死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

鳴咲ユーキ

文字の大きさ
5 / 8
一章 ‪✕‬‪✕‬たい

四話

しおりを挟む
「んっ」
 どこからかさす光に目がくらんだ。
 ここはどこだ……?
 俺はちゃんと死ねたのだろうか。

 目を開けて辺りを見回す。
 俺は白いベッドの上に病衣を着て寝っ転がっていた。腕には点滴がされている。足は動かない。ちょっと動かそうとするだけで、猛烈な痛みに襲われる。どうやら、両足を複雑骨折しているようだ。
 痛みがあるなら、ここは天国じゃない。
 ……病院か?
 俺は死ねなかったのか?

 コンコン。
 突然、病室の窓を叩いたような音が聞こえた。何かと思って窓を見ると、窓の外に、青年がいた。

 雲一つない快晴の空のような青い髪をしている。まつ毛が長くて、瞳が茶色い。鼻筋がすっと通っていて、青い髪と吊り上がった瞳が、ガラの悪さを醸している。身長はこいつの方が俺より少し高いくらいだ。差は五センチもない。

 ――ん?
 奴が着ていた白シャツと学ランのズボンの所々に血がついていた。
 ――こいつ、自殺する前に見かけた男だ。
 俺、こいつとあの茶髪の男に助けられたんだ!
 涙が零れた。
 やっと死ねると思ったのに……。 

 神様はひどい。

 いじめてとも、姉を殺してとも、親を殺してとも頼んだつもりはない。それなのにおれをいじめて、みんな殺した。俺だけ生かした。そんなの頼んでないのに。
 俺は姉が家にいるだけでよかったんだ。
 毎日姉が帰ってくるのを待てるだけでよかった。それだけで幸せだった。
 俺がお帰りと言ったら、ただいまといって笑ってくれる姉と一緒にいるだけでよかったのに。
 誰でもいい。
 殺人鬼でも、強盗犯でも、いじめっこでも、その親でもいい。
 誰でもいいから、頼むから俺を殺してくれ……。

 俺は祈るような想いで頭を抱えた。

 足の痛みが折れたせいではなくナイフとかで刺された痛みだったらよかったのに。
「開けろ」
 青髪の男がいう。
 うるさいな。
 こっちは生きてる事実に絶望してて、お前に構ってるどころじゃないんだよ。
 青髪の男が窓を叩いたが、無視した。

 十回くらい連続で窓を叩かれる。

「うるせえ!!」

 あまりのしつこさにイライラして、思わず窓を開けて叫んだ。
 窓はベットの前にあるから、足が折れてても動かせる。

「あ、やっと開けた」
「なんでドアじゃなくて、窓から入ろうとすんだよ」
「いやごめんごめん、他人だから面会断られてさ。それで思わず。一階だったから、窓からでも入れるかと思って」

 俺が足を骨折してて下半身をろくに動かせないから、病室は一階にある。
 一階なら確かに、窓から入ろうとしたら、できなくはない。でもいくらなんでも窓から入れると言って、面会を断られたのに入ろうとする奴がいるか? いないだろ!!

「なんの騒ぎですか?」
 看護師が病室に入ってくる。
「あ、やべ」
 青白い顔をして男は言う。

「亜月くん? 面会がだめだったからって窓から侵入しようとしたの? 帰って! そんなの絶対ダメだから」

 どうやらこいつは亜月というらしい。

「えー、別にいいじゃん」
「何も良くないです!」
「はいはい。帰ります。よかった。足は折れてるみたいだけど、叫べるくらいには元気みたいで。じゃあな」
 亜月の言葉を聞いて、思わず目を見開く。
 俺が元気だって? そんなの勘違いも甚だしい。

「おい」
 病院を後にしようとする亜月を呼び止める。

「え?」
「俺のどこをどう見たら元気だなんて言えるんだよ。……なんで、なんで生かしたんだよ!! 俺は死にたいのに……っ」
 掠れた弱々しい声が漏れた。
 八つ当たりにも程がある。
 そうわかっていても、こいつのせいで死ねなかったのが我慢ならなくて、思わず言ってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...