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二十九 一度だけの春の陽。
しおりを挟むこれは、とある街にある小さな神社に祀られている龍神様とお友達のお話。ここには龍之介と太郎という神様が住んでいる。二人は仙人や精霊や動物、人間の子供、もちろん神様たちが気軽に遊びに来られるようにお食事処を始めてみた。そんな小さな神社のたくさんのお話の中の小さな小さな出来事。
安田神社から大きな川を越えて少し歩いたところに丘から始まる山がある。国有林として守られているため、人はさほど入らない。ただ、手入れのために入るだけだ。
その丘の中腹あたりに湧水でできた池がある。その池にはいつからいるのかナマズやカメやアカハライモリなんかが住んでいた。メダカもスイスイと泳いでいる。古い時代の残り香のように、ひっそりとただそこに在った。
その池のほとりには大きな椿の古木が一本凛として佇んでいた。
この辺りには昔寺があり、和尚がいつも池のほとりをきれいに保ってくれていたのだが、次ぐ人がいなくなってしまったのか、いつのまにか廃寺になってしまっていて、苔むした本堂の残骸は、まるで幽霊屋敷のようで、人も誰も寄りつこうとはしなかった。
この、古く苔むした廃寺の奥にひっそりと一人の精霊が住んでいた。
池のほとりの椿の古木の精霊で、名を白夜といった。彼女は、遠い昔の恋を未だに大切にしていた。一生に一度の大切な思い出として。
空は抜けるように青く、寒空にも関わらず暖かげな陽射しをそそいでいる。
入り口の床几に座りプカリプカリとタバコを燻らせていた龍之介は、ハッと遠くから来る姿を見つけて手を振った。
「おお!白夜!よう来たの。もうそんな時期か。ささ中へ。おーい太郎さん白夜が来たので足湯を。」
白夜は、髪を一つにまとめて真っ白な椿でかんざしにしていた。海松藍色(みるあいいろ)に木賊色(とくさいろ)の葉っぱ、真珠色の椿の花を裾から袖にかけて刺繍した着物に銀鼠色(ぎんねずいろ)の帯を締め紅色の帯締めは月長石の椿の花をかたどった帯留めで留めていた。
「龍之介さん太郎さん、お邪魔いたします。あの人の大好きだった椿餅をこしらえてまいりましたの。お供えはしてまいりましたから。ご一緒してくださいまし。」
白夜の良い人は、アカハライモリの緋麿里(ひまり)といって、あの廃寺の池に住んでいた精霊だった。
無骨で無口な緋麿里は、苔と小さな木の芽で苔玉を作って暮らしていた。この苔玉は近くの森の精霊たちが自分の住んでいる所に飾って、幸せを祈っていた。
ある日、白夜の足元に落ちていた椿の花を大切に懐に入れて帰ろうとする緋麿里に、つい好奇心で声をかけたのは白夜の方だった。
「おや、緋麿里何をしていらっしゃるのかしら?私の花を持って帰るの?もう枯れてしまってよ。新しいのを摘みましょうか?」
白夜の思いがけぬ問いかけに、緋麿里は顔を赤くして立ち止まると、
「あ、あの。白夜様のお花はいつもとても美しくて。私のように地べたを這い回る生き物には気高すぎます。私はこの落ちた花を毎日一輪家に持ち帰るだけで幸せです。どうか、捨て置いてくださいませ。」
と、深々と頭を下げると走って家に帰ってしまった。
白夜は、それ以来毎日一番綺麗な花を緋麿里がやってくる時間に地面に落とし知らぬ顔をしてそれを拾って持って帰る姿を目の端に映していた。
どれくらいの時が経ったのだろう。白夜は、ある夜また緋麿里に声をかけた。
「ねえ、緋麿里。あのお花いつもどうしていらっしゃるの?」
すると緋麿里はまた顔を赤らめながら
「はい。あのお花は毎日床の間に飾って、そして次のお花に代わるときに食べております。毎日美味しいお花をいただいて、これからくる夏を元気に過ごせるようにと願掛けをしております。おかしいとお思いでしょう?私も変な癖だとおもってはおりますが、初めて白夜様のお花を食べた日のあの甘い味が忘れられず、また、その年の夏の元気だったことを覚えているものでそれ以来春先には、土から出てきてしばらく白夜様のお花を食べることにしたのです。そうしましたら他のイモリよりも長生きをしまして、精霊にまでなれました。白夜様のお花のおかげと苔玉を白夜様に差し上げたのが、精霊になってはじめての春でした。もし、ご迷惑でなければまた苔玉を持って参じてもよろしいでしょうか。」
そう丁寧に答えて、また新しい花を大切そうに抱えて家路につこうと池に向き直った。
「待って。緋麿里、待ってちょうだい。あの苔玉、大切にしているのだけれど大きくなってきて。ここに松が生えてしまうと二人では狭いでしょ?だから、池の向こう側に植えたのよ。だから新しい苔玉を作ってくださる?あやめか、鷺草で。いけないかしら。」
白夜は、緋麿里に振り向いて欲しくてそう声をかけた。
緋麿里は一瞬こちらに向かってこくりと頷くと足速に家に帰ってしまった。
白夜は、なぜ声をかけたのかと気を揉んで悔やんだ。あれ以降いつも緋麿里は足速で、しかもいつも手近な花をさっと取ると走って行ってきまう。
白夜は、淋しくて、哀しくて、夜な夜な涙をこぼして過ごすことになってしまった。
一方緋麿里は、白夜に似合う苔玉をと、姫菖蒲や鷺草の苔玉を何個も何十個も作っては、これではダメだと思い悩んでいた。精霊たちは、最近緋麿里が出す苔玉が二種類しかないことを不思議には思ったが、池の近くの精霊たちの噂話を漏れ聞いて、「恋だな。」などと噂話に花を咲かせていた。
ある日やっとこれだと思えるものが出来上がった緋麿里は、小躍りしたいのを抑えながらいつものような顔で白夜の元にやって来た。すると、あんなに透明で美しく輝いて見えていた白夜がしょんぼりと椿の根方に座り込んでいる。緋麿里が駆け寄ると
「緋麿里、こんばんは。私、もう枯れてしまいそう。この気持ちはなんでしょね。あなたとおしゃべりができないだけでこんなにも辛くて痛いなら、私はもう枯れてしまおうと思うのよ。だから、お花は今年で最後。ごめんなさいね。他の椿のお花を召し上がってね。」
白夜はそう言い、大粒の涙を流した。
緋麿里は、自分が毎日足速に帰っていたことを恥じた。
「白夜様、この苔玉をお渡ししたくて、毎日毎日気にいるものができずにいたのです。どうか元気をお出しください。私などでよければいつでも話に参じます。ですから、枯れないでください。どうか、どうか枯れないでいてください。」
そう言うと、まだ芽が出て間もない鷺草の苔玉を足元にそっと置いて膝まずき白夜の手をとった。
無骨で、それでいて温かみのある優しい手に包まれ白夜は少し輝きを取り戻した。そして、それ以来毎日緋麿里は池の中で起こった魚たちや巻き貝たちの話を聞かせ、白夜は、鳥たちの噂話やこの森の話を尽きることなく語り合った。
ある日、白夜は緋麿里を伴い安田神社の龍之介のところにお茶を飲みにやって来た。
緋麿里は恐縮してなかなか入ろうとしないので、白夜が優しく手をとると引っ張って中に連れて来たのだ。
「おお、白夜。それにお前さんが緋麿里か。今日は椿餅を作ったから食べなされ。お茶は緑茶でいいかな?そんなに固くならずともいいんじゃよ。わしらは、気楽な神ゆえ。さ、座敷に上がりなされ。」
太郎が持ってきた足湯にお礼を言うと白夜は足湯を使い座敷に座った。緋麿里は見よう見まねで足湯を使い、恐る恐る座敷の下座に座り、龍之介と太郎にと土産にこしらえた苔玉を渡した。
「おお!なんとも味わい深い紅葉の苔玉じゃ。美しいの。大きくなれば我が杜に植えればいいの。太郎さんのは銀杏かね。これはまた。この苔玉からちょっこり頭を出しておってなんとも可愛いの。ありがとうの。ささ、熱いうちに。餅もたんとあるからの。」
そう言い二つの苔玉を床の間に飾り池の周りの噂話や、寺の住職が老いぼれてきていて近頃は後継問題で難儀していることなど、つきぬ話に花を咲かせた。
緋麿里はその間も白夜を見てはため息をついていた。そして餅を一口かじった。
「龍之介様!これをお作りになったのですか?美味しゅうございます。このような餅食べたことがございません。まるで白夜様の花のような甘い味です。心まで温かくなる。美味しゅうございます。」
それ以来、何度も二人で訪れては寺の話を聞かせてくれた。
住職が亡くなった時などは、二人で一晩泣き過ごし、菓子や蕎麦を食べて少しだけ元気を取り戻したりもした。
秋が深まると、緋麿里は必ず白夜の根元で冬支度をした。そばにいることができるだけで幸せだった。白夜の笑顔や優しい歌声、囁きを聴きながら、雪を待ち春を待つ。口数の少ない緋麿里がもっと口数を減らしても、白夜の優しい手がいつも繋がれていて本当に楽しく幸せだった。
寺の後継者探しは難行を極め、果ては廃寺とすることとなってしまった。
村人たちはこの辺りには寺も多く、山の上にあるこの寺よりも下にあるものの方が参りやすいと口々にして、淋しいほどにあっけなく寺の家財を麓の村中の寺に移してしまった。
寺の鐘も無くなってポッカリと穴が空いたような鐘楼に時たま雨宿りにやってくる動物以外に、寺に訪れる者は無くなってしまった。
頑丈に造られた寺は、しばらくは盗賊や家をなくした者たちに雨露をしのぐ場所を与えたけれど時の流れと共に苔むし誰も来る事はなくなった。
そんな、ある秋のことだった。
緋麿里は、冬支度のためにいつもより多くの小魚や虫などを食べ、いつもより少し太って見えていた。
「白夜様、少しお話がございます。」
いつになく深妙な面持ちで緋麿里は白夜に話しかけた。
「あら、どうしたの?緋麿里、その傷は何?すぐに手当てをしなくては。痛むでしょう。こちらに来て。」
白夜が手持ちの軟膏やサラシを用意していると、緋麿里は話し始めた。
「白夜様、これはみたこともないような大きなエビにやられた傷でございます。遠い国からやってきたのか、話す言葉も違い、池の中の小魚やエビや巻貝も数を減らしておりまして。わたくしもタナゴのことを守ったばかりに切り付けられてしまいました。この池には入り込む川がないので、なぜここにこのようなものが侵入したのかはわかりませんがこの池の危機かもしれません。ここに生きる物たちにとってあのおかしなエビは脅威です。龍之介様に相談に伺いたいのです。連れて行ってくださいませ。」
痛む背中を忘れたかのように熱弁するのだが、力が入るたびに血が溢れ、緋麿里の衰弱は激しくなるばかりだった。
白夜は傷の手当てをすると一番柔らかい苔のところに緋麿里を寝かせ、
「少し待っていて。お願いだから待っていて。龍之介さんをお連れするから。だから、待っていてね!」
そう叫ぶと一目散に安田神社へと駆け出した。下駄も履かず素足で走り出したものだから足先に血が滲んだ。それでも一刻を争うと思うと恐くてひたすらに走り、龍之介の元へ駆け込んだ。
「り、龍之介さん、お助けください。緋麿里が、緋麿里が。。。」
白夜は声にならぬほどに息切れして、説明もろくにできなかった。だが龍之介は、白夜を背負子に乗せると、太郎に後を頼むと言い残し廃寺の池へと飛んでいった。
かつては、和尚が丹精した美しい庭の苔むす池であったはずが草木が生い茂り、そこに池があることすらも忘れられているようだった。
時代が幾度となく変わり、人々は髷を切り、食生活を変えていき、そのエビは海を越えてやってきたのだ。
山の麓にできた養殖場から逃げてきたその海老は「アメリカザリガニ」と言う生き物だった。龍之介は、この池の下にこのザリガニが住めるよう池を作り、そこにもたくさんの生き物を置いた。
そして、緋麿里の治療に取り掛かろうと振り返った。
白夜と龍之介は、緋麿里が軟膏が効いて寝ているものだと信じて疑わなかった。
だから、ザリガニを優先してしまった。
緋麿里の体が少し小さくなっていた。そして、体も透けてきていた。
「この丸薬を、丸薬を飲みなされ!頼む!生きておくれ。」
龍之介は、緋麿里の口に丸薬をねじ込むと水を含ませた。
だか、緋麿里は薬を飲む力すらも、もう残ってはいなかった。
「龍之介様、池の皆を助けてくださりありがとうございます。わたくしは、精霊に向いた個体ではないのでしょう。ですので消えゆくこの身捨て置いてくださいませ。」
「白夜様、私目のような醜いものにまで心を砕いてくださりありがとうございます。白夜様と過ごせることができるなど考えもしませんでした。白夜様とお話ができて、本当に幸せでございました。こんなにも長い間生きておれるなど思いもよらず、白夜様をお守りできぬこと、、心からお詫び申し上げます。そろそろ、お暇の時間がやってきそうです。皆様が、いついつまでも仲良くありますよう、に、いの、って、、、おり、ま、、、、、」
緋麿里は、やわらかな光に包まれるとサラサラと陽の光の中にとけて行ってしまった。
白夜は、それ以来塞ぎがちになりしばらくの間龍之介にも会いに来なくなっていた。
時代は、目まぐるしく変わって行き、幾度かの戦火からもこの街は逃れることができ、この小さな山の周りにも静けさが戻った。
国有林化が決まり、池が手入れされるようになると、この辺り一帯に明るさが戻ってきた。
長い間木の中に閉じこもり、ただ季節のままに花をつけ実を落としていた白夜も、そろそろ緋麿里の話を聞いてくれる者のところへ行きたいと思い、重い腰を上げた。
季節は春。
そうだ、龍之介さんに会いにゆこう。
椿餅を手土産に。そして、彼の方のことをたくさん話そう。
こうして、春になる頃、白夜は龍之介や太郎に会いに来るようになった。
「あの方がいつわたくしを迎えにきてくださるかわかりませんが、ここにきて思い出を話すことができて本当に幸せです。いつもいつも同じ話を聞いてくださり本当にありがとうございます。」
白夜は、お茶を飲むとまた自分の庵へと帰っていった。
「龍之介さん。白夜は今宵も月を眺めているのだろうの。」
太郎はぐい呑みの酒をクイっと飲み干すとそう呟いた。
アメリカザリガニとノビルの酢味噌和えを小鉢に入れ、厚揚げの田楽と一緒に持ってきた龍之介は、
「そうじゃな。緋麿里がいつか迎えにくるまでの。ザリガニの酢味噌和えじゃよ。もう誰も食べなくなったらしい。こんなにも美味いのにのう。今日はこれで緋麿里の供養をしようの。」
月は、東の空を明るく照らして白夜の持ってきた白椿のひと枝が静かにかがやいていた。
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