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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

48話 「変形」その4

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「シャドウバインド!!」
クレアイリスに向けて複数の捕縛用の影で編まれた鎖が放たれる!

「うう!!シャインスピアー!!」咄嗟にクレアイリスも光の矢で応戦する!

ガイィーーンンン!!ガンガン!!ギィーーーーーン!! 
不快な魔法の激突音が周囲に響く!

「ほう!光属性か!コイツ案外当たりかも知れんぞ!」

「あっ!やっばぁ!!」貴重な光属性持ちなのが襲撃者達にバレてしまう。

「ん?!光属性?!コイツ!英雄のイリスかも知れんぞ!!」
イリスの事は魔族の中でも有名だ、重要目標人物に指定されている。

腰に触れる手を弾きながら、
「触んなあ!エッチ!馬鹿ーーー!!
イリス?!私がイリス様な訳無いじゃん!バッカじゃ無いの?!」
苦し紛れに苦しい言い訳をするが、聞く耳持たれず更に敵からの捕縛の手が激しく繰り出される。

「うう!うーー!!」バシッバシン!!
姿が見えない敵に苦戦するクレアイリス、何とかギリギリ敵が伸ばして来る手を正拳突きで捌く!

「ふふふ、女王のクレアでは無かったが予想外の大物だったな」
ゾクっとイリスに嫌な予感が予感が走る、コイツ!ヤバい奴だ!と。
距離を取ろうとするが遅かった、ガシッと頭を鷲掴みにされる。

「スタン!!」頭を掴まれて気絶攻撃を受けるクレアイリス。

「あ・・・」いとも簡単に魔法障壁を破られるイリス、意識が遠退いて行く・・・
「ううー!!えーい!!」ガツン!!「うっ?!」
最後の足掻きに顔と思われる場所に、思い切り頭突きをかますクレアイリス!

そして、シュウウ・・・クレアイリスの意識が無くなって変形が解除される。

「ほう?話しに聞いていたより大きいではないか?イリスは幼児だと聞いたが?」

イリス渾身の頭突きも相手には通用せず襲撃者に捕らわれたイリス。
もう大人と言って良い姿のイリスに興味津々の襲撃者。
グイっと頭を持ち上げて全身を観察している。

「成長したんだろ?」その点には余り興味を示さない別の襲撃者。
最近かなり色気を増しているイリスの美貌には興味を示さないので人種では無いのだろう。

しかしここで予想外の事が起こる、イリスが気絶してイリスの「隠蔽」のスキルも解除されたので首都に散開している捜索者達が一斉にイリスの居場所を感知したのだ。

え?つまりイリスは、今まで龍騎士から逃げる時に発動した隠蔽のスキルをそのまま発動したまま戦っていた?
そりゃ援軍が来る訳無いじゃん?!味方も感知出来ないんだから!アホかぁ!!

「ぬっ?!馬鹿デカい反応が急速に近づいてくる?!急いで退くぞ!」
おそらく地龍ブリックリンがイリスの異常を感知して急速に接近しているのだろう。

しかし1番先に到達したのは近くに居たミイだった!
「イリス隊長ーーーー!!!」
木を超えて飛び上がり襲撃者目掛けて魔法の槍をブン投げるミイ!

ズドン!!

「んな?!」
驚く襲撃者!さもあらん!槍はまっすぐにイリスの背中に突き刺さったからだ!

すると!「ううううーーーー!!!はあ!!」ガツーン!!「うっ?!」
突然イリスがまた襲撃者に頭突きをかます!

ミイがブン投げた魔槍は「白銀の聖槍」回復の槍だったのだ。
豪傑な父のロイに似なかったミイ、攻撃力はイマイチだが強力な聖属性を持っていた。
現在は龍騎士隊イリスの貴重な回復要員なのだ!

槍にして回復魔法をブン投げるのは単純に魔法の到達速度と射程を上げる為だ。
優雅さのカケラも無いが、とても優秀な「聖女」のミイなのだ。

「ううーー!!!!ホーリーソード!!」
自分の右手を聖属性の魔法の剣に「変形」させて自分を捕まえてる襲撃者に斬りかかるイリス!

「聖属性だと?!」
この攻撃は意外性があって、反応出来ずにモロに斬られた襲撃者!

ズバーン!これまた優雅とは言えない太刀筋で力任せに剣を振り下ろしたイリス!
どちらかと言うと棍棒を振り下ろしたオークと言った感じだ。
まぁ、闘士のイリスが急に剣を使えと言っても無理だわな。

太刀筋が悪く、それほどのダメージは受けなかったが数歩後ずさる襲撃者。
その隙にゴロゴロ転がってミイとの合流に成功したイリス!ダメージが蓄積して、もう立ち上がれ無いのだ。

「ちっ!」襲撃者は再度、影の鎖をイリスとミイに放つ!
「ホーリーブラストーー!!」それに対してミイが光の魔法で影の鎖を迎撃する!
イリスは全然回復して無くミイの足を掴んだまま腰を落としている。

バシューーーンン!!相反する魔法がぶつかり相殺し合う。
地龍ブリックリンの到達も目前に迫り、
「時間切れか、転移」襲撃者は転移陣を発動させて全員が悠々と消える・・・惨敗だ。

「うう・・・」頭突きの連続で脳震盪を起こしてイリスは動けない。
俯く額からは血がダバダバ流れている・・・
「隊長!」ミイが回復魔法で治療を開始するが流血はまだしも脳震盪はそう簡単には治らないのだ。

「「イリス!!」」そこに黒龍王化したブリックリンが到着する。

「あいつー!メチャクチャ固かった!悔しい!」俯いたまま叫ぶイリス。
自慢の頭突きが全然通用しなくて悔しがっている。

「それにアイツ・・・多分龍種だよ・・・」そう言い残して本格的に気絶するイリス。
「隊長!しっかり!」イリスの血でミイの軍服が赤く染まる。

「「龍種?」」イリスの言葉に改めて周囲の警戒を始めるブリックリン・・・

そこからブリックリンの嫌な予感通りに大規模戦闘が開始された。
襲撃者達が自分達が逃げる時間稼ぎに大量の魔物を首都に放ったのだ!

ワアアアアアアアア!!首都各所で悲鳴?いや!怒号が響く!
おそらく龍騎士達が魔物の迎撃しているのだろう。

かなりの被害が出たはずだが、ブリックリンや首都に散開していた龍騎士達と隊舎に残っていた完全武装状態の龍騎士隊イリスの第二小隊が即時応戦して魔物を食い止めたので市民に被害は殆ど無かったのだ。

その内、正規軍も緊急出撃して放たれた魔物は全て駆逐された。

防衛には成功したが、もし女王クレアが狙われていたら誘拐は成功していたと思われる。
結果的にイリスの「変形」が女王クレアを救ったのだった。


そしてイリスは・・・


重度の魔力欠乏症、脳震盪の精密検査、頭の裂傷に他各所打撲で全治3週間の重傷を負い入院した。
イタズラと訓練のサボりの代償はメチャクチャ高く付いたのだった。

「本当に!本当にお前は!あれほど身代わりはならぬと!!」

「ふいまひゃん!ふいまひゃん」

ベッドでグッタリしている重傷のイリスを見てガチ泣きしたクレアにビョンビョンと頬を伸ばされている頭に包帯グルグルのイリス。

「うふふふ、痛い?ねえ?痛いかしら?」

「ああーん!ごめんなさいエリカぁ!額をツンツンしちゃらめぇ!」

イリスよ早く良くなるのだぞ?
回復したら、お主にはサボりの件での査問会と懲罰委員会と龍騎士隊イリスの面々からの説教が待っているのだぞ?
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