全てを失った私を救ったのは…

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喧嘩

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「とにかくこいつの部屋を用意しろ、ファーラス。あと、風呂もだ」
「……」
「なんだ?口答えの次はだんまりか?それでも良いが、俺はやる時はやるぞ?」
「一つだけ、良いですか?」
「なんだ?」
「名はなんと?」
「リースだ、もう良いか。すぐに用意を始めろ」

ファーラスはメイドに指示を出すとバタバタと屋敷内へと移動をし始め、出迎えた時には大勢いたが、今は誰一人いなくなった。
残るファーラスは小さな声で私の名を呼び、そしてステッキを地面に軽く突いた。

「用意が出来たらお呼びします。ですが、その風貌では屋敷が汚れるため中庭の方からお願いします」

そう言うとファーラスは取り囲んだ衛兵の輪をすり抜け自身も屋敷内へと入っていった。
ファーラスとメイドが居なくなった屋敷の扉前。
ニコルは衛兵に持ち場へと戻る様命令すると、ぱらぱらと私達の側から離れていき、残ったのは私とニコルのみとなった。

「用意が出来るまでは多少時間がかかる。それでもキツく言ったからそれなりに早くはなると思うがな」

なんでここまで傲慢なんだ、と思った。
いくら王だとはいえ、これでは敵を作ってもおかしくない。
そう考えた後、ふとニコルの言葉を思い出した。
『その能力を使えば俺を狙う危険をいち早く察知でき、不平不満を言う輩を処分できるからだ』と。
もしかしたら王といっても味方がいないのでは……と疑問が浮かぶ。

「どうする?ここで待つか?」
「あの、降りたいです」
「あぁ」

ニコルは支えていた左手を緩め、私が降りるのを待った。しかし、私は一人では降りれそうに無かった。
乗った事が初めてなら降りるのも初だ。
地面を見て困惑する私を黙って見守っていたが、一向に降りない私に業を煮やしたのか手綱を持っていた右手を離し、私の肩を押し始めた。

「わっ!?」

押されバランスを崩した私は馬上からずり落ち地面に落下した。
左肩から落ちる形になり、鈍い音がした。

「痛っ」

地面でもがく私を見てニコルは『はっ』と軽く笑った。

「な、何するの!?」

ジンジンと痛み出す左肩を右手で摩りつつニコルに声を張り上げた。

「いつまでも降りないからだ」
「『ごめん』や『すまない』って言葉は無いの!?馬なんて乗った事無い。それはここに来る時に見たら分かるはずでしょ」
「……リース、誰に怒ってるか分かってるのか?」
「王様って言っても私と同い歳の男性、それに私はあなたと結婚するなんて一言も言ってない」
「お前、まさか拒否するつもりじゃないだろうな?」
「……拒否したらどうなるの?」

私の問いかけにニコルは馬を降りだし、私の目の前にやってくると無言で威圧してきた。
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