御曹司社長は恋人を溺愛したい!【宮ノ入シリーズ③】

椿蛍

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第一章

3 土曜日のシンデレラ

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「でねっ!沖重おきしげの新しい社長。すっごく素敵なの!」
双子の妹、凛々子りりこは興奮気味に言った。
「へー」
秘書達の鉄壁のガードで見れなかったことが悔やまれるなぁ。
凛々子りりこ。私、今からバイトだから、もう行くね」
「休みじゃないの」
「うん。忙しくて」
「ふーん。まあ、いいわ。デートだし」
凛々子はどの人とデートなんだろ。
こないだは消防士と付き合っていたけど。
すぐに変わるからなあ。
付き合うたびに報告してくる。
まるで、戦利品扱いだ。
これだから、なおさら男の人と待ち合わせなんて、凛々子には言えない。
あれは中学生の頃―――私のことを好きだと言う物好きな男子がいた。
でも、それは本当に好きだったのか、どうかはわからない。
気づいたら、凛々子と付き合っていたから。
高校生の時も私が告白されたはずなのにいつの間にか凛々子が彼女になっていた。
まあ、どの人も私自身、恋愛感情を持っていなかったから、構わないけど。
持っていたら、辛かっただろうな…。
友人のように仲良かった男子と一時期、付き合い、別れた後、凛々子が付き合ったのにはドン引きだった。
私はいいけど、凛々子はそれで勝ち誇った顔をしていたのが、不思議だった。
それは元彼だ!もう彼氏じゃないんだよ!!!
と言ったところで、わかってもらえそうになかったので、黙っていた。
結局、高校を卒業するまでは付き合って、大学に入学すると同時に別れたみたいだったけど。
何かにつけて、張り合うんだから。
雅冬まさとさんはご飯に連れて行ってくれるというけど、パーカーにジーンズはあんまりかと、思ったので紺のシックなワンピースに白のカーディガンを羽織った。
あんまり、いつもの服装とかけはなれたら、おかしく思われて面倒だ。
これでいいや。
メイクもファンデーションくらいで、慌てて外に出た。
「ばれなかったよね!?」
ドキドキしながら、家から離れ、いつもは夜に行く、ベイエリアに向かった。
明るいせいか、雅冬まさとさんの雰囲気が違って見えた。
色素の薄い髪と瞳、快活かいかつそうな雰囲気と自信に満ちた空気。
世辞せじ抜きでかなりかっこいい部類じゃないだろうか。
「お、菜々子ななこ。ちゃんときたな!」
子供にやるようにぽんぽんっと頭を叩かれた。
雅冬さんはきちんとした大人みたいに見えた。
地味じみだな」
「え?」
「お前。まだ若いんだから、明るい格好をしろよ。よし。いいところに連れていってやろう」
雅冬さんは腕をつかみ、運転手付きの車に連れていった。
「服を買いにいく。あと、美容院」
「かしこまりました」
な、なんだこれは。
ベンツってやつじゃ。
運転手もいるし。
もしかして、お金持ち!?
「あ、あの」
「驚いたか!」
なにその得意顔。
「お前はいまいち、俺のすごさをわかってないからな。ちょっとわからせてやろうと思っていた」
「えええ!?」
ご飯だけと思っていたのに、まさかの展開に唖然あぜんとして、なにも言えなかったのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


雅冬さんはドレスを買い、アクセサリーや靴、美容院まで連れていき、郊外こうがいの高級フレンチレストランに連れてきてくれた。
どこからどうみても、お嬢様みたいな姿になっていた。
ドレスはピンクのワンピースでメッシュ生地に花模様の刺繍ししゅうがしてあり、腰の辺りに細いリボンのベルト、たけは膝下で上品なかんじになっている。
銀色のバッグとパールのイヤリング、ネックレスに銀色のパンプスを買ってくれた。
髪は緩いパーマをかけ、アップにされ、メイクも全部してくれた。
こんな格好は初めてで、ずっと「はあ」とか、「いえ」とか、そんな返事しかできなかった。
雅冬さんはかなり満足したらしく、嬉々としていたけど。
「いらっしゃいませ」
宮ノ入みやのいり様。日本にお戻りだったんですね」
黒いドレスを着たマダムが出てきた。
この店のオーナーみたいだった。
「ああ」
「またご贔屓ひいきになさってくださいね。お母様ともども」
一瞬、嫌そうな顔をしたけど、すぐに元に戻り、にこやかに笑った。
「母に伝えておきますよ」
席に案内されると、ワイングラスが置かれた。
「飲めるのか?」
「はい。20歳過ぎてるので」
「そういえば、幾つだ?」
「24歳です」
「そうか。着飾ったら、もしかして20歳以上なのかと思っていた。やっぱりな」
子供と思われていたようだ。
わかってたけどね!
前菜は魚介のマリネのサラダ、自家製ハーブドレッシングがかかっていた。
「おいしい!」
「それはよかった。この店は自家栽培の野菜を使っていて野菜がうまいんだ。お前、ピザとかカツサンドばっかりだと、体に悪いだろ」
おっしゃる通りです。はい。
「ピザにはトマトソース入ってますよ。トマトソースは野菜なんで。セーフじゃないですか?」
「いや、トマトソースを野菜って言う時点でアウトだろ!?」
うわー。上品なコンソメスープ!
「はー。贅沢ですね」
「幸せそうに食べるな」
「はあ、まあ」
「服やアクセサリーを買った時は喜ばないし、どうしようかと思っていたぞ」
「驚きすぎてなにも言えなかったんですよ」
高級店に行くことないし、ジュエリーショップも初めて入りましたって。
「これがフォアグラ」
牛肉と一緒にでてきた。
なんのソースかわからないけど、ソースがかかっていた。
美味しすぎる―――一般庶民すぎて、そんな感想しか言えなくて申し訳ない気持ちだ。
デザートはクレープシュゼットで、リキュールとオレンジの香りがした。
「大人なかんじでした。ごちそうさまでした」
「そうだろ」
大人っていうところがポイントなのか、雅冬さんはドヤ顔をしていた。
食事が終わると、お店の前には運転手さんが待っていた。
「美味しかったです。ありがとうございました」
「言わなくてもわかる。いちいち、顔に出てたからな」
思い出し笑いをしていた。 
笑わなくても。一般庶民にはごちそうだったんだよ!!
車に乗ると、
「どちらまで送りましょうか」
と、運転手さんが聞いてくれた。
「あ、駅でお願いします。服を着替えたいので」
「なんだそれ。駅で着替えるとか。危ないだろ!そのまま、帰れよ」
「親が驚きますよ!」
「そうか。じゃあ、俺のマンションに寄って着替えて帰れよ」
「そっちの方が危ないですよ」
冷ややかな目で見ると雅冬さんは逆に怒ってきた。
「はあ?誰がお前みたいなお子さまに手を出すか!」
「失礼な!」
「お前のが、失礼だ!」
ぎゃあぎゃあと言い争っていると、運転手さんが苦笑して言った。
「とりあえず、マンションに送りますね」
子供二人を見るような目だった―――
 
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