全てを失った私を救ったのは…

mock

文字の大きさ
9 / 68

二人のいざこざ

しおりを挟む
私の顔に触れたニコルの手は冷たかった。
それはまるでさっきまで氷か何かを持っていたと思える程で…。
ただ、打たれ、腫れが増す顔にはヒンヤリと感じ、その手に私は重ねるように手を合わせた。

「痛かったな」
「……はい」

二人の佇まいはまるで夫婦のような雰囲気を醸し、周りにいたメイド、衛兵は声を出さず見守るだけだった。
だが、ファーラスは違った。

「なにをしてるんです、ニコル様。そんな土を顔に貼り付けた奴に同情をするなんて!あなたにはちゃんとした婚約者がいるでしょう!?」

ファーラスの言葉は間違ってないみたいで、メイドや衛兵はその言葉を否定することは無かった。
だが、ニコルはその言葉を聞き返し、『そんな者はいない』と一蹴した。

「なにを寝ぼけた事を!?先代からの取り決めであなたはローウェル家のご令嬢と婚姻を結ぶ手筈でしょう!
今更その約束を反故にするつもりですか?」

私はローウェル家という家柄を知らない。
一平凡な家庭で貧しい環境に育った身では上流階級の人達が繰り広げる派閥や妬み、嫉妬など様々な感情が入り混じる社会とは縁遠いものである。
ただ、ファーラスが声高らかにいう令嬢との婚姻はニコルにとって嫌なものなのだろう…何度言われても『俺はしない』と突き放す。

「先代……父が勝手に決めた事だが、もうこの世にいない者の言葉に従うつもりはない、今の王は俺だ。
いくら先代からの付き合いとはいえ、王に歯向かう事は得策ではないな、ファーラス」
「しかし!?先日も15を祝う為わざわざお越しになった相手を捨てるのですか?」

ニコルとファーラスの言い争いを私は黙って聞いていた。
罵るファーラスは顔を赤らめ頭に血が昇ってる様子だ、一方でニコルは涼しい顔をし、完全に塞がってない窓から入る日の方を見ていた。

「……マリアとは上手くやれん、断りの返事を出しておけ」
「正気ですか!?断りなど入れたら取り返しがつかない事態になるかもしれないのですよ!?そんな小娘はさっさと追い出すべきだ!?」

ファーラスは持つステッキを私に向け、何度も指差し、近くにいる衛兵に摘み出すよう指示を出した。
しかし、衛兵は一歩も動かず、その場に立ち止まったままだった。

「ファーラス、衛兵は王の俺だけの指示でしか動かん」
「……だったら」

動かない衛兵を見限り、ファーラスはステッキを振りかぶりながら私に近づき、再び叩こうとしてきた。
そんな時だった。
バキっと音がした後、振り下ろしたステッキが真っ二つに折れ、私の体の横をカランカランと音を立てながら転がっていった。

「なっ」

ステッキが折れた原因はニコルが宝剣を抜き、切ったからだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元婚約者に捨てられて皇太子に拾われたけど、今さら後悔しても遅いですよ?

exdonuts
恋愛
婚約破棄された日に崖から落ちた。目覚めたら見知らぬ国の皇太子に拾われ、私は皇太子妃候補に。元婚約者は私の死を喜び、新妻と祝杯を挙げていた。だが一年後、国賓として訪れた私は皇太子の腕に抱かれていた。彼の溺愛は国を揺るがすほどで、元婚約者の後悔の叫びなど届かない。ざまぁ、あなたが捨てたこの女が、今世界で一番愛されているのよ。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

殿下の婚約者は、記憶喪失です。

有沢真尋
恋愛
 王太子の婚約者である公爵令嬢アメリアは、いつも微笑みの影に疲労を蓄えているように見えた。  王太子リチャードは、アメリアがその献身を止めたら烈火の如く怒り狂うのは想像に難くない。自分の行動にアメリアが口を出すのも絶対に許さない。たとえば結婚前に派手な女遊びはやめて欲しい、という願いでさえも。  たとえ王太子妃になれるとしても、幸せとは無縁そうに見えたアメリア。  彼女は高熱にうなされた後、すべてを忘れてしまっていた。 ※ざまあ要素はありません。 ※表紙はかんたん表紙メーカーさま

貧乏子爵令嬢ですが、愛人にならないなら家を潰すと脅されました。それは困る!

よーこ
恋愛
図書室での読書が大好きな子爵令嬢。 ところが最近、図書室で騒ぐ令嬢が現れた。 その令嬢の目的は一人の見目の良い伯爵令息で……。 短編です。

【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ

リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。 先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。 エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹? 「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」 はて、そこでヤスミーンは思案する。 何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。 また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。 最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。 するとある変化が……。 ゆるふわ設定ざまああり?です。

【完結】精神的に弱い幼馴染を優先する婚約者を捨てたら、彼の兄と結婚することになりました

当麻リコ
恋愛
侯爵令嬢アメリアの婚約者であるミュスカーは、幼馴染みであるリリィばかりを優先する。 リリィは繊細だから僕が支えてあげないといけないのだと、誇らしそうに。 結婚を間近に控え、アメリアは不安だった。 指輪選びや衣装決めにはじまり、結婚に関する大事な話し合いの全てにおいて、ミュスカーはリリィの呼び出しに応じて行ってしまう。 そんな彼を見続けて、とうとうアメリアは彼との結婚生活を諦めた。 けれど正式に婚約の解消を求めてミュスカーの父親に相談すると、少し時間をくれと言って保留にされてしまう。 仕方なく保留を承知した一ヵ月後、国外視察で家を空けていたミュスカーの兄、アーロンが帰ってきてアメリアにこう告げた。 「必ず幸せにすると約束する。どうか俺と結婚して欲しい」 ずっと好きで、けれど他に好きな女性がいるからと諦めていたアーロンからの告白に、アメリアは戸惑いながらも頷くことしか出来なかった。

幼馴染の許嫁は、男勝りな彼女にご執心らしい

和泉鷹央
恋愛
 王国でも指折りの名家の跡取り息子にして、高名な剣士がコンスタンスの幼馴染であり許嫁。  そんな彼は数代前に没落した実家にはなかなか戻らず、地元では遊び人として名高くてコンスタンスを困らせていた。 「クレイ様はまたお戻りにならないのですか……」 「ごめんなさいね、コンスタンス。クレイが結婚の時期を遅くさせてしまって」 「いいえおば様。でも、クレイ様……他に好きな方がおられるようですが?」 「えっ……!?」 「どうやら、色町で有名な踊り子と恋をしているようなんです」  しかし、彼はそんな噂はあり得ないと叫び、相手の男勝りな踊り子も否定する。  でも、コンスタンスは見てしまった。  朝方、二人が仲睦まじくホテルから出てくる姿を……  他の投稿サイトにも掲載しています。

王太子に婚約破棄されたけど、私は皇女。幸せになるのは私です。

夢窓(ゆめまど)
恋愛
王太子に婚約破棄された令嬢リリベッタ。 「これで平民に落ちるのかしら?」――そんな周囲の声をよそに、本人は思い出した。 ――わたし、皇女なんですけど? 叔父は帝国の皇帝。 昔のクーデターから逃れるため、一時期王国に亡命していた彼女は、 その見返りとして“王太子との婚約”を受け入れていただけだった。 一方的に婚約破棄されたのをきっかけに、 本来の立場――“帝国の皇女”として戻ることに決めました。 さようなら、情けない王太子。 これからは、自由に、愛されて、幸せになりますわ!

処理中です...