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コミカライズ記念 特別番外編【宮ノ入シリーズ①:恋人編】
12 諦めたくない ※綾香視点
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――私が負ける? そんなことありえない!
会議後の昼休み、社長室の前に立ち、ドアを睨みつけた。
秘書課の知り合いが言うには、美桜さんは取引先へ持っていくお菓子を取りに行ったとか。
瑞生が一人になったら、連絡してと頼んでおいて正解だった。
――このまま、なんの成果もなく戻ってたまるものですか!
そっと社長室のドアを開く。
社長室に入ると、瑞生はソファーに横になり目を閉じていた。
部屋に入ってきたのが美桜さんだと思っているのか、瑞生は油断し、微動だにしない。
瑞生が眠るソファーに膝をつき、上着の中へ指を滑らせた。
「ねぇ、瑞生? 私はね、昔からあなたが好きだったのよ」
甘い声で瑞生の耳元に囁いた。
唇にキスをしようとした瞬間、瑞生が目を開け、冷ややかに私を眺めていることに気づいた。
「お前で何人目だろうな」
「え?」
「眠っている俺を襲ったのは、お前が初めてじゃない」
そう言った瑞生の目は恐ろしく冷たく、顔色一つ変えなかった。
――押し倒されることに慣れてる男ってどうなのよ?
「俺の眠りが浅いのは、お前のような人間がいるからだ」
言葉に熱を感じさせない瑞生から、そっと体を離した。
諦めるというより、自分の身を守るという感情のほうが近い。
「だが、俺は美桜のそばだと、安心して眠れる」
「どうして、美桜さんのそばだけ……?」
瑞生は怖い顔をしたまま、くしゃりと前髪を握った。
「彼女だけは、俺に興味を持たず純粋にそばにいただけだったからだ。しかも、一度は結婚を断られたしな」
「断った!?」
勿体無いどころの話ではない。
宮ノ入グループの社長なら、『愛人でもいい』と言う女性もいる。
それこそ、何人も――
「俺は彼女の前だと、どんな人間でも許される気がする。社長じゃなくても、宮ノ入のトップでなくても、そばにいて笑ってくれるだろう」
――私は社長じゃなくても、瑞生を愛せる?
そんなのわからない。
私は宮ノ入のトップになる男と結婚したい。
社長じゃない瑞生を愛せるとは、即答できなかった。
瑞生はそんな私を笑った。
「お前は俺が宮ノ入グループの社長だから、結婚したいだけだ。俺を愛しているわけじゃない」
「……あなたは誰も愛せない人間だと思っていたわ。結婚するなら、私しかいなかった」
「今は違う」
「そのようね」
瑞生は自分の気持ちを伝えるのも苦手なほうだった。
それが、私の目を見て、きちんと自分のことを話す。
会長の思い通りになる人間ではない証拠に、その目は冷たいだけじゃなくなっていた。
瑞生はソファーから起き上がり、上着を整えた。
「綾香。言っておくが、美桜以外、俺の子は産めない。宮ノ入の跡取りが欲しいなら、俺の結婚を黙って認めろと、祖父に伝えろ」
「それを女性の私に言わせるの?」
「お前が俺に迫って押し倒すことくらい祖父はお見通しだ。だから、お前から伝えたほうが納得する」
「私を利用するの!?」
「祖父に利用されておいて、今更だろう?」
瑞生は悪い顔をして笑った。
「綾香、年寄りの暇つぶしに使われるな。海外支店へ戻り、仕事をしろ。無能な人間は宮ノ入にはいらない」
立ち上がった瑞生は、社長室のドアを開け、私に外へ出るように促した。
「海外支店に戻って仕事をするわ……」
「ああ、そうしろ」
瑞生は止めなかった。
――人生で初めての屈辱と敗北感。
でも、雅冬。
あなただけは手放さないわよ。
瑞生を失った私には、雅冬の妻という可能性がまだ残されている。
――美桜さん、これで勝ったなんて思わないことね。私は戻ってくるわ。雅冬の妻になってね!
唇を噛み締め、涙を堪えた。
私の背後で閉められたドア。
そのドアは私のためには開かない。
瑞生がドア開けるのは、美桜さんを迎える時だけなのだから――
会議後の昼休み、社長室の前に立ち、ドアを睨みつけた。
秘書課の知り合いが言うには、美桜さんは取引先へ持っていくお菓子を取りに行ったとか。
瑞生が一人になったら、連絡してと頼んでおいて正解だった。
――このまま、なんの成果もなく戻ってたまるものですか!
そっと社長室のドアを開く。
社長室に入ると、瑞生はソファーに横になり目を閉じていた。
部屋に入ってきたのが美桜さんだと思っているのか、瑞生は油断し、微動だにしない。
瑞生が眠るソファーに膝をつき、上着の中へ指を滑らせた。
「ねぇ、瑞生? 私はね、昔からあなたが好きだったのよ」
甘い声で瑞生の耳元に囁いた。
唇にキスをしようとした瞬間、瑞生が目を開け、冷ややかに私を眺めていることに気づいた。
「お前で何人目だろうな」
「え?」
「眠っている俺を襲ったのは、お前が初めてじゃない」
そう言った瑞生の目は恐ろしく冷たく、顔色一つ変えなかった。
――押し倒されることに慣れてる男ってどうなのよ?
「俺の眠りが浅いのは、お前のような人間がいるからだ」
言葉に熱を感じさせない瑞生から、そっと体を離した。
諦めるというより、自分の身を守るという感情のほうが近い。
「だが、俺は美桜のそばだと、安心して眠れる」
「どうして、美桜さんのそばだけ……?」
瑞生は怖い顔をしたまま、くしゃりと前髪を握った。
「彼女だけは、俺に興味を持たず純粋にそばにいただけだったからだ。しかも、一度は結婚を断られたしな」
「断った!?」
勿体無いどころの話ではない。
宮ノ入グループの社長なら、『愛人でもいい』と言う女性もいる。
それこそ、何人も――
「俺は彼女の前だと、どんな人間でも許される気がする。社長じゃなくても、宮ノ入のトップでなくても、そばにいて笑ってくれるだろう」
――私は社長じゃなくても、瑞生を愛せる?
そんなのわからない。
私は宮ノ入のトップになる男と結婚したい。
社長じゃない瑞生を愛せるとは、即答できなかった。
瑞生はそんな私を笑った。
「お前は俺が宮ノ入グループの社長だから、結婚したいだけだ。俺を愛しているわけじゃない」
「……あなたは誰も愛せない人間だと思っていたわ。結婚するなら、私しかいなかった」
「今は違う」
「そのようね」
瑞生は自分の気持ちを伝えるのも苦手なほうだった。
それが、私の目を見て、きちんと自分のことを話す。
会長の思い通りになる人間ではない証拠に、その目は冷たいだけじゃなくなっていた。
瑞生はソファーから起き上がり、上着を整えた。
「綾香。言っておくが、美桜以外、俺の子は産めない。宮ノ入の跡取りが欲しいなら、俺の結婚を黙って認めろと、祖父に伝えろ」
「それを女性の私に言わせるの?」
「お前が俺に迫って押し倒すことくらい祖父はお見通しだ。だから、お前から伝えたほうが納得する」
「私を利用するの!?」
「祖父に利用されておいて、今更だろう?」
瑞生は悪い顔をして笑った。
「綾香、年寄りの暇つぶしに使われるな。海外支店へ戻り、仕事をしろ。無能な人間は宮ノ入にはいらない」
立ち上がった瑞生は、社長室のドアを開け、私に外へ出るように促した。
「海外支店に戻って仕事をするわ……」
「ああ、そうしろ」
瑞生は止めなかった。
――人生で初めての屈辱と敗北感。
でも、雅冬。
あなただけは手放さないわよ。
瑞生を失った私には、雅冬の妻という可能性がまだ残されている。
――美桜さん、これで勝ったなんて思わないことね。私は戻ってくるわ。雅冬の妻になってね!
唇を噛み締め、涙を堪えた。
私の背後で閉められたドア。
そのドアは私のためには開かない。
瑞生がドア開けるのは、美桜さんを迎える時だけなのだから――
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