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第一章
16 妹の本心
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「待ち伏せされたらしいな」
雅冬さんが帰って来ると、今日の夕方にあったことを一階の警備の人から聞いたのか、怖い顔をして言った。
あの時は偶然だと、思っていたけれど、後から聖子さんが私を待ち伏せていたことを知った。
だから、警備員さんがこちらを気にしていたのか。
「そんな酷いことをされたわけじゃないので大丈夫です」
「大丈夫なわけないだろう」
「少し会話した程度ですよ」
「……気分のいいものじゃないはずだ」
納得していないようだったけれど、あの程度で傷つく私ではない。
むしろ、雅冬さんに近寄らせないようにしたいくらいだし。
雅冬さんは優しいから、自分が聖子さんのイライラを受け止めて、周りにそれが向けられないようにしていることに気づいた。
八木沢さんと殴り合いするくらいに強いのに聖子さんの平手打ちを避けずにいた―――本当に強いのは雅冬さんだ。
「お腹空いたでしょ?温めますね。今日は豚の角煮にしたんですよ」
味噌汁を温め、いそいそとご飯を盛った。
以前はバイト前に家のご飯を作ってから、出勤していたので、作り置きや煮物にはちょっと自信がある。
どうぞ、と豚の角煮とほうれん草のお浸しをだした。
「うまい」
雅冬さんの強張った表情が柔らかくなり、ほっとした。
「よかった。おかわりもありますから。じゃんじゃん食べてくださいね!」
「なんか、いいな。家族みたいで」
雅冬さんは優しい顔で笑って言った。
「もう家族か」
「はい」
まだ正式に入籍はしていないけど、もう家族以上に安心できる相手ですよ、と思ったけれど、口には出さなかった。
雅冬さんも同じように思っているようだったから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「えーと、これが総務で、こっちが営業に渡す分ね」
頼まれた書類を持ち、届けると営業の女子社員に呼び止められた。
「真嶋さんって、受付の真嶋さんと双子なんですか?」
「はい、そうです。私が姉で」
「最近、妹の真嶋さん。痩せて暗い感じなんですよ」
凛々子が?
なにかあったのかな。
「そうなんですか。一度、話をしてみます。気にかけていただいて、ありがとうございます」
「いいえ」
ぺこり、とお互いに頭を下げた。
うーん。
怖くて、スマホを着信拒否にしていたけど、よくなかったのかな。
社長室に戻ると、誰かがいた。
「菜々子と別れてもらえませんか?」
凛々子だった。
なにを雅冬さんに言ってるの!?
「は?今さら、別れるわけないだろ」
雅冬さんが呆れた様子で凛々子を見ていた。
そして、ちょっと照れながら言った。
「もうすぐ入籍するしな」
凛々子は雅冬さんを睨み付けていた。
「私から菜々子をとるの?」
「ん?ああ、まあ、そうなるな」
「わ、私っ、認めませんから!」
「別に認めてもらわなくても構わない」
ぶるぶると凛々子は震え、涙を浮かべた。
「あなたなんか、大嫌いなんだから!」
そう言い捨てると、凛々子はバンッと社長室から飛び出して行った。
な、なんだったの。
「あの、今の……」
「また聞いていたのか?」
「わざとじゃないですよ!」
「お前、妹から好かれているんだな」
思いもよらないことを雅冬さんは言った。
「そんなわけ、ないです!だって、いつもバカにするし、嫌がらせするし!」
雅冬さんはやれやれとため息をついた。
「俺も今、話して気づいたくらいだからな。あいつの愛情表現は歪みすぎだろ。まあ、一度、本心を聞いてみたらどうだ。俺がそう思っただけかもしれないしな」
「はあ」
本当かなー。
凛々子は私を嫌いだと思っていたけど。
第一、私のことを好きなら、なんで私が嫌だと思うことをするのかわからない。
スマホの着信拒否を解除した。
今までが今までだっただけに信用できない部分がある。
演技では!?と思うんだけど。
疑いすぎ?
「なんなら、マンションに呼ぶか?怖いなら、同席するけど」
「いえ。二人で会います」
雅冬さんに何を言うかわからないし、今みたいに暴言を吐かれるのを見るのも辛い。
「じゃあ、そばに隠れて控えている。また変な男を連れてこられても、心配だからな」
元カレの恭くんのことか。
「わかりました」
確かに二人で会うのも不安だったので、雅冬さんに側に隠れていて、もらうことにしたのだった。
雅冬さんが帰って来ると、今日の夕方にあったことを一階の警備の人から聞いたのか、怖い顔をして言った。
あの時は偶然だと、思っていたけれど、後から聖子さんが私を待ち伏せていたことを知った。
だから、警備員さんがこちらを気にしていたのか。
「そんな酷いことをされたわけじゃないので大丈夫です」
「大丈夫なわけないだろう」
「少し会話した程度ですよ」
「……気分のいいものじゃないはずだ」
納得していないようだったけれど、あの程度で傷つく私ではない。
むしろ、雅冬さんに近寄らせないようにしたいくらいだし。
雅冬さんは優しいから、自分が聖子さんのイライラを受け止めて、周りにそれが向けられないようにしていることに気づいた。
八木沢さんと殴り合いするくらいに強いのに聖子さんの平手打ちを避けずにいた―――本当に強いのは雅冬さんだ。
「お腹空いたでしょ?温めますね。今日は豚の角煮にしたんですよ」
味噌汁を温め、いそいそとご飯を盛った。
以前はバイト前に家のご飯を作ってから、出勤していたので、作り置きや煮物にはちょっと自信がある。
どうぞ、と豚の角煮とほうれん草のお浸しをだした。
「うまい」
雅冬さんの強張った表情が柔らかくなり、ほっとした。
「よかった。おかわりもありますから。じゃんじゃん食べてくださいね!」
「なんか、いいな。家族みたいで」
雅冬さんは優しい顔で笑って言った。
「もう家族か」
「はい」
まだ正式に入籍はしていないけど、もう家族以上に安心できる相手ですよ、と思ったけれど、口には出さなかった。
雅冬さんも同じように思っているようだったから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「えーと、これが総務で、こっちが営業に渡す分ね」
頼まれた書類を持ち、届けると営業の女子社員に呼び止められた。
「真嶋さんって、受付の真嶋さんと双子なんですか?」
「はい、そうです。私が姉で」
「最近、妹の真嶋さん。痩せて暗い感じなんですよ」
凛々子が?
なにかあったのかな。
「そうなんですか。一度、話をしてみます。気にかけていただいて、ありがとうございます」
「いいえ」
ぺこり、とお互いに頭を下げた。
うーん。
怖くて、スマホを着信拒否にしていたけど、よくなかったのかな。
社長室に戻ると、誰かがいた。
「菜々子と別れてもらえませんか?」
凛々子だった。
なにを雅冬さんに言ってるの!?
「は?今さら、別れるわけないだろ」
雅冬さんが呆れた様子で凛々子を見ていた。
そして、ちょっと照れながら言った。
「もうすぐ入籍するしな」
凛々子は雅冬さんを睨み付けていた。
「私から菜々子をとるの?」
「ん?ああ、まあ、そうなるな」
「わ、私っ、認めませんから!」
「別に認めてもらわなくても構わない」
ぶるぶると凛々子は震え、涙を浮かべた。
「あなたなんか、大嫌いなんだから!」
そう言い捨てると、凛々子はバンッと社長室から飛び出して行った。
な、なんだったの。
「あの、今の……」
「また聞いていたのか?」
「わざとじゃないですよ!」
「お前、妹から好かれているんだな」
思いもよらないことを雅冬さんは言った。
「そんなわけ、ないです!だって、いつもバカにするし、嫌がらせするし!」
雅冬さんはやれやれとため息をついた。
「俺も今、話して気づいたくらいだからな。あいつの愛情表現は歪みすぎだろ。まあ、一度、本心を聞いてみたらどうだ。俺がそう思っただけかもしれないしな」
「はあ」
本当かなー。
凛々子は私を嫌いだと思っていたけど。
第一、私のことを好きなら、なんで私が嫌だと思うことをするのかわからない。
スマホの着信拒否を解除した。
今までが今までだっただけに信用できない部分がある。
演技では!?と思うんだけど。
疑いすぎ?
「なんなら、マンションに呼ぶか?怖いなら、同席するけど」
「いえ。二人で会います」
雅冬さんに何を言うかわからないし、今みたいに暴言を吐かれるのを見るのも辛い。
「じゃあ、そばに隠れて控えている。また変な男を連れてこられても、心配だからな」
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「わかりました」
確かに二人で会うのも不安だったので、雅冬さんに側に隠れていて、もらうことにしたのだった。
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