死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。

鳴咲ユーキ

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一章 ‪✕‬‪✕‬たい

五話

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「赤羽くん、何言ってるんですか」
「そんなこと言うなよ。死んだら何もかも終わりだ」

「だから、俺は終わらせたかったんだよ!」
 声が枯れる勢いで叫ぶ。
 殺されたかった。生かされたくなかったのに。


「……死んだら楽になんのか。あんたは死んだら幸せなのか? あんたは死ねたら喜ぶのか?」
 やたらでかい声で、亜月は叫んだ。


「……ああ、そうだよ! 俺は生かせなんて頼んでない!」
 負けじと叫び返そうとしたら間ができた。けれど、その理由は考えないことにした。


 自分は殺されなきゃいけない。――それ以外は許されないのだから。



「ちょっと、二人ともやめなさい!」
 看護師が俺と亜月に注意をする。それを無視して、亜月は言う。
「……お前、死にたいなんて思ってないだろ」
 予想外の言葉に目を見開く。


 ――死にたいと思ってないだって?


「潤。あー、お前を助けた時、一緒にいた奴がいってたんだよ。飛び降り自殺は高ければ高いほどリスクが高くなる。それは逆に言えば、低ければ低いほど死なない可能性が高いってことだって。本当に死にたいなら、もっと高いとこから飛ぶんじゃねぇの?」


「……足場が悪かったから、低くても死ねると思っただけだ」
 声が小さくなった。何でかはよくわからない。


「じゃあわざわざ俺達の目の前に落ちたのは? 反対側でもなんなら隣のビルのもっと上の階でもよかったよな。その方が死ねた」


「それは……」
 探すのがめんどくさかったから、あそこにした。そのハズだった。実際めんどくさいと本気で思ってたハズなんだ。けれど、何故かそう言おうと思っても、声が出なかった。

 ――矛盾している。

 死に場所を探すのがめんどくさいから、死ぬのもめんどくさいのではなく、死にたいのに探すのはめんどくさいなんて。
 心の底から死にたいと思ってるなら、もっと確実に死ぬ場所を選ぶことだってできたのに。それな
のに、俺はそうしようとしなかった。
 めんどくさいとかではなく、たぶんまだ心のどこかで死にたくないと思っていたから。
「――目の前で死ねば、助けてくれると思ったんじゃないのか」
 それは、俺が一番聞きたくない言葉だった。


「思ってない。帰れ」

 掠れた自信なさげな声が漏れた。
「奈々絵」
「帰れ!!」
 大声で言う。
 俺はもう何も聞きたくないと言うかのように、布団を頭にかぶった。

「また来る」
 亜月がいう。

「亜月くん、また窓から侵入しようとしたら困るから、しょうがないので、次回から面会は許可しますけど、今日みたいに面倒を起こしたらすぐに帰らせますからね。あと面会の時は、看護師付き添わせますから!」
「よっしゃ! ありがとうございます! またな、奈々絵!」
 布団に向かって声をかけられる。
 何がまた来るだ。
 くそが!!
 親戚も同級生も、みんな死ねって言ったんだ。俺が息をしてるのは許されない。
 それでも、本当は怖かった。
 飛び降りようとした時、足が震えた。涙が流れそうになった。
 けれど、それがなんだ?
 怖いことは死なない理由にはならない。
 死刑を言い渡された人間が、そんな感情一つで罰が軽くならないのと同じように。
 死ねって言われたら、死ななきゃいけない。
 だって、そうしないと毎日死ねって言われるんだから。そんなの地獄でしかない。それなのに、何で否定しなかった。
 嘘でも否定しろよ!! でないと、あいつは俺がまた死にに行ったら、また止めるのに。
 涙が頬を伝う。
 ……本当は死にたくない。
 俺は布団をぎゅっと握りしめた。
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