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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

49話 「世界大戦の始まり」

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世界大戦の始まりは、西の大陸中央部にあるヴィグル帝国が北部を支配するゴルド王国へ侵攻した時から始まったと言う。

元々、火種しかなかった両国だったが遂に本格的に激突したのだ。
国力ではゴルド王国が圧倒しているがヴィグル帝国は「勇者」達の国、ゴルド王国は初戦から一気に押し込まれる状況らしい。

ヴィグル帝国に呼応してヴィアール共和国も中央大陸東部のゴルド王国の属国の制圧に動いたのだ。

攻め込まれた側も結託してヴィアール共和国に対抗する事になった。
連合軍7000対ヴィアール共和国軍5000が初戦の陣取りの小競り合いを開始している。
お互いに本軍は、まだ動いていない。

「始まっちゃったねー」

《そうだねー》

空の雲の中でイリスとエリカの暢気な声がして来る。

今回の戦いでは他人事のラーデンブルク公国に在籍しているイリスやエリカには本当に他人事だ。
しかし戦場が比較的ラーデンブルク公国が中央大陸に持つ所有地に近いので、クレアの命でイリスが急行した。

所有地と言っても住人は随分前に南の大陸に退去しているので空白地に近く、亜人は誰も住んで居ない。
その元集落は海龍に占拠されている。

「「ねえクレア?もう使わないなら、あの土地を海龍で貰って良いかしら?

「どうぞ・・・それで?何に使うのじゃ?」

「「クライルスハイムから「いちいち海に潜るのが面倒くさいから中央大陸のどこかに海龍の出先の行政機関を作って欲しい」って言われててね」

「ほう?そうなのか?龍種も色々と大変じゃのう」

飲み友の海龍王アメリアとエルフの女王クレアが酒を飲みながら、こんな密談をしていたとか。

得体の知れない連中の根城とかに使われるくらいならと管理を海龍に丸投げした。
現在は本当に海龍達の地上行政機関が置かれていて、龍だらけの街に周辺国の人間達は怖がって近くに寄り付きもしない。

本来なら小麦栽培に適した肥沃な土地に港湾施設もある魅力的な地域だったので、亜人撤退後、各国は是が非でも手に入れたかったのだが海龍にシュバ!と来られては打つ手が無いのだった。

「ふわー??」

「ふわー??」

ここの住人を護送してから30年ぶりに街に来たイリスとエリカは間抜けな声を上げる。

事前に聞いていた通りに街はマジで海龍で溢れていた。
そして海龍達の手で新しく作られた入管局の建物がデカいのだ。

「やっぱり海龍は大きいねぇー?カッコ良いねぇー」

「!!!グリフォンだって結構大きいモン!」

「???え?何で張り合ってるの?」

ちなみにグリフォンの平均的な大きさは翼を広げると10mと、エリカの言う通り結構デカいのだ。
グリフォンロードのエリカは翼を広げると13mと天龍並に大きい。
エリカってそんなにデカかったんだ・・・やーい、デカ女ー。

だから何?って話しなのだが・・・

ついでに言うと龍種の中でも大型の海龍の体長は平均で20mを楽に超える。
大体5階建てのマンションと同じくらいの高さになるのかな?
 
地龍で15m、天龍で8m(翼を広げると16m)あたりが平均と言われているので、改めて間近で見る海龍の大きさに圧倒されてしまうイリス。
その巨大でせっせと街作りの仕事をしている海龍達、お疲れ様です。

入管管理局と書かれている仮設小屋から「あー、人種の方はこちらへどうぞー」手を上げてイリス達に合図を送っている女性。
人に化けてる海龍のお姉さんに呼ばれて手続きをする二人。

何の手続きかと言うと、「これから海龍の支配域に入りたいけど良いっすか?」との手続きである。
これをやらないと海龍達の援護が受けられないので、かなり重要な手続きだ。

「えーと?それでイリスさんの今回の目的は?・・・・」
イリスが事前書いて提出した書類を確認する海龍のお姉さん。

今回は上空から遠視を使って中央大陸東部戦線の戦闘状況を偵察するのが目的だ。
「エリカの上に乗り雲に隠れて戦いを観戦をします」とか結構詳細な申請が必要になるのだ。

「はい計画を承認します、後は・・・えーと?エルフの女王クレア様の派遣承認の書類もちゃんと有りますね、はい大丈夫です。
手続きに問題ありませんでしたが危険地域なので気をつけて下さいね」

「はーい」

と、こんな感じに、やたらと事務的に中央大陸入りしたのだ。
そして予定通りに雲に隠れて観戦スタート。

ワアアアアアアアア!!!!
川を挟んで睨み合っていたが連合軍側が川を超えて激突する両軍!
攻勢連合軍、守勢ヴィアール共和国と言った図式だ。

「・・・エリカはどっちが勝つと思う?」
戦闘が始まるとさすがに真剣な顔つきになるイリス。

《ヴィアール共和国だねー》

「なんで?」

《だって連合国軍、統制取れて無いモン》

東部地方一強のヴィアール共和国に周辺7カ国が連合を組んで対抗しているが、エリカの目には、連合軍国側は統制が取れて無い様に見えるらしい。

「そう?意外に拮抗している様に見えるけど?」
実際に連合軍側の渡河を阻止出来なかったヴィアール共和国側が若干不利な戦況なのだ。

《左翼にいる軍団約1000人が全然動いて無いでしょ?本来なら数に任せて全軍突撃して包囲するはずなのよ。
でも何故か左翼が川を越えずに動いて無いのよねー》

「本当だね・・・何で動かないの?」

《うーん?・・・・・・・・・・分かんない!》
分からない事は分からないとハッキリと指揮官に伝達するのも参謀の役目なのだ。
知ったが振りの参謀が居る軍は、一気に総崩れ全滅、なんて事になりかねないのだ。

「なにそれ?」
それでも少しは何か言えよ?と苦笑いのイリス。

《それを調べるのが今回の偵察なのよ》

「あっなるほどねー」

つまりそう言う事だ。
7カ国連合自体が胡散臭く思える女王クレアが内情を探って来て欲しいと所望している。
何故なら7カ国全てが仲が良い訳では無い、むしろ通常時は利権絡みで敵対している事の方が多い国々なのだ。

「ならどこかと接触して見る?」

《接触は戦いの推移と結果を見てからだね》

戦いは2時間ほど続き、エリカの予想通りに連合国軍は左翼から崩れて敗走した。

「今回の戦い、エリカはどう見たの?」
イリスの所感としては、「どうもパフォーマンス臭い戦い」だ。

《パフォーマンスだね、2時間も戦闘をした割に両軍の被害が少ないわ》

「どう言う事かな?」

《分からないから左翼に居た連中と接触して見ようか?》

「そうだね」

イリスとエリカは最後まで動かなかった左翼部隊1000名と接触して見る事にした。
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