僕はずっと一緒にいたかっただけなんだ

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金曜日 2

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*ハッピーエンドではありません*
*苦手な方はご遠慮ください*









 次の金曜日。
 僕は、また同じお願いをした。
 次の金曜日もまた。



 そしていつものように、扉の向こうに消える草矢さんを見送った。



 着替えを済ませた僕は教室を後にし、廊下を進む。
 ゆっくり、ゆっくり、慎重に。階段は手すりを両手で掴みながら、一歩一歩、体重を移動させる。



 しかし、またもやじわりと染み出る水分が、僕の下半身を冷やしていく。


 今週は、二階と一階の間にある踊り場まで来ることができた。来週は、もっと遠くまで、行きたい、な……


 僕はそのまま冷たい廊下にしゃがみ込み、この短いデートの余韻に浸っていた。















 廊下から伝わる冷たさが身体の芯に到達したころ。


「こんな時間に、何やってんだ?」


 階段の上から聞こえた声に顔を上げると、そこには知った顔がいた。草矢さんといつも一緒にいる、副会長だ。この曜日ごとの恋人制度を作った本人でもある。


「あっ、すっ、すみませんっ、すぐに帰ります!」


 正直、僕はこの副会長が苦手だ。何を考えているのかわからないのは草矢さんと同じくだけど、顔が、表情が、違う。常に他人の裏の裏まで見抜こうとする冷たい視線、一文字にきつく結んだ口元。目が合うと、その場に張り付けられたように動けなくなる。
 一刻も早く離れようと、僕は鞄をつかんで立ち上がった。


「あぁ、オマエか。確か、金曜日のカレシ」


 しかし、時既に遅し。
 廊下の薄暗さでよく見えなかっただけで、スッと細められた目に僕はとっくに捕まっていた。






 副会長は僕から視線を外すこと無く、タンタンタンと規則正しく階段を降りてくる。だんだんと見えてくるその目は、全く笑っていない。


「あ、あの……」


 僕はガクガク震える手で鞄をつかみ、なんとか下半身を隠した。
 しかし、全てお見通しだという目に僕の行動はなんの意味も無かったらしく……副会長は突然笑い出した。


「ふっ、はははははっ!」


 その笑いは、僕を嘲るためでしかなくて……


「このヘンタイが!!」


 副会長はそのままズンズンと近づいてきて、僕を角に追いやる。そして下半身を隠した鞄ごと膝を入れてきた。


「クソキメェんだよ!!」


 グリグリと押し込まれ、濡れた衣服が壁に当たり更に冷たくなっていく。
 僕はヘビに睨まれたカエルのようにぎゅっと縮こまるしかない。


「一ミリも気持ちの入っちゃいないただの便所にでも捨てられたような生臭いモンにキャッキャと喜んで?デートとか言って独りで勝手に盛り上がって?」


 冷え切ったその目は、今すぐ捨ててしまいたい汚い物を見るかのようで。


「くっっだらねぇ!!」


 膝を強く押し込むと、副会長は吐き捨てるように言った。








「あぁ、イイコト教えてやるよ」


 数歩進んだところで、副会長はダルそうに首だけで振り返りながら言った。


「他の曜日……月から木もな。オマエと同じこと、してんだよ」

「ぇ」


 僕は思わず間抜けな声を出した。


 なんでそんなこと知ってるの……?しかもなんで僕にそれを言うの……?


 僕の戸惑いを感じ取った副会長は、今日見た中で一番の歪んだ顔をした。


「オレはオマエらを、心の底から軽蔑する」


 僕の心に冷たく重いものを残し、副会長は去っていった。








 僕は別に、五人いる他の誰かの中で一番になりたいわけじゃない。ただ、草矢さんと、少しでも一緒にいたいだけなんだ。
 でも、それをするには誰よりも一番にならないといけなくて……





 自己満足だって、わかってる。
 でも、この時間を……思い込みでしか無い草矢さんと一緒にいられる時間を、大切にしたかっただけなんだ。



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