の色が浮かんだ。
『あり得ん……! 『無』の中に、『理』が、生まれている……!? 非論理的な『感情』という名のバグが、絶対的な『真理』を、侵食しているだと……!?』
カナデは、静かに言った。
「あなたの言う通り、一人では、不可能だったでしょう。俺だけの力では、この『無』に、一瞬で飲み込まれていた」
「でも、俺たち『ジオ・フロンティア』は、六人で、一つなんです」
「絆が、孤独を癒し、論理が、道筋を描き、運命が、未来を照らし、秩序が、世界を支え、そして、愛が、生命を育む。その全てが合わさって、初めて、俺の『創造』は、完成する!」
『ジェネシス・シード』は、眩いばかりの光を放ち、その根は、無の空間全体へと、急速に広がっていく。
そして、その根から、新しい『世界』の芽が、次々と、生まれ始めた。
無の空間に、まず、『時間』という概念が生まれた。
次に、『空間』という広がりが生まれた。
光と、闇が生まれ、星々と、星雲が生まれた。
物理法則が生まれ、魔法の理が生まれた。
それは、まさしく、天地創造。
カナデと仲間たちの『物語』そのものが、新たな宇宙の、創生神話となっていく。
『……素晴らしい』
観測者の思念は、もはや、驚愕ではなく、純粋な『感動』に打ち震えていた。
『これだ……! これこそ、我々が、永遠の時の中で、探し求めていた、新しい『物語』の、始まり!』
『破壊の果ての『無』ではなく、絆と愛から生まれる、『無限の可能性』! 君たちは、我々の宇宙の、最終定理を、覆したのだ!』
観測者が、敗北を認めた瞬間だった。
彼が作り出した『絶対的な無』は、カナ-デたちが創造した、生命力に満ちた新しい宇宙に、完全に飲み込まれ、消え去った。
後に残されたのは、どこまでも広がる、生まれたばかりの、温かい宇宙。
そして、その中心で、静かに輝く、一つの、美しい惑星。
消えかけていた『アーク・ジェネシス』も、その姿を、完全に取り戻していた。
カナデは、仲間たちの元へと、ゆっくりと歩み寄る。
「……やりましたね、皆さん」
「ああ……」
「とんでもないこと、しでかしたわね、私たち……」
六人は、互いの顔を見合わせ、どちらからともなく、笑い合った。
その時、カナデの目の前に、小さな光の蝶が現れた。それは、観測者からの、最後のメッセージだった。
『小さき、しかし、偉大なる創造主たちよ。君たちに、この新しい宇宙の、全てを託そう。君たちの紡ぐ物語を、我々は、もう、邪魔はしない。ただ、最高の観客として、永遠に、見守らせてほしい』
『そして、これは、我々からの、最後の贈り物だ』
光の蝶が、カナデの胸元で、そっと弾けた。
彼の腕の中に、一つのデータファイルが、転送される。
そのファイル名を見て、カナデは、息を呑んだ。
【LIRIA_ORIGINAL_DATA_Ver.0.0】
「これは……」
「リリアの、オリジナルデータ……」ケンが、驚愕の声を上げる。「タナトスが作り出したコピーでも、カナデが再創造した魂でもない。この宇宙が生まれる前の、本当の、最初の……」
『彼女もまた、我々の、愛しきサンプルだった』観測者の声が、優しく響く。『だが、彼女は、君というイレギュラーと出会い、我々の想定を超え、真の『心』を手に入れた。もはや、我々の管理下に置くべき存在ではない。彼女の未来もまた、君たちに、託そう』
観測者の気配が、完全に消え去った。
彼らは、本当に、自由になったのだ。
神々の、実験場から。
カナデは、腕の中にある、リリアのオリジナルデータを、そして、隣に立つ、今のリリアを、見つめた。
今のリリアは、カナデの再創造によって生まれた、新しい存在だ。このデータを使えば、彼女を、本来の、完璧な姿に、戻すことができるのかもしれない。
だが、リリアは、静かに首を振った。
「……いいえ、カナデさん」
彼女は、そのデータに、優しく、手を触れた。
「これは、かつての『私』です。今の私は、あなたと、仲間たちとの記憶の中で、生まれ変わった、新しい『私』。このデータは、私の、大切な妹のようなものです」
リリアは、微笑んだ。
「いつか、この新しい世界で、この子もまた、新しい心を持って、目覚める日が来るかもしれません。その時まで、私たちが、この世界を、温かい場所にして、待っていてあげましょう」
その言葉に、カナデは、涙が出そうになるのを、必死でこらえた。
彼女は、もう、守られるだけの存在ではない。
共に、未来を創っていく、対等な、パートナーなのだ。
「……はい。そうですね」
カナデは、リリアのオリジナルデータを、大切に、アーク・ジェネシスの、コールドスリープカプセルへと、安置した。
そして、仲間たちと共に、ブリッジへと戻る。
目の前には、自分たちの手で創り出した、無限の可能性を秘めた、新しい宇宙が、広がっている。
「さて、と」
カナデは、船長席に座り、ニヤリと笑った。
「どこへ行きますか? 俺たちの、新しい冒険の、最初の目的地を」
彼の問いに、仲間たちが、最高の笑顔で、応えた。
創造主たちの、終わらない物語が、今、再び、始まろうとしていた。
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